陸上・駅伝

特集:2025日本学生陸上競技個人選手権大会

環太平洋大・前田陽向 個人選手権1500mVと800m3位に「手応えある3日間」

学生個人選手権800m、レース後に笑顔を見せる前田(すべて撮影・藤井みさ)

2025日本学生陸上競技個人選手権大会

@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

4月25日 男子1500m決勝
優勝 前田陽向(環太平洋大4年)4分03秒64
2位 大野聖登(順天堂大3年)4分03秒85
3位 塩原匠(順天堂大4年)4分04秒32

4月27日 男子800m決勝
優勝 落合晃(駒澤大1年)1分45秒88=大会新
2位 岡村颯太(鹿屋体育大3年)1分47秒04=大会新
3位 前田陽向(環太平洋大4年)1分47秒19=大会新

4月25日から27日まで開催された学生個人選手権で、環太平洋大学の前田陽向(4年、洛南)が1500mで優勝、800mで3位に入った。3日間で5本のレースを走るハードスケジュールだったが、走り終わった前田の顔には充実感がにじみ出ていた。

「優勝だけを目標に」しっかりと勝ちきった1500m

まず1日目に行われたのは1500m。予選1組を3着で通過した前田は、15人での決勝に臨んだ。スタートすると全員が牽制(けんせい)し合い、ジョギングのようなスローペースに。最初の400mには77秒もかかった。2周目も74秒かかり、ここから順天堂大学の塩原匠(4年、東農大二)が一気にペースアップすると、全員がスピードを上げて集団が縦長に。前田は外側から前方に位置取りをし、次の400mは54秒で回った。ラスト300mで前田は前に立つと、そのままスパートで逃げ切って優勝した。

このレースに関しては、タイムよりも優勝だけを目標にしていたという前田。スローペースになったことについて「最初の方は、ちょっと笑ってしまうぐらい遅かったです」と笑う。ラスト300mから徐々に上げていき、残りの距離でしっかり勝ち切るというレースプランを描いていたが、800mから一気にペースが上がった。

「前に攻めていかないと後半逃げられてしまうって思ったので、しっかり前で攻めて、ラスト200mで前に出て勝ち切ることができてよかったです」と振り返った。

800mまで超スローペースだったが、そこから遅れずにしっかりと勝ちきれた

これまで800mを主戦場とし、日本選手権にも出場してきたが、中学や高校の先生には、「1500mの方が絶対に伸びる」と言われ続けてきた。前田自身もゆくゆくは1500mで勝負していきたいという思いがあり、その前段階としても、体作りとしても800mでしっかり結果を残していくつもりだという。

800mでは駒澤大学のスーパールーキー・落合晃(1年、滋賀学園)が昨年のインターハイで1分44秒80の日本新記録をマーク。同じ大学のフィールドで戦うことになりましたが、とたずねると「年下に負けるっていうのはやっぱり悔しいんで、しっかりそこにも勝って、(1分)44秒台を確実に出して、世界陸上などに出場できる選手になっていきたいなと思っています」と意気込みを語った。

「1500mのほうが伸びる」と言われ続けてきた。ゆくゆくは1500mを主戦場にという気持ちがある

落合をマークして3位「悔しいけどいい手応え」

800mの予選は2日目の昼にあり、前田はこちらも組1着で通過。3時間後の準決勝も組1着で通過し、大会最終日の決勝でついに落合と同じレースで走ることになった。

スタートしてオープンレーンになったタイミングで落合が早速先頭を取り、300mほどで前田は外から集団の前方に上がり2番手につけた。1周目を53秒で回り、前田は落合に食らいついていったものの、ラストの直線で鹿屋体育大学の岡村颯太(3年、致遠館)にかわされて3位でのフィニッシュとなった。ゴールするとトラックに倒れ込み、しばらく目を閉じていた。

これで3日間で5本のレースを走った。「さすがにきつかったですけど、昨日に比べたら全然疲労感もなくて、いけるかなと思って。正直もう順位とかより、攻めた走りをしようと思っていました」

序盤から飛び出した落合をしっかりマークして走った

800mには落合のほかにも強力なライバルたちがいるが、予選、準決勝の走りを見ているとそこまで調子が良くないのではと感じていた。そのため落合を重点的にマークし、落合が序盤から飛ばすことはわかっていたため、「後輩なんですけど、うまいこと使って記録も出たらいいなと思っていました」という狙いがあった。

実際に落合の走りはどうですか? とたずねると、「やっぱり強いの一言ですね」。とはいえ「後輩ですし、負けてられないなとは思いました」。では、もし今回800mだけに絞っていたら? と重ねて聞くと、「勝ってました」ときっぱり。笑顔だったが、日本記録保持者の落合にも負けない、という強い思いを感じさせた。

3日間で5本のレースを走るのは前田にとっても初めて。疲れは感じつつも充実感が大きかった

優勝を目指して3位だったことには「ちょっと悔しいんですが、1500m、800mとトータルしてみたら、いい仕上がりじゃないかと」と口にした。特に5本目を自己ベスト(1分47秒09)に近いタイムで走れたことに触れ、「冬季前から(1分)46秒、45秒ぐらいは見えていたので。(5本目の)最後の締めとして(1分)47秒1台で走れているのは、かなりいい手応えかと思います」

金栗記念で感じた伸びしろ、もっとレベルアップを

前田は学生個人選手権の2週間前に金栗記念の1500mに出場し、学生歴代4位となる3分38秒61をマーク。シーズンインということもあり3分45秒台ぐらいで走ろうと思っていたが、結果的に自己ベストを2秒以上更新したことで、「まだいける」と自分の伸びしろを感じた。その勢いのまま今回の学生個人選手権に臨み、充実したレース内容となった。

このあとは5月3日の静岡国際に800mで出場予定だ。「正直、タイムが出るっていう自信もあるので、かなりいい記録を出せるんじゃないかと思います」といい、目標は「高望みせず(1分)46秒台はしっかり出していきたいです」。

手応えを得てさらに上へ。世界の舞台を経験する前田の今後も楽しみだ

静岡国際の後は6月の日本インカレまで試合を予定していない。ここで練習を積み、もう一段階レベルアップし、日本インカレで調子を上げて、日本選手権へと向かう予定だ。今月28日には、学生個人選手権の結果を受けて7月21日から27日までドイツのライン・ルールで開催されるFISUワールドユニバーシティゲームズ男子1500m日本代表に選出されることも発表された。前田としても、環太平洋大としても初の日本代表。ここでも大きな経験を得ることは間違いない。

今年は環太平洋大陸上部の主将も務めている前田。大学最終学年でのさらなる飛躍を期待させる大会となった。

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