陸上・駅伝

鎌倉学園高のエース児玉真輝、33人抜きで区間賞 伊那駅伝

笑顔で筆者の取材に応じる児玉

男子第42回春の高校伊那駅伝

3月24日@長野・伊那市陸上競技場を発着点とする6区間42.195km
15位 鎌倉学園(鈴木祐太、児玉真輝、櫻井悠人、力石暁、岡田祐太、大木啓矢) 2時間14分39秒
2区(8.9km)1位 児玉真輝(新3年) 27分5秒

春の高校日本一を決める伊那駅伝が3月24日、長野県伊那市で開かれた。109チームが参加した男子で、鎌倉学園(神奈川)が15位に入った。初出場だった昨年12月の全国高校駅伝は16位。今年も都大路へ戻り、さらに順位を押し上げられるか。伊那駅伝で存在感を示したのが、2区(8.9km)で区間賞を獲得したエースで新主将の児玉真輝(新3年)だ。

神奈川のエース

鎌倉学園は1区の鈴木祐太(新2年)が39位と出遅れた。それでも児玉には心の準備があった。「(鈴木は)けが明けで調子がよくなかったので、ある程度(遅れる)可能性はあると思ってました」。涼しい顔で児玉が振り返る。「自分の区間で流れをつくって、後ろにつなぐ。できる限り前で渡そうと思いました」。児玉自身も調子は悪い部類だったが、序盤から突っ込み、どんどん抜いていった。「自分の中で、流れに乗れました。たくさん前にいたので、抜いていくことだけ考えました。向かい風でもなかったし、走りやすかったです」。左腕につけた時計も見ずに走った。実に33人を抜き、6位でたすきリレー。初めてタイムを確認し、「区間賞もあるかな、って思いました」と児玉。その通りになった。まさにエースの仕事だった。

伊那駅伝の2区で区間賞をとった児玉(撮影・松永早弥香)

児玉は鎌倉学園のエースにとどまらず、神奈川のエースと言ってもいい存在だ。昨年10月、5000mで自己ベストを19秒更新する14分3秒21をマークし、県の高校記録を更新した。そのときの心境は「出ちゃった」だったそうだ。「そのあとの県駅伝に照準を合わせてたので、まさかあんなタイムが出るとは思ってなかったんです」。11月の県駅伝では1区を走り、2位に49秒差をつける区間賞。過去に県2位が13度もあったチームを勢いづけ、初優勝で都大路出場が決まった。都大路でも1区を走り、区間5位に食い込んだ。

今年こそインターハイに

横浜市立領家中学校3年の夏までは、走り幅跳びが専門だった。その冬の全国中学駅伝で2位に入ったメンバーとなり、走り続けている。高校駅伝の強豪校に進む道もあったが、進学校の鎌学を選んだ。その理由を尋ねると、児玉はスラスラと言った。「グラウンドが気に入ったのと、陸上が強い。それから進学実績がいい」。グラウンドの何が気に入ったのか。「土のグラウンドなので、足にやさしいんです。ケニアでも土のグラウンドでやってますから。ただ結構カーブが急なんですけど、それは工夫してやればいいんで」と言って笑った。児玉にとって鎌学のグラウンドは“日本のケニア”。着実に力を伸ばしてきた。

昨年の都大路で1区5位と健闘した児玉

昨年はつらい思いもした。都大路出場とともに目標だったインターハイには出られなかった。「あの悔しさがあったから、ここまで頑張れたってのもあります」。だから今年は「インターハイの5000mで、上位で勝負する」というのが個人的な最初の目標だ。インターハイは夏の沖縄で開催される。「沖縄か、いいねえ!!」。私がのんきに言うと、「試合なんで、どこにも行けないと思います」と、真顔で返された。児玉はなかなかに大人だ。

ベランダから見た箱根の2区で区間賞を

新チームになり、児玉は保田進監督に指名されて主将になった。「競技面だけでなく、生活面でも引っ張っていかないといけないんですけど、みんなが支えてくれるので、いまのところ、そんなに大変じゃないです」と、児玉は笑う。新3年生は児玉を含めて8人いるが、昨年度は前主将の河崎元紀と吉村颯斗だけだった。「あの2人はすごく大きい存在でしたし、たった2人でチームをまとめてたんだと思うと、ほんとにすごいです」。最上級生の背負うものの大きさにも、気づき始めている。

伊那駅伝のレース後、仲間に笑いかける児玉

少し早いが、児玉に来たるべき大学での4years.をイメージしてもらった。すぐに箱根駅伝の話になった。「地元が横浜の戸塚区なんで、箱根の2区のコースが家の近くを通るんです。マンションのベランダから、いつも見てました。2区で区間賞をとるのが、僕の最終目標です」

子どものころから眺めてきた「花の2区」。そこを駆け抜ける日を遠くに思い描き、きょうも児玉は“日本のケニア”で地力を蓄える。

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