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特集:New Leaders2025

近大・勝田成 ティー打撃のドリルを5種類増やし、身長163cmながら秘める長打力

4季ぶりの関西学生リーグ優勝を狙う近畿大の主将・勝田成(撮影・沢井史)

近畿大学の勝田成(4年、関大北陽)は今春の関西学生野球リーグ戦、同志社大学との開幕3試合で14打数8安打をマークし、好調な滑り出しを見せた。1年秋から二塁手のレギュラーとなり、いきなりベストナインを獲得。これまでに4度のベストナインに輝くなど、下級生の頃から攻守で牽引(けんいん)してきた。ラストイヤーは主将としてチームを引っ張る。

侍ジャパン・井端弘和監督「好きなタイプの選手」

最大のストロングポイントは堅実な守備だ。春夏通じて計14度の甲子園出場を誇る大阪の名門・関大北陽では、1年夏からベンチ入り。当時から軽快な動きを見せ、強い当たりのゴロを難なくさばく姿が目を引いた。身長163cm、体重72kgと体格は決して恵まれた方ではないが、捕球してからの握り替えの速さもクローズアップされるなど、二塁手として存在感を示している。

昨年は3年生ながら大学日本代表にも選ばれた。勝田の一挙一動を代表合宿で視察した侍ジャパントップチームを率いる井端弘和監督からは「野球をよく知っている。私の好きなタイプの選手」と絶賛された。欧州遠征も経験し、初めての国際舞台は「すごい人たちとプレーできてプラスになることばかりだった」と振り返る。

1年の秋から二塁手のレギュラーとなった(撮影・佐藤祐生)

大学ラストイヤーとなった今年は主将に就任。4月5日に開幕したリーグ戦では、3戦とも「2番セカンド」でフル出場。3試合とも安打を放ち、特に2戦目は5打数4安打。うち三塁打2本と、シーズン開幕から勝田らしい打撃を見せつけている。

「1打席ずつしっかり集中して、欲を出さずに打席に立てたと思います。プロに行くには長打力も大事なので、長打も打てたことは良かったです」と、試合後は充実した表情で汗をぬぐった。

打席では「脱力感」をテーマに

昨年に比べて体が分厚くなったようにも見えるが、「体重がそこまで増えたわけではないんです」と勝田は言う。もちろん長打力向上のためのトレーニングは冬場も欠かさず行ってきたが、打席でテーマとしているのは「脱力感」だ。

「強く振ることに焦点を当てながら、コンタクト率も上げることを考えてやってきました。振る力をつけるためにパワーをつけることももちろんやってきましたが、今まではティー(打撃)のドリルが10種類くらいあったんですけど、さらに5種類くらい増やして、その中でひたすら打ってきたんです。それに今までは、打席に立つと力が入り過ぎて、どうしても良いスイングができなかったので、余計な力を入れすぎないようにしています」

もっと打ちたい、少しでも大きな当たりが欲しいと思えば思うほど、スイングに力みが出てしまう。そういった気負いを無くすべく、あえて気持ちをフラットにすることを心掛けている。

出塁し、一塁ベースコーチとタッチを交わす(撮影・沢井史)

「遊び感覚というか……変に『リーグ戦だから』と思いすぎると、かえって思うように振れなくなってしまうんです。だから余計なことは考え過ぎずに、とにかくその打席に集中するようにしています。その中で試合をどれだけ楽しめるかですね。そういう風に打席に立った方が、余計な力が抜けるんです。この春は、まだ3試合ですけれど、なんとかやれていると思います」

大学最後の年ということもあり、今後へ向けた覚悟も感じる。進路はプロ志望。体の小ささを指摘されることもあるが、勝田は決して下を見ていない。

体が小さくてもプロに行けることを証明したい

勝田は小学6年生の時、阪神タイガースジュニアに選出された経歴を持つ。当時は身長135cmで、ジュニアトーナメントの中では最も小柄だった。それでも高校、大学と名門の中心に立ってきた雄姿を誰もが認めている。「体が小さくてもプロに行けるということを証明したいんです。そういう意味で、長打力や振る力をつけるというのが、冬場のテーマでもありました」

NPBでは埼玉西武ライオンズのプロ4年目・滝澤夏央が身長164cmと、小柄ながらもプロの世界で戦っている。滝澤も関根学園高校(新潟)時代からショートの守備で一目置かれており、スピードと堅実さが売りだった。育成から支配下にはい上がった泥臭さは、勝田にも共通する部分がある。

リーグ戦では毎試合、NPBのスカウトがネット裏から勝田のプレーを視察していた。あるスカウトは「パンチ力があるし、走攻守のバランスが取れている。今まではちょこんとバットに当てるイメージだったけど、しっかり振れるようになっている。今後も見ていきたい」と成長を見守っていくコメントも残している。

プロをめざすため、冬場は「振る力」を磨いた(撮影・沢井史)

同志社大戦は何とか勝ち点をものにできたが、次節まで期間が空くこともあり、勝田の表情は最後まで引き締まっていた。

「自分はどちらかというと、リーグ戦のスタートダッシュはいい方なんですけど、過去のリーグ戦を見たら次の節で打てないこともありました。そこが自分の今の課題です。次の節まで3週間くらい空くので、(調子を落とさないように)しっかり状態を上げていきたいです」

チームは一昨年の秋から3季連続2位と、あと一歩のところで涙をのみ続けてきた。4季ぶりの優勝へ、経験豊富な勝田がチームを上昇気流に乗せる。

小柄でも通用することを証明する(撮影・沢井史)

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