陸上・駅伝

特集:2025日本学生陸上競技個人選手権大会

関大・前田彩花が女子10000mV 将来的にはマラソン挑戦へ「今はその途中過程」

女子10000mで優勝を果たした関西大学の前田彩花(すべて撮影・藤井みさ)

2025日本学生陸上競技個人選手権大会 女子10000m決勝

4月25日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

優勝 前田彩花(関西大3年)33分10秒60
2位 細見芽生(名城大1年)33分11秒27
3位 橋本和叶(名城大1年)33分12秒65
4位 野田真理耶(大東文化大3年)33分18秒60
5位 白川朝陽(筑波大2年)33分29秒94
6位 丸毛萌愛(駿河台大3年)33分31秒00
7位 小川陽香(立教大3年)33分31秒30
8位 髙橋葵(城西大4年)34分08秒66

4月25日に開催された2025日本学生陸上競技個人選手権の女子10000mで、関西大学の前田彩花(3年、愛知)が名城大学のルーキーたちを振り切り、優勝を飾った。大学1年目から「ずっと出たい」と思っていたFISUワールドユニバーシティゲームズ(以下、ユニバ)への出場が近づくとともに、レース後は将来、マラソンに挑戦する意向も表明した。

ラスト2周で勝負を仕掛け、一騎打ちを制す

レースには11選手が出場。昨年の日本インカレ女子10000mを制した立教大学の小川陽香(3年、順天)のほか、同レースで2位の大東文化大学・野田真理耶(3年、北九州市立)、同6位の筑波大学・白川朝陽(2年、大塚)ら、前年から全国で上位に入っている選手たちが名を連ねた。前田はこのレースで4位に入っており、もちろん有力選手の一人に数えられていた。

名城大学のルーキー・細見芽生(中央)と橋本和叶(左)を振り切った

スタート直後は小川が集団を引っ張り、最初の1000mを3分16秒で通過すると、今度は野田が先頭に立った。5000mまでは1000mのラップが3分20秒前後で刻まれ、前田は「最初から余裕を持って走れた」と振り返る。先頭集団が9人となった5000m付近で、前田が一度先頭に出た。「タイムがちょっと落ちつつあって、自分の走り的にもスピードに乗れていない感じがありました。自分の走りができたらいいなと思って」。ただ、ここで一気に後ろを引き離すことはしなかった。「思ったより湿気があって、暑かったので様子を見ました」

「スピードには自信がないので、いつ仕掛けようかずっと悩んでいました」と言う前田が勝負に出たのは、ラスト2周に差し掛かったところだった。ペースを上げると、付いてきたのは名城大のルーキー・細見芽生(1年、銀河学院)と橋本和叶(1年、新潟明訓)の2人。最後は細見との一騎打ちを制し、右人さし指を突き上げながらトップでゴールした。

右人さし指を突き上げ、笑顔でゴール

昨年、初の海外レースを経験「先入観を持たないように」

前田は高校から本格的に陸上を始めた。もともと長い距離を走ることが好きで、小中学生の頃は、趣味で父と一緒に山やロードを走っていたという。この頃から、いつかは「マラソンを走れたらいいね」と話していたそうだ。

だから大学入学時から目標にしていたユニバへの道も、まずはハーフマラソンでの出場をめざしていた。しかし3月16日、代表選考を兼ねた日本学生女子ハーフマラソンで4位に。3位までが代表内定となるところ、惜しくも次点だった。

将来的にマラソンへ挑戦する意向は強く、「今はまだその途中過程」ととらえている。そんな前田がより世界を意識する出来事が、昨年11月にあった。日本学生陸上競技連合からオランダ・ナイメーヘンで開催される15kmロードレースの派遣メンバーに選ばれたのだ。

自身初の海外レース。これまでは日本の学生のことばかり意識していたと言うが、いざ海外の舞台に立つと「周りも同じような女の子でした」。海外の選手だから速いといった「先入観を持たないようにしていけたらと思います」。改めて、自分がめざす場所は〝世界〟だということを再認識する機会にもなった。

一緒に派遣された小川や野田とは、ここで仲良くなった。ただ、必要以上のライバル意識は持っていない。「あくまで自分を許せる走りができたらいいなと思っています」。周囲と比べた上での自分の立ち位置を深く考えることはせず、あくまで自分自身の走りと向き合っている。

海外レースを経験し、大東文化大の野田(先頭)や立教大の小川(右から2番目)と仲良くなった

駅伝ではシード権奪還をめざす

将来的なマラソン挑戦を見据え、ロードでも力を発揮するとなると、駅伝での活躍も期待される。チームは昨年10月の全日本大学女子駅伝で14位と苦しみ、上位8位までに与えられるシード権を3大会ぶりに失った。今年は9月に予定される関西学生女子駅伝で結果を残さなければならない。「チームとしてはそこで全日本への切符を勝ち取って、全日本では8位以内の入賞をめざしています」。前田の1年時は「3位以内」を目標にしていたと言い、「自分が卒業するまでには、もう一回立て直したい」と強い覚悟を持つ。

「区間賞は『取って当たり前』というレベルまで達して、チームの襷(たすき)がどんな順位で来ても、『私がいるから大丈夫』と安心してもらえるような人になりたいです。どんな順位からでも、最低8位以内に上げられるようなエースになりたいと思います」

駅伝シーズンではエースとして、チームに安心感を与える

チームのメンバーも、朝練にプラスアルファをするほど意識が高い選手ばかりだと言う。「あとはそれぞれの目標を何にするか、そこに向かってどんなプランを立てて努力できるか、というところだと思います」。ユニバの日本代表に選ばれたら、「マラソンでオリンピック選手になることを目標に、しっかりと経験を積んで、将来に向けたイメージ作りをしていけたら」。チームに向けた先の言葉を、自らが模範となって示している。

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