陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

大学女子駅伝盛り上げのため、関西外大が立ち上げた「ランレボリューション」を紹介!

ランレボリューション立ち上げの声を上げた関西外国語大学の皆さん(提供・関西外国語大学女子駅伝部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は大学女子駅伝を盛り上げようとスタートしたプロジェクト「Run Revolution」(ランレボリューション。通称:ランレボ)のお話です。関西外国語大学女子駅伝部の皆さんが声をあげ、他の大学の皆さんも賛同し、今年3月にスタートしました。

危機感を持った指導者、学生の皆さんが他大学と連携

大学女子駅伝には例年10月の全日本大学女子駅伝、年末の富士山女子駅伝と二つの全国大会があります。男子の箱根駅伝、全日本大学駅伝、出雲駅伝に比べてしまうと注目度の差はありますが、それでも大学スポーツの中でテレビの生中継がある競技はかなり珍しく、人気、盛り上がりの可能性を秘めていると感じています。

大学女子駅伝界も強化校が増えている関東を除くと、もう強化をしない、募集をしないという大学も出てきて、中には選考会なしで全日本行きが決まる地区もあります。現状では、全国高校駅伝の予選にあたる各都道府県高校駅伝の参加校が、かなり減少している県もあります。少子化、部活動離れ、指導者不足。様々な要因が考えられるので、簡単に説明できるものではありません。

今後参加校が減ったり、競技人口が少なくなってきたりしたら、将来どうなってしまうのか……。危機感を持ったのが現場の指導者であり、学生の皆さんでした。こうして関西外国語大学女子駅伝部を中心に、他の大学とも連携する形で、大学女子駅伝の魅力を発信しようと、ランレボリューション(以下、ランレボ)が始まったのです。

大学女子駅伝を盛り上げようと選手が自ら企画・運営しました(提供・関西外国語大学女子駅伝部)

ワークショップだけでなく、ミニ駅伝も開催!

今回のランレボでは中学生や高校生を招き、大阪、仙台、つくばの3カ所でイベントが開催されました。

【大阪】大阪学院大学×関西外国語大学
【仙台】東北福祉大学×関西外国語大学
【つくば】筑波大学×関西外国語大学

M高史は東北福祉大学さんで開催された回に伺ってきました。青森山田高校、花巻東高校、利府高校といった高校生の皆さんや仙台大学の選手の皆さんも参加されて、大学紹介、ワークショップ、ゲスト講演、トレーニング、ミニ駅伝などが行われました。いずれの企画も学生の皆さんが一生懸命考え、参加された皆さんも笑顔が広がっていました。

大学紹介ではパワーポイントを使用して、選手の皆さんが大学やチームの紹介をされていました。関西外国語大学さんといえば、日本陸連SDGsプロジェクトで最優秀賞の「BEST THINK賞」を受賞し、日本陸連アスレティックス・アワードで表彰されたこともあります。プレゼンは得意分野です!

留学して人間力を磨く選手も 社会貢献活動にも積極的な関西外大女子駅伝部を訪問!

まるで企業のプレゼンかと思うほどの仕上がりでした! すぐにでも社会人で活躍できそうです。

関西外国語大学を紹介をする水川陽香留選手(4年、盛岡第四)。まるで社会人のようなプレゼンでした!(撮影・M高史)

関西外国語大学・札場美桜主将にインタビュー

今回のランレボ開催にあたり、関西外国語大の主将・札場美桜選手(4年、仙台育英)にお話を伺ったところ、丁寧に説明してくださいました。

――ランレボ開催までの流れを教えてください。

「オンラインの打ち合わせでプログラム内容(ワークショップやワークアウト)を調整し、それぞれのプログラムについてお互いのチーム内で役割分担を決め、当日に向けて準備を進めました。どのような内容にしたら、中高生が走る楽しさ、広さや深さを実感してくれるか。大学で競技を続けることの魅力を知ってもらえるか、ということを中心に考えてきました。申込時にアンケートを設け、ワークショップのテーマにもつなげました。午後のワークアウトは、参加者の競技力の幅を考慮し、今回は本格的なラントレーニングというよりは、楽しく会話が弾むことを目的とした内容にしました」

「募集方法としては、自分たちで告知チラシをPDFで作成し、自分たちや協力大学チームのSNS(Instagram、X、Facebook)から積極的に発信しました。各大学さんにも協力してもらい、近隣の中高生にも呼びかけていただきました。イベント前日には実際に教室や競技場に出向き、協力大学さんとリハーサルや事前の打ち合わせを入念に行いました。私たち外大女子駅伝部としては、チーム紹介のリーフレット作成(3本の動画を含む)を行いました」

ワークショップの一コマ。大学生、高校生も一緒に、和気あいあいとした雰囲気でした(撮影・M高史)

――どんなところにやりがいを感じましたか。

「参加者に事後アンケートを行いましたが、一番うれしかったのは、参加してくれた中学生、高校生から『楽しかった』『駅伝についてここまで考えたことがなかった』『また参加したい』という声をもらえたことです。また、イベントを企画・運営した大学生にも事後アンケートを行いましたが、大学生の立場からも同様の声をたくさんもらえてうれしかったです。私たち外大生だけでなく、他大学の学生と協力して企画、準備、そして当日の運営までを成功させることができたのも、今回の企画を行う価値のひとつだと思いました。外大チームに興味を持ってくれた中高生もいてうれしかったです。中高大という縦の交流を各地で行って、輪が広まったようにも感じました」

――ランレボのこれからについて。

「ゼロから立ち上げて初開催した『ランレボ』のイベントを、今回まずは三つの大学さんに協力していただいて実施できました。開催を終えて、一応の成功には届いたと思いますが、まだまだ課題点が残ります。今回の活動だけでは女子長距離界を変えるまでの影響力に全く及ばないので、これから活動を継続して、さらに広めていきたいと考えます。ランレボは今回で終わりではなく、今年のこれからも、来年も再来年も、継続して行っていく予定です」

「日本各地のライバル大学に協力していただき、一緒になって考え、各地の中高生に参加していただき、小さな変化から大きな変化へと〝レボリューション〟を起こしていきたいと思います。今回の参加者も、もう少し多かったらうれしかったのですが、少ないからこそ、この活動の継続に価値があると思いますし、中高大の縦のつながりと、大学生同士の横のつながりをもっと増やしていきたいと思います」

「今回一緒に開催してくれた三つの大学さんには、たいへん感謝しています。参加していただいた中学生、高校生もありがとうございました。ゲストとして講演をしていただいた皆様も、ありがとうございました。今回の私たちの活動、問題意識に関心をもってくれる中学生、高校生、大学生の輪が広がっていくとうれしいです。〝ランレボリューション〟とネーミングは少し大げさ過ぎるかもしれませんが、変化を起こしていけたらうれしいです」

午後のミニ駅伝の後の表彰式。笑顔いっぱいのイベントとなりました(提供・関西外国語大学女子駅伝部)

代表して関西外大・主将の札場選手にお話を伺いましたが、担当された選手の皆様は自分たちで企画や準備をされ、参加された中学生や高校生の皆さんに少しでも笑顔になって帰ってもらいたいと、本当に一生懸命な姿が印象的でした。

大学女子駅伝界を明るいものにするために、現役の大学生の皆さんがいま輝いている姿をお見せすることで、きっと中学生、高校生の皆さんにも伝わると思います。

来年、再来年も注目していきます!

いろんな学校へ取材に伺っていると、例えば、キツすぎて高校限りで競技をやめてしまうなど、様々な事情で競技から離れてしまうといった色々な声を聞きます。もちろん一度きりの人生ですし、色々な選択肢がある中ではありますが、ご自身が選んだ道で輝いてほしいです。「あのとき、ああすればよかった」と、もう変えることのできない過去を後悔するのではなく、今この瞬間を思いっきり現状打破することで、今が将来に向けた跳躍台になるのではないでしょうか。

ランレボは始まったばかりですが、来年、再来年と続いていくようです。駅伝の襷(たすき)のように、先輩から後輩へと紡がれていく姿に注目していきたいと思います。

M高史の陸上まるかじり

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