日本バスケットボール選手会 会長の千葉ジェッツ・田口成浩選手 ©B.LEAGUE

日本バスケットボール選手会 会長・田口成浩に聞く、withコロナ時代の社会貢献活動

2021.1.25

日本バスケットボール選手会は2013年より社会貢献活動を行っており、昨年はBリーグの社会的責任活動「B.LEAGUE Hope」(以下B.Hope)とWリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)選手有志との初の共同プロジェクトを実施。今年は、1月25日からオールスターゲームのサイン入りユニフォームなどを出品するチャリティーオークションがはじまる。(1月15、16日で開催予定だった「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2021 IN MITO」は、新型コロナウイルスの影響で急遽中止となったが、出場予定であった選手がサイン入りユニフォームを提供)この活動に選手たちはどのような思いで取り組んでいるのか。19年11月に日本バスケットボール選手会の三代目会長に就任した千葉ジェッツの田口成浩(しげひろ)選手に話を聞いた。

活躍の場を失った子どもたちのために

昨年から猛威をふるい始めた新型コロナウイルス感染症により、田口成浩選手をはじめ多くのアスリートの日常が失われた。

「昨年の緊急事態宣言中はチームの活動が休止になり、バスケットもまったくできませんでした。あれだけ長くコートに立てなかったのは選手になって初めてのことです」。田口選手はそんな言葉で振り返る。

緊急事態宣言があけた5月中旬。チーム練習が再開されて、仲間に会えること、そしてバスケットをプレーできること、それまで当たり前だったことの喜びをひしひしと噛(か)み締めたという。

千葉ジェッツのシューティングガードとして活躍する田口選手 ©B.LEAGUE

コロナの影響で、各年代の様々なスポーツの大会がなくなっている。20年3月に開催されるはずだった「全国U15バスケットボール選手権プレ大会」と「第51回全国ミニバスケットボール大会」も中止になった。田口選手はそれが自分のことのように悲しく、辛(つら)く、悔しかった。

「僕たちは高校や中学の仲間と会うと、当時のバスケの大会の話でいつも盛り上がります。大会が中止になるということは、そうした青春時代の思い出が残せないわけですから、本当に子どもたちは辛いと思います。彼らに元気を与えたい、というのが率直な思いでした」

この思いは田口選手だけではない。他のBリーグ選手も同じだった。「自分たちに何かできることはないか――」

そこで立ち上がったのが、日本バスケットボール選手会と、2020年度女子バスケットボール日本代表チーム主将の髙田真希選手(デンソー アイリス)をはじめとするWリーグの有志たち、そしてB.Hopeの共同プロジェクトだ。「バスケットボールを思いきり楽しめない子どもたちに何かできないか」という思いのもと、クラウドファンディングの特設サイトを開設した。男子選手と女子選手がタッグを組んだ共同プロジェクトは初。それは男子、女子の枠を超えた“オールバスケット”の取り組みだった。

このクラウドファンディングでは、309人から総額127万1千円もの寄付が寄せられた。

田口選手は「僕らと同じ気持ちを持ってくれていた人がこんなにいたことがうれしいです」と話す。寄付金は「全国U15バスケットボール選手権プレ大会」と「第51回全国ミニバスケットボール大会」に出場予定だった全チームへのボールのプレゼントなどに活用された。

ほかにも「全国ミニバスケットボール大会」へ出場予定だったチームへ選手からの応援メッセージ動画鑑賞会も実施。多くの子どもたちが、憧れのプロ選手の言葉からいろいろなものを感じた。後日、子どもたちからは選手に向けて、プレゼントしたボールを使ってバスケをしている動画も送られてきた。そこには子どもたちが笑顔でプレーする姿があった。
「この活動はコロナ禍のまだスタートラインだと思っています。この取り組みが、今後もっと大きな社会貢献活動につながっていけばと考えています」と田口選手は話す。

子どもたちに笑顔を広げるために田口選手はB.Hopeを通して活動する ©B.LEAGUE

選手会長就任後すぐにコロナと直面

田口選手が日本バスケットボール選手会の三代目代会長に就任したのは19年11月。以前からチャリティー活動や選手会のミーティングへ積極的に参加していた田口選手に、前会長の竹内譲次選手(アルバルク東京)から声が掛かった。そして会長就任からわずか数カ月でコロナ問題に向き合うことになる。

「まさか選手会長になったタイミングで、コロナに直面するとは思ってもみませんでした。はじめの頃は手探りです。当時は急な感染拡大によって今のようにルールや基準が定まっておらず、本当に注意深く対応していました。結局、昨シーズン(2019-20)は途中で全試合の中止が決まりましたが、選手たちはこの先も見えないうえにバスケットにも集中できずに苦しみ、辛かったと思います」

現在は、リーグとしてのコロナに対するガイドラインが定められた。手洗いとうがいの徹底、毎朝の検温や具合が悪くないか体調チェックなど、一人ひとりがトレーナーに報告している。「コロナ対策が確立されたので、今シーズン(2020-21)は昨シーズンとはまったく違う気持ちでプレーできています」

現在、試合会場の収容率は50%程度に制限されている。感染対策で熱い声援も聞こえず、スタンドの様子は新型コロナウイルス感染症拡大以前とは異なる。それでも田口選手は、観客の前でプレーができる喜びを感じているという。

「シーズン序盤に無観客で2試合ありましたが、どこかアドレナリンが出てきませんでした。上限が半分であっても、無観客と有観客では気持ちの入り方がまったく変わります。あらためて応援してくれるファンの皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです」

観客の前でプレーができる喜びはすべての選手に共通だ。(写真はコロナ禍以前) ©B.LEAGUE

「B.Hope」から笑顔の輪が広がる

千葉ジェッツでシューティングガードとして活躍する田口選手は、選手会長としてオフコートでの活動の先頭にも立つ。選手会の活動は、初代会長の岡田優介選手(アースフレンズ東京Z)が13年に始めて以来、毎年オフシーズンを中心に行っている。

初めてBリーグの選手会が社会貢献活動を行っているという話を聞いたとき、田口選手はすぐに協力したいと思った。
「東日本大震災の被災地でも子どもたちと触れ合い、バスケットを通して元気を与える活動を継続的にしていますが、いつもこちらが元気をもらっているんです。子どもたちが楽しそうにバスケットをしている姿を見るたびに、毎年来られてよかったと感謝しています」

子どもたちの笑顔は、保護者や家族にも笑顔をもたらしている。「選手と子どもたちとの交流を見ている親御さんたちも喜んでくれるんです」と田口選手も笑顔になる。田口選手も笑顔の輪が広がる光景に喜びを感じている。新型コロナウイルスが蔓延する以前は、選手会は2014年より東日本大震災の被災地を毎年訪れていた。活動がより意義のあるものになるよう、まず震災被害の爪痕が残る場所を見に行くなど、事前に現地のことを知ってから、子どもたちのもとに向かっているという。田口選手はこの意義のある活動を多くの選手に体感してほしいと考えている。「オフシーズンは体を休めたい期間ではありますが、活動に参加することで気持ちが透き通るというか本当にフレッシュになるので、若手選手たちにもどんどん参加してもらって活動の輪を広げてほしいですね」

B.Hopeの活動では、被災地の当時の状況を知り活動にのぞむ ©B.LEAGUE

今年は新型コロナウイルス感染症の影響でオールスターゲームは中止になってしまったが、配信という形でオンラインコンテストが実施された。例年通りチャリティーオークションも実施される。(実施期間2021年1月25日(月)12:00〜2月1日(月)22:59)各チームの全選手サイン入りのユニフォームや各コンテストの優勝者のサイン入りボールなどが出品され、売上金は、毎年オフシーズンに行っている復興支援活動や、選手会、B.Hopeの活動運営費として活用する予定だ。

目に見えないコロナの脅威はまだ収束を見せない。B.Hopeでもリアルの活動に制限がある中で、どのように社会に貢献していくか――。Bリーグの選手たちはこの状況だからこそできることをそれぞれが考え、これからもオンコートだけでなくオフコートでも世の中の力になる活動を続けていく。(文・上原伸一)

B.LEAGUE×日本バスケットボール選手会チャリティーオークション