大阪学院大のエドポロ・ケイン 兄はプロの総合格闘家、強打者の道につなげる積み重ね

身長189cm、体重93kgの体格はパワーだけでなくスピードも抜群だ。1年の春からレギュラーとして、常にチームの中心に立ってきた大阪学院大学のエドポロ・ケイン(4年、日本航空)。50mのタイムは6秒1、遠投は120mを誇り、今秋のドラフト候補にも名前が挙がっている。
冬場は「体を強くすること」をテーマに
父はナイジェリア、母は韓国の出身。大阪で生まれ育ち、小学2年から野球を始めた。日本航空高校時代は青山学院大学の左腕、ヴァデルナ・フェルガスらと3年夏の甲子園に出場し、ベスト16まで進出した。
当時から、体格は出場選手の中でも際立つほど高校生離れしていた。だが「3番センター」として3試合を戦った甲子園では、計12打数1安打と思うような結果を残せなかった。高校からのプロ入りを熱望し、プロ志望届を提出したが、指名には至らず、大阪学院大に進学した。

大学1年生の頃はハイレベルな投手に苦しんでいた感があった。2年の春から徐々に快音が響くようになり、3年春の関西六大学リーグ戦で才能が開花。京都産業大学戦で右中間に豪快な一発を放つと、神戸学院大学戦でバックスクリーンに特大アーチをたたき込んだ。ここまでリーグ通算8本塁打を放ち、今ではすっかりチームの顔となった。
3人兄弟の末っ子で、次兄は総合格闘家のエドポロ・キング。名古屋に拠点を置く総合格闘技団体「Rumble」のヘビー級王者で、国内最高峰の「RIZIN」を含めプロ通算4戦全勝を挙げている。兄にも負けない強靭(きょうじん)な肉体は、この冬のトレーニングでさらに鍛え上げられた。
「冬場はバットを振ることと、トレーニングをする時間がかなり多かったです。体を強くすることをテーマにやってきました」

中村良二監督「この春は選球眼が良くなった」
迎えた大学ラストイヤー。開幕節となった大阪商業大学戦では2試合で3安打を放ち、次節の龍谷大学戦も2安打をマークするなど、順調な滑り出しを見せた。特に龍谷大戦との1回戦は5打席中、4打席で出塁(うち2四球)。昨秋までは追い込まれると簡単に三振してしまう場面も目についたが、中村良二監督によると「この春は選球眼が良くなった」と語る。
「ボール球はもともとあまり振らない方ではあるんですけれど、それをずっと継続できているというのはあります。でも、もっとしっかりボールを見て、一発で仕留められたら一番いいなとは思います」
昨年まで打順は1、2番がほとんどで、試合によっては下位を打つことも多かった。ところが、今季は3番に固定されている。打撃練習では1球目から積極的に振ることを心がけている。この春は逆方向にも強い当たりが増え、アウトになる質も決して悪くない。「去年までと比べて打球の質は良くはなってきていると思います」と本人が言うように、手応えをつかみつつある。

相手バッテリーから簡単に勝負してもらえなくなる場面も出てきた。それでも前のめりになりそうな気持ちをぐっとこらえ、次の打席に向けて気持ちを切り替えられるか。その積み重ねが、強打者へと育つ道になっていくだろう。
勝ち点奪取に向け、活躍は欠かせない
ラストイヤーは主将にも就任した。「キャプテンになって、意識も変わってきたように見えますね」と中村監督が言うように、リーグ戦ではチームを何とか束ねていこうとする姿勢も、ベンチで見られた。
プロ野球の近鉄バファローズなどでプレーした中村監督は、昨春からチームの指揮を執るようになった。低迷していたチームを立て直すため、技術指導以上に身だしなみや取り組み方など、練習以前のことを細かく教えることが多い。
エドポロは「プレー以外のことを何度もよく言われます。練習でも試合でも手を抜かないとか、どんなことでも全力でやるとか。嫌な練習でもしっかりやって、それをどう生かしていくのかも大事だと思っています」と言う。
大阪学院大には野球部員だけの寮はなく、厳しい規律もない。自宅や一人暮らしで生活する選手が多く、チームとして勝利を目指す上では、それぞれが意識を高く保たなければならない。チームを引っ張る立場としても、勝ち点奪取に向けても、エドポロの活躍が欠かせない。

この春は大阪学院大戦が行われるたび、スタンドに多くのNPBスカウトが詰めかけている。注目度が増したこともあり、「(スタンドを)あまり見ないようにはしているんですけれど……」とエドポロ。視界には入ってしまうよね、という記者の問いには、「はい。あまり色々考えないようにはしています。将来のことがかかっているので、力んじゃうかもしれないですけれど、意外とそういう状況を楽しめているのもあるんです。それは自分でも少しビックリしています」と答えた。
エドポロの身体能力がどこまで発揮され、選手としての進化を遂げるのか。春のリーグ戦は折り返し地点。勝ち点を奪えていない現状のままでは終われない。
