大学バスケ

拓殖大バスケ荒川颯 3x3で個を磨き、チームの1部復帰と東京五輪を狙う

荒川(右)はラストイヤーの今年、拓殖大で戦う一方で、3x3チーム「BEEFMAN.EXE」でもプレーをしていた

美白といって差し支えないくらいに白かった肌が、小麦色に焼けていた。拓殖大の荒川颯(はやて、4年、洛南)の日焼けの理由は、海でも山でもなくバスケットボール。大学の公式戦がない期間を利用し、荒川は3人制バスケットボール競技「3x3(スリーエックススリー)」のトップリーグ「3x3.EXE PREMIR」に参戦していた。

3x3は「個人力」が重要

荒川が3x3と出会ったのは2018年3月。3x3が正式種目となる東京オリンピックを見すえ、大学生年代の若手を育成したい日本バスケットボール協会が、国際大会の代表候補として白羽の矢を立てたのが荒川だった。同年8月のアジア競技大会で日本代表として戦い、今年5月から9月まではトップリーグに所属する「BEEFMAN.EXE」というチームの一員としてプレー。リーグの新人賞にも輝いた。

荒川は3x3を「バスケの要素がギュッと詰まった競技」と表現する。5対5と3対3、オールコートとハーフコート。従来の5人制バスケットボールと3x3はルールや競技の特性がさまざまに異なるが、その最大の違いとも言えるのが「個人力」の重要性とスピード感。人数が少なく、試合中にコーチが指示を出せない3x3は、あらゆる場面で選手一人ひとりの独創性、判断力、技術力の高さが求められる。そして、10分1本勝負、21点先取、12秒以内にシュートを決めなければ攻守交替。よりスピーディーに試合が展開するという特徴がある。

3x3で鍛えた技術がいま、大学バスケでも生きている

こういった競技を経験し、大学バスケに戻ってきた荒川のプレーを久しぶりに見た。すると、彼の周りだけ時間がゆったりと過ぎているような、妙な錯覚を覚えた。パス、ドリブル、ステップ、シュートと、プレーの一つひとつがとても大きく、豊かに、はっきり表現されているのだ。荒川に尋ねてみると「3x3で強い負荷がかかった状態でプレーしてきたので、余裕を持ってプレーできてるんだと思います」と、笑顔で言った。

東京オリンピックは「目指すべき一番の場所」

大学生の夏休みは長い。その間、荒川はオフがほとんどない生活を送っていた。昼間は東京・八王子で大学の練習を参加。夜は横浜で3x3の練習だ。練習が白熱して終電を逃してしまい、チームのスタッフに車で八王子の自宅に送ってもらったこともあった。ときには真夏の雲一つない青空の下、屋外コートで何試合もプレーした。「オフはまだこないのか、体がもたない、って思うぐらいキツいときもありました」と振り返りながらも、「バスケをしてる時間が長くなって、その中でしっかり集中して練習できたのは、自分にとってすごくよかったです」。そう話す荒川の表情に充実感がにじんでいた。

荒川はとにかくバスケに対してストイックで真摯(しんし)だ。大学2年生のときには自らの可能性を広げるために、Bリーグのトライアウトや3対3で戦うストリートバスケのイベントに参加。とくに後者のイベントは、荒川が3x3の魅力にどっぷり浸かり、日本代表候補に選ばれるきっかけにもなった、非常に大きな出会いだった。

3x3ではいま、東京オリンピックを明確に意識している

当時はあくまで、5人制バスケを主眼に置いて3人制バスケに挑戦していたが、いまは違う。来年に控える東京オリンピックに手が届きそうだからだ。「オリンピックはアスリートとして輝かしい舞台というか、目指すべき一番の場所。そこへの可能性がつながったからには、オリンピックを目指したい」と話す。

3x3での経験も注入し、1部復帰を

笑みを絶やさず受け答えしていた荒川だが、話題が大学バスケに及ぶと、表情がかすかに歪(ゆが)んだ。

拓殖大は昨年、主力選手の退部というアクシデントを受けて2部に降格し、9年ぶりにインカレ出場を逃した。主力の一人としてこの悔しさを体感した荒川には、チームを1年で1部に復帰させ、インカレに導くという至上命題がある。10月7日現在、拓大は2部リーグ1位。2位までは自動的に1部昇格となり、3、4位の場合は1部との入れ替え戦に回る。

しかし3x3で東京オリンピック出場という夢をかなえるためには、リーグ戦と日程が重複する3x3の大会に出なければならない。実際、荒川は9月28、29日のリーグ戦を欠場し、韓国であった3x3の国際大会に出場している。このようなケースは今度も想定され、その度に荒川は厳しい選択を迫られることになる。

大学バスケか3x3か。選択を迫られる場面はあれど、荒川はいま、チームのためにも戦っている

それでも荒川はまっすぐ前を見つめ、こう言った。「矛盾してるかもしれませんけど、3x3でやってることは全部、大学4年生のこのシーズンのためになってくれればいいと思ってます。いまの僕にとっての一番の目標は、1部復帰とインカレで上位を目指すこと。いろんなステージで経験していることを、いかにその目標に注入できるか考え、プレーしてます」

若者というのは得てして欲ばりで、矛盾するさまざまな感情に振り回されるものだ。走り、迷い、傷つきながら答えを見つけていけばいい。彼より長く生きているというだけの“先輩”としては、3x3の経験ならず両立に悩むことすらも、荒川を大きくする糧になると信じている。

この記事をシェア

in Additionあわせて読みたい

Their Stories大学別・競技別に読む