公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグの櫻井うららさん

Bリーグの社会的責任活動「B.HOPE」スポーツにとどまらないその取り組みとは?

2020.12.10

2016年9月に幕を開けたBリーグ。地域に根ざした36チーム(B1・20、B2・16)による熱い戦いは年々人気が高まっている。このBリーグが設立当初から取り組んでいるのが、社会的責任活動の一環である「B.LEAGUE Hope」だ。この活動の中心にいる公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグの櫻井うららさんに話を聞いた。

まったくの手探り状態からスタート

「B.LEAGUE Hope」(以下B.Hope)の活動が始まったきっかけは、「我々はバスケットボールをやる団体ではない。バスケットボールという手法は使うが、社会的な意義を持たないと、存在する意義はない。だから、社会的な活動をしなければいけない」という思いからだった。

当時は、Bリーグが2015年4月に設立されて間もない頃で、スタッフはまだ10人ほど。事業的な基盤作りやスポンサーの獲得など、目の前の課題をこなすことで手一杯な状態の頃の話だ。

現在、Bリーグで経営戦略・経営企画グループのシニアマネージャーを務める櫻井うららさんもその1人だったが、櫻井さんはB.Hopeの具現化する役割を担うことになる。とはいえ、これまでに社会貢献活動の事業に関わったことはない。はじめは手探り状態だったという。「自分で必死に調べたり、セミナーに行ったり。外部のパートナーに知恵をいただきに行くこともありました」

櫻井さんは、バスケットボールが盛んな秋田の出身。高校時代は3年連続で全国大会にも出場した。社会人になってからは、大手WEBメディアで女性ユーザーの獲得に寄与していたが、2011年の東日本大震災を機に地元に戻る。秋田では日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)・秋田ノーザンハピネッツの広報・宣伝担当になり、bjリーグの広報宣伝部を経て、2015年9月よりBリーグに加わった。

櫻井さんが中心となり、初めてB.Hopeの活動が行われたのは、Bリーグ初の開幕を目前に控えた2016年の夏。この時点ではまだB.Hopeは立ち上がっていなかったが、B.Hopeの活動領域である「Planet」「Peace」「People」の三つのうち、「Planet」にフォーカスし、集まった各チームの社長に、Bリーグが目指す社会的責任活動について話をした。

「地球が抱えている温暖化や気候変動といった環境問題を自分たちの問題だととらえ、その上でスポーツの力で何ができるか。そんなことを伝えたのですが、いきなり地球規模の話をされてもピンとこなかったのでしょう。ほとんどがポカンという感じでしたね」

理念や活動意義が選手に浸透してきた

この経験を踏まえ、2017年1月にB.Hopeという傘ができると、その月に行われたオールスターゲームでは「People」に焦点を当て、小児難病の子どもたちをゲームに招待した。選手とハイタッチをするなど、日頃はバギーに乗って生活をしている子どもたちにとっては、特別な時間になった。だが一方で、専門的な団体からは「当事者だけでなく、家族に対してもそういう時間を作ることでこういう活動は成立する、という助言をいただきました」(櫻井さん)

2018年のB2のファイナルでは、難病の子どもを亡くした母親が作っている和太鼓奏団に演奏の場を提供したのにとどまらず、その家族も招待した。

B.Hopeはスタートからもうすぐ5年目を迎える。櫻井さんは「選手たちはB.Hopeの理念や活動を認識してくれているように感じています」と言う。

熊本地震の復興支援。子どもたちに笑顔が広がる ©B.LEAGUE

選手たちに浸透したきっかけは、2016年熊本地震の後に行った被災地の訪問だった。「事前に被災した地元の熊本ヴォルターズの選手たちから、実際にどうだったか話を聞いたことで、訪問する意味や意義がよく理解できたようです」

B.Hopeでは、活動とともにその前後、つまり、どういう気持ちで活動をして、どういう気持ちで活動を終えたのか、を大事にしている。

例年Bリーグがオフになる6月に、東日本大震災の復興支援活動を行っているが、その際も移動のバスの時間を使い、スタッフが「この取り組みの肝は何か」丁寧に説明しているという。甚大な被害を受けた宮城県名取市に震災後小学校ができ体育館のこけら落としとして子どもたちとプレーした際も、そこに行くだけではなく、足場ができたばかりの防波堤を見たり、地元の人から当時の状況を聞いたりした上で訪問している。

ファンの子どもたちの自宅訪問も活動の一貫として行っている ©B.LEAGUE

目指すべきはNBA選手の姿勢

B.Hopeを推進していく上で、選手たちの生きた教材になっているのが、NBAが2005年に設立した「NBA Cares(NBAケアーズ)」という社会貢献プログラムだ。この活動を視察したのはBリーグ・競技運営・経営企画グループの堀内武蔵さん。

「2017年にニューオーリンズでオールスターゲームが行われたときに行ったのですが、2005年のハリケーンの爪痕が残る地で、学校の近くに遊具を作ろうと、雨の中でNBAのスーパースターたちが、当たり前のように作業をしていたのです」

堀内さんは帰国するとその様子を選手たちに伝えた。堀内さんによると、選手たちは目指すNBA選手の競技面とは別の姿勢に感銘を受けたようで、「NBAケアーズの活動を知ることで、選手たちの中にB.Hopeの真の意義が芽生えました」。

B.Hopeの活動では現地に行くと、先方が求めているものと想定しているものが違うことが少なくない。たとえば、熊本地震では「仮設住宅が必要」という目に見える問題に行きがちだが、被災地に赴き話を聞いてみると、「子どもたちが声を出して遊ぶことができない」という悩みに行き着く。それならば「子どもたちが思い切り遊べる場所、時間を作ろう」と、B.Hopeとして活動をはじめた。櫻井さんは「事務局で作ってきた企画をやるだけでなく、現地の空気を感じ、現地に合った活動を臨機応変にすることで、より意味のあるものになる」と言う。

陸前高田を訪れた際は、植樹の活動も ©B.LEAGUE

今後は、B.Hopeの認知度を高めたいと考えている。「コンテンツホルダーとしてBリーグの強みを活用しながら、国連などともつながっていきたいですね」

また、三つの「P」(「Planet」「Peace」「People」)に専門的にアクセスしながら、SDGs(2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までによりよい世界を目指すための、持続可能な開発目標)にも目を向け、三つの「P」の活動をリンクさせていく。

今年は新型コロナウイルスの影響を受け、Bリーグの試合数が大幅減になった。そして小学校、中学校、高校の選手たちは、力を発揮する場が失われた。2021年1月に茨城県水戸市で開催されるオールスターゲームでは、そんな子どもたちに向けた取り組みを計画している。

櫻井さんは言う。「スポーツがあるから豊かな文化が醸成されて、見ている人たちも心を揺さぶられ明日の活力になる。Bリーグもそのひとつ。コート内だけではなく、オフコートでもすべての人の活力になっていくことを、これからも目指します」(文・上原伸一 写真・松嶋愛)

©B.LEAGUE

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