西村菜那子が注目するルーキーは?「鶴谷ターン」決行の経緯も、佐々木哲選手に取材

みなさんこんにちは!
大学陸上界では、この春に1年生が入学し、新チームでの活動がスタートしました。入学の様子をSNSやニュースで拝見すると、初々しい姿にほほえましい気持ちになります。今回は私が注目している1年生ランナーの紹介をさせていただきますね。
ロードでの強さとおちゃめな一面を持つ岸本駿吾選手
1人目は、東洋大学へ進学をした岸本駿吾選手(埼玉栄)です。現時点で5000mの自己ベストは14分26秒24。まだ13分台ランナーではないものの、岸本選手の特徴はロードでの強さです。
高校時代、中でも印象的だったのは、2023年伊那駅伝での快走です。岸本選手が走った3区は、アップダウンが激しく、多くのランナーが苦戦する上りの区間でした。しかし、その上りをまるで平地のように軽やかに走り抜け、1年生ながら区間5位。その走りを見た解説の両角速さん(東海大学陸上競技部駅伝監督)が「箱根駅伝5区の選手としてスカウトしたい」と生放送で公言するほど、絶賛されていました。
翌年の伊那駅伝でも力強い走りは健在で、2区を走り、なんと52人抜きを披露! 区間2位で走りきりました。また、今年の都道府県対抗駅伝では埼玉県チームの一員として、起伏の多い5区で区間6位。ロードの強さが光る高校時代でした。

東洋大学は岸本選手の加入により、ロードでの力、さらには山登りの戦力が厚くなることかと思います。個人的には箱根駅伝で5区、あるいは2区を走る姿に期待したいところです。
そんな力強い走りが印象的な岸本選手ですが、少しおちゃめな一面も兼ね備えています。私は岸本選手が高校2年生の頃、取材をさせていただいたことがあるのですが、「勉強は得意ですか?」の質問に対し、「得意です!」と自信に満ちあふれた返答をしていました。
しかし、その場にいた当時3年生の松井海斗選手(現・東洋大学2年)、佐藤大介選手(現・中央大学2年)に「おいおい、ウソつくなよ」とツッコまれ、現場は笑いに包まれていました。ロードでの強さと場を和ます明るさを持つ岸本選手が、これからの東洋大学でポイントになるのではないかと思っています。
佐々木哲選手は、言語化する能力が高い!
2人目は、早稲田大学に進学した佐々木哲選手(佐久長聖)です。
現時点で5000mの自己ベストは13分40秒02。3000mSCでは先日の金栗記念でU20日本歴代2位の8分29秒05をマークしました。また昨年は世界クロスカントリー選手権大会(ベオグラード)のU20代表選手に選出され、世界の舞台を経験しました。
活躍はトラックだけにとどまらず、昨年の全国高校駅伝では3区で区間賞を獲得。さらに今年の都道府県対抗駅伝では長野県チームの5区を走り、4位で受け取った襷(たすき)をトップに押し上げ、区間記録も20秒更新。大会のMVPにも選出され、高校3年間でトラック、駅伝ともに輝かしい成績を残しました。
実は今年の3月、高校の卒業式を終えたばかりの佐々木選手に取材をさせていただきました。大学1年目の目標を聞いたところ、東京2025世界陸上に3000mSCで出場したいという胸の内を話してくれました。そのために「まずは7月の日本選手権に出場し、トップで争える実力をつけて、あわよくば一番、そして標準記録を狙いたい」とのこと。決して簡単ではないですが、自分の可能性を高めていきたいと力強いまなざしで話していました。

駅伝での目標を伺ったところ、走りたい区間は具体的に決めていないそうですが、あえて言うのであれば、「地元が愛知県なので全日本大学駅伝の1区を走る機会があったらうれしい」とのこと。いつも取材を通じて感じるのは、佐々木選手の言語化能力の高さです。自分がやりたいこと、やるべきところ、足りないところを常に冷静に判断し、インタビューでも「本当に高校生?」と思ってしまうほどの受け答えでした。
トラックと駅伝の両立は難しい部分もあるかもしれませんが、自分の目標を言語化する力に長(た)けている佐々木選手なら、かなえられる気がします。これからも飛躍を遂げるに違いない佐々木選手から、目が離せません。
3年生でなければ「鶴谷ターン」はやらなかった
余談ですが、佐々木選手といえば、折り返し点で華麗な「鶴谷ターン」を見せたことでも話題を呼びました。実はこのターン、大会直前に実施を決めたそうです。
ことのきっかけは、2023年の全国高校駅伝直前でした。3区を走った一つ上の先輩、早稲田大学の山口竣平選手(2年、佐久長聖)と直前の試走前にLINEでのやりとりがあり、「このターン良くね?」と話題が上がったそうです。その後、まずは山口選手が試走で鶴谷ターンに挑戦。それを見た佐々木選手は「あれ、これ速いな」と思い、ふざけ半分で「もし自分がこの区間を走ることがあればやろうかな」と考えていたそうです。
そして翌年、3区を佐々木選手が走ることになり「3年生(で最後)だし、鶴谷ターンをやってみよう」と決めたとのことです。ちなみに、3年生でなければやらなかったそうです(笑)。鶴谷ターンがこんなにも話題を呼ぶとは思っておらず、予想外の展開に驚いている様子でした。

話を戻し……今年も無限の可能性を秘めた多くの1年生が大学陸上界の仲間入りをしました。長いようで、とても短い貴重な4年間。陸上に励み、様々なドラマを刻んでいく選手たちを見逃さずに応援していきたいと思います!
