東洋大・松井海斗がスパート勝負を制し個人選手権5000mV「勝ち切れてよかった」

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4月27日の学生個人選手権最終日、男子5000m決勝で東洋大学の松井海斗（2年、埼玉栄）が自己ベスト、大会新記録で優勝した。ラスト100mの直線で早稲田大学の鈴木琉胤（るい、1年、八千代松陰）と激しいスパート合戦となり、勝ちきった。

集団後方から前へ、ラストスパート勝負で決着

レースには7人が出場。スタートするとすぐに鈴木が先頭に立ち、集団を引っ張った。強風が吹きつける中、1周半のところで青山学院大学の平松享祐（3年、中部大一）が先頭に。1000mを2分42秒で通過し、1400mほどで再び鈴木が先頭に立った。松井は集団の後方からレースを進めた。

2500mほどで集団が割れると、松井は前の集団につき、先頭集団は鈴木、青山学院大の宇田川瞬矢 (4年、東農大三)、法政大学の大島史也（4年、専大松戸）、松井の4人に。3800m手前で鈴木がペースを上げると、松井は鈴木につき、優勝争いは2人の勝負となった。残り1周の鐘が鳴り、2人はともにさらにペースアップ。鈴木のスパートに松井は食らいつき、残り100mでも勝敗がわからず、スタンドからは歓声が上がった。ラスト50mで松井は鈴木に並び、鈴木を差し切ってフィニッシュした。

7月にドイツのライン・ルールで開催されるFISUワールドユニバーシティゲームズの選考も兼ねていたこの大会。派遣標準記録は13分40秒で、松井は自己ベストを更新したが標準記録には届かなかった。

「やっぱり勝ちきって、13分40秒を目標にしていたレースだったので、そこは少し悔しいというか、課題が残るレースだったと思います」と言いつつも、最後に勝ちきれたことについてはポジティブに捉えた。「高校の時も全国的な大会でずっと2位や3位で、いいところまでいっても勝ち切ることができないレースが多かったので、そこは本当にうれしいと思います」

ラスト1周の勝負について問われると、「本当は残り400mから仕掛ける予定でした」という。「先に仕掛けられて、残り200mでもう1回動かされて、本当に苦しかったんですけど、『勝ちきらなければいけない』という気持ちもあったので、動かしきることができたかなと思います」

思い通りに走れず悔しかった1年目

松井は高校3年時の全国高校駅伝でエース区間の1区を走り、折田壮太（須磨学園→青山学院大）とデッドヒートを繰り広げ、区間2位となった。東洋大入学後も、早速6月の全日本大学駅伝関東地区選考会の1組でトップを取り、その直後のU20日本選手権男子5000mでは2位に。ルーキーながら主力の一人として期待された。

昨年8月にペルー・リマでのU20世界選手権男子5000mに日本代表として出場したが、15分31秒85で16位と本来の実力とはほど遠い走り。帰路の飛行機で首に痛みを感じ、帰国後に検査したところヘルニアと診断された。10月には内視鏡施術をし、駅伝シーズン当初はほとんど走ることすらできなかった。12月ぐらいから練習に復帰し、箱根駅伝の16人のエントリーメンバーに入ったものの、出走はならず。

「本当に悔しかったです。でも悔しかったのもあったんですが、自分の代わりに5区にエントリーされて走った宮崎（優、2年、東洋大牛久）だったり、ほかの同級生、先輩方が必死につないで9番という結果を出してくれて、シードを取れたおかげで今年も本戦に出られるので。そこでチームに恩返しができるように、そういう気持ちで今頑張っています」

チームに貢献し、駅伝では区間賞を

手術から復帰し、練習を順調に積み重ねられてきたことが今の結果につながってきた。今後克服したい課題を問われると「もう少し粘りの走りと、序盤からもっと集団の前で走る力をつけていきたいと思っています」と答えた。

松井の持ち味は、「後方からスタートしてどんどん選手を抜いていき、最後の最後まで先頭集団に食らいつき、スパート勝負で勝つ」形だ。今回はまさにその形を体現する走りだったが、さらに進化していきたいという思いが感じられた。

今季の目標を問われると、トラックではまだ関東インカレと全日本大学駅伝関東地区選考会が残っているため、チームに貢献する走りをしたいと話す。タイムでは5000m13分30秒、10000m28分30秒を目指していく。駅伝シーズンは、1年目は箱根駅伝では5区を希望していたが、今年は「その気持は変わらずですが、平地の区間もチャレンジするぞという気持ちです」。そして走るのであれば区間賞を目標にしたい、とも口にした。

「その1秒を削り出せ」を体現した松井の走り。“完全復活”ともいえる今回の結果を糧に、鉄紺を引き上げる原動力となることは間違いない。