アメフト

甘かった自分に別れを告げ、日本一の選手になって頂点を 関西学院大学DB東田隆太郎

関西学院大学の大黒柱、東田隆太郎がフィールドへ戻ってきた(撮影・北川直樹)

大学アメフトの春の交流戦が全国各地で始まっている。4月19日には神戸・王子スタジアムで関西学院大学ファイターズが立教大学ラッシャーズと戦い、10-0で春の初戦を終えた。関学ディフェンスの大黒柱がフィールドへ戻ってきた。DB(ディフェンスバック)の東田隆太郎(4年、関西学院)が関学のユニフォームで試合に出るのは、昨年5月の関西大学戦以来だった。

試合に出られたことに感謝

身長185cm、体重88kgの大型DBとして1年生から大活躍してきた東田は、2年生の秋のリーグ戦終盤からLB(ラインバッカー)やDL(ディフェンスライン)としてもプレーするようになった。この日は今年に入ってから練習しているというDBの中でも最後尾に構えるSF(セーフティー)としてプレーした。スターターで出て途中で退くまでに3タックルを記録。ただ持ち味のビッグプレーはなかった。試合後に声をかけると「今日は何もやってないです」と言って苦笑いした。

日本一になり、「フラボウル」の出場選手に選ばれるのを目標にしている(撮影・篠原大輔)

昨秋、関学は9年ぶりに甲子園ボウルの舞台に立てずにシーズンを終えた。全日本大学選手権準決勝で法政大学に負けた。ディフェンス陣はなかなか法政オフェンスのドライブを断ち切れなかった。「東田がいたらな」。そう感じた関学ファンの方も多かったはずだ。法政戦だけではない。東田は3年生の昨秋、1試合も出られなかった。昨年6月にU20日本代表の一員として参加したカナダ遠征での行動が問題視され、日本協会やチームから処分を受けた中の一人だった。

空白の一年を振り返り、東田は言った。「自分に甘かった。どこかで過信してて自分に甘かったと思います。自分に甘かった結果でこうなってる。そこが全部につながってると思います。いろんな人のおかげで今日の試合に出られたことに感謝しています。自分のせいでつらい時期があったんですけど、仲間とか親とかコーチ、いろんな人が支えてくれました。今日は『東田が帰ってきてよかった』と思ってもらえるプレーをしようと思いました。久々で、思うようにはいかなかったですけど」

1年生のときから関学ディフェンスを支えてきた(撮影・北川直樹)

涙目で撤収作業を手伝った法政大学戦

昨年の関学ディフェンスは当初、東田の存在を前提にシステムを組んでいた。彼が戦列を離れることになり、試行錯誤したがうまくいかない。大幅なシステム変更を余儀なくされた。11月30日、ファイターズが法政大に負けた試合の直後、東田は涙目で撤収作業を手伝っていた。「最初は負けた感覚が全然なくて、ちょっとしてから『全部自分のせいや』と思いました。キャプテンの永井励さんには1回生のときからずっとお世話になっていて、『お兄ちゃん』みたいな感じで呼ぶぐらい仲がよかった。その先輩たちの代が負けにつながることをしてしまった。自分がいなくてもチームが日本一になってくれることだけが願いだったので、頭が真っ白になりました」

2年生のときの甲子園ボウルから。再びここで躍動できるのか(撮影・北川直樹)

すぐに新チームが立ち上がり、新4年生だけのミーティングも増えた。そこで東田に対して「お前がもっと(前に出て)やらなあかんのちゃう」という声が上がった。「自分はずっとチームを引っ張ろうとしたことがなかったので、そこの気持ちの甘さを指摘されました。去年いろいろ失敗したからこそ、やらなあかんことがいっぱいあると突きつけられました」。年が明け、4年生一人ひとりが「この一年、自分は何をやるのか」について宣言する場があり、東田は「日本一になるために日本一の選手になる」と言った。そして3月、学生ラストイヤーはフットボールにかけるという思いを込めて頭を丸めた。

「スポーツの本質はセカンドチャンスにある」

どんな一年にしたいか、と聞かれて東田は言った。「まずいろんな方に恩返しするために、いいチームを作ったうえで、自分は絶対に一年努力しまくって、日本じゃ収まらないと言われるような選手になりたい。あとはアメフトだけじゃなくて人としても成長したなと思われるような行動をとっていきます」

立命館大学パンサーズでDBとしてプレーし、現在はスポーツアンカーとして活躍している近藤祐司さん(51)がかつて、雑誌のインタビューにこう答えていて、私はハッとさせられた。「スポーツの本質はセカンドチャンスにある」と。アメフトを通じて学生が学ぶべき大きなことの一つが、失敗してもそのまま終わらず、糧にしてやり返す心を身につけることだろう。東田隆太郎にとって、セカンドチャンスと向き合い続けるラストイヤーが始まった。

東田は日本の学生レベルを突き抜けた選手になる可能性を秘めている(撮影・篠原大輔)

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