陸上・駅伝

日体大・保坂晴子、2大駅伝で区間賞獲得へ 「今の私がいるのは、みんなのおかげ」

日体大の保坂晴子は、ラストイヤーの2大駅伝で区間賞獲得を目指す(撮影・藤井みさ)

日本体育大学の保坂晴子(4年、錦城学園)は、ルーキーイヤーの全日本大学女子駅伝対校選手権(杜の都駅伝)、全日本大学女子選抜駅伝競走(富士山女子駅伝)の「2大駅伝」で区間賞を獲得し、存在感を放った。順風満帆な競技生活を過ごしてきたが、大学2年の終わりにひざを故障。挫折を味わったが、周りのサポートを受けて復活を果たした。「今の自分がいるのは、みんなのおかげ」と語る保坂に、ラストイヤーの思いや両駅伝にかける意気込みを聞いた。

皆で襷をつなぐことが楽しい

保坂は小学4年から6年までバスケットボールに打ち込み、中学で友人に誘われて陸上部に入部した。持久力に自信があり、長距離を選択した。トラックでは中学3年に関東大会で800mに出場、駅伝では3年連続で東京都大会に出場する躍動を見せた。「皆で襷(たすき)をつなぐことが楽しい」と、陸上の面白さを実感した。

都内の錦城学園高校に進学し、高校でも陸上部に入った。校内にトラックがなかったため、朝の練習で皇居を1周(5km)、放課後は競技場や公園に出向き、ポイント練習に取り組んだ。

「日々の練習が大変だったけれど、高め合える同期がいることや走ることが楽しかった」とひたむきに取り組んだ。地道に練習を積み、高校2年11月の東日本女子駅伝では東京都代表として出場、6区区間1位の活躍を見せ、チームの優勝に貢献した。

翌週の関東高校駅伝では2区区間2位と奮闘。この大会で南関東地区代表の座をつかみ、初の全国高校駅伝(都大路)の切符を手に入れた。

この2大会での活躍に、「信じられないくらい驚きで、強豪の選手と走れて自信がついた」と、当時を振り返った。

高校3年では全国高校総体(インターハイ)に出場。1500mで9位に入るなどトップクラスで活躍した。「結果にこだわるようになった。何事も最後まで諦めないことの大切さが学べた」と、とても密度の濃い高校生活を送った。

日体大で心強い仲間たちに囲まれ成長した(撮影・藤井みさ)

ルーキーイヤーから頭角を現す

「高校で陸上は一区切り」と、保坂は思っていたが、日本体育大学への入学を決心した。入学当初から新型コロナウイルスの影響でチームでの練習が思うようにできず、夏合宿でチームの全体練習が再開した。その中で「できること」を見つけ、コツコツと練習に励んだ。9月の日本インカレでは1500mで5位入賞を果たしたが、「力の差を見せつけられた」と現状に満足せず、駅伝シーズンに向けて取り組んだ。

10月の杜の都駅伝では2区を任された。「短い距離。5区と6区の長い区間は同期が走るので、1秒でも早く襷を渡す思いで走った」と、区間賞で3区に襷をつないだ。

12月の富士山女子駅伝では、当初アンカーの予定だったが、コンディション不良のため、3区に起用された。「任さられた区間で結果につなげたい」と、区間賞を獲得。「2大駅伝」で区間賞を獲得し、ルーキーイヤーから頭角を現した。

大学2年では、日本インカレ1500mで優勝し、5000mでも4位に入った。「保坂イコール短い距離の印象で、長い距離でも戦えることを示すことができた」と、存在感を発揮した。

杜の都駅伝では1区区間3位でまとめ、富士山女子駅伝で初のアンカーを担当した。襷を受け取った時は4位だったが、「やるしかない」と自分を奮い立たせ、順位を1つ上げチームの3位に貢献した。

同期との写真。女子駅伝部の良さは「明るさ」と語る(本人提供)

ひざをけがし、葛藤の日々が続いた

順風満帆に競技に取り組んでいたが、大学3年のシーズンは「一番苦しかった時期でした」と話す。

大学2年の終わりにひざをけがした。日常生活に支障が出るほどで、「歩くのもきつかった」といい、数カ月練習ができなかった。競技生活で初めての経験で、「素直に受け入れられない自分がいた」という。

葛藤の日々が続いたが、監督や同期、チームがサポートしてくれた。両親は「晴子なら大丈夫」と優しい言葉で励ましてくれた。2歳年上の学生トレーナーの存在も大きく、「治療院にも付き添って、親身になって支えてくれた」という。

「苦しかった時に、支えてくれた人たちに恩返しをしたい」と、復活を目指し取り組んだ。そして昨年6月に初めて日本選手権の舞台に立った。1500mで自己ベストを更新する4分17秒09を出し、5位に食い込んだ。「周りの人たちのおかげで立ち直ることができた」と、感謝の気持ちを込めた。12月の富士山女子駅伝にも3区で出場し、チームは3位に輝いた。

大学3年の日本選手権で復活を遂げた(提供・saya)

日本インカレ5000mで5位「よくやった」

ラストイヤーの今シーズン、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジでは、3000mで9分4秒、5000mで15分46秒を出し、いずれも自己ベストを更新した。「記録を狙いにいった大会だったので、素直にうれしかった」と喜びを爆発させた。夏合宿では、「思うように走れなかった」と話すも、監督と練習メニューを考え直し、9月の日本インカレ5000mで5位入賞を果たした。「よくやった」と、納得いくレースだった。

今年の日本インカレ女子5000m決勝のレース後、チームメートと笑顔で撮影に応じた。右から保坂、山﨑りさ、柳井桜子(撮影・井上翔太)

10月29日に杜の都駅伝、12月30日に富士山女子駅伝が控えている。両駅伝での区間賞を目標に掲げる。

保坂にとって日体大女子駅伝部は、「とても明るいし、うるさいぐらいです(笑)」と仲の良さを話す。「心強い後輩や同期や監督がいる、ありがとうの感謝の気持ちを込めて走りたい」と口にする。

「笑顔」で学生最後の駅伝を駆け抜ける。4年間の全てをぶつける走りに期待したい。

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