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東海大学・渡邉伶音 ウインターカップ優勝は「過去の話」言い訳できない環境で成長を

公式戦デビューを果たした東海大の注目ルーキー・渡邉伶音(すべて撮影・井上翔太)

注目のルーキーが大学の公式戦でデビューを果たした。昨年のウインターカップでチームを優勝に導いた東海大学の渡邉伶音(1年、福岡大大濠)が、第74回関東大学バスケットボール選手権の初戦に登場。まだチームに合流して日が浅く、動きには硬さも見られたが、確かな一歩を踏み出した。

アップの時から緊張「頭が真っ白に」

東海大にとって初戦となった4月30日の駒澤大学戦。8-12と4点ビハインドの第1クオーター(Q)途中で、背番号3をつけた渡邉が投入された。身長210cmのムスタファ・ンバアイ(2年、福岡第一)との交代だったため、207cmの高さを誇る渡邉も5番のポジション(センター)へ。高さを生かしてゴール下でパスを受けたり、リバウンドに果敢に飛び込んだりする場面も見られたが、シュートはリングにはじかれることも多かった。

207cmの長身を生かし、この日はセンターを務めることが多かった

「初めての大学バスケの試合だったので、アップの時から緊張して、頭が真っ白になってました。いま自分の一番の課題はフィジカルだと思っているんですけど、今日はフィジカル以前に、決めるべきシュートをぽろぽろさせてしまった部分がかなりあった」。試合後の本人は、本来のパフォーマンスを発揮しきれなかったことを悔やみ、今季から指揮を執る入野貴幸ヘッドコーチも「伶音はもっともっとできる」と期待をかけた。

昨年12月29日、鳥取城北とのウインターカップ決勝を制し3年ぶり4度目の優勝を果たした後は、直後の今年1月1日、B2のアルティーリ千葉に特別指定選手として加入することが発表された。Bリーグでは主に3番ポジション(スモールフォワード)を任されていたこともあり、ガードの選手やウィングプレーヤーと一緒にワークアウトすることが多かった。「1対1とか、上の部分でのディフェンスとか、色んなことを学ばせてもらいました」

デビュー戦ということもあり、アップの時から緊張していたと振り返る

入野貴幸HC「いまアジャストしているのはすごい」

一方で特別指定の活動が3月31日まで続いたこともあり、東海大への合流は他のルーキーたちより遅れた。チームにとって貴重な実戦の機会となる3月のスプリングマッチやKU CAMPにも参加はかなわず、東海大での初練習は本人によると4月4日。さらに4月18~20日は、5月に予定される李相佰盃の第2次強化合宿にも参加していたため、東海大でちゃんと練習できたのは「10回いったかぐらい」(入野HC)だったという。

Bリーグではプレータイムも最長で4分程度と短かったため、東海大に合流直後は体力の低下も懸念されていた。入野HCは「筋肉量も落ちていましたし、いい状態ではありませんでした。なので今大会も、体力的なことを考えて出し入れしながら、練習もそこまでできていないので、ゲームの中で合わせていくという作業をしています」。裏を返せば、これから順調に実戦経験を積めば、渡邉本来の能力がどんどん発揮されていくということだろう。入野HCは「いまアジャストしている伶音はすごいと思います」と現状を高く評価している。

相手ディフェンスのチェックを受けつつ、ゴール下からリングに向かう

「ただやっているだけでは、成長はない」

渡邉に東海大でバスケをしたいと思った一番の決め手を尋ねると、「みんなすごく熱いですし、『ディフェンスからバスケットをする』というところにみんなが情熱を持っている。あとは、本当に素晴らしい環境があるので、『自分に言い訳できない』と思ったのがきっかけです」と答えてくれた。

「毎日の練習がハードだった」と振り返る高校時代に比べて、大学バスケは「練習の強度はありますけど、高校と比べると練習時間や走る量が下がる」と感じている。その分「自分で追い込まないといけないですし、年齢的なカテゴリーが上がる分、自分に責任が生まれる。ただやっているだけでは、成長はない」と考えている。

「ディフェンスからバスケットをする情熱」にひかれ、東海大に進んだ

実際、行動に移してもいる。「まったくバスケをしない日を、今は作ってないです」。休みの日でも関係なく、毎朝6時からワークアウトに励んでいる。「同級生もいろんな舞台で活躍している選手がいっぱいいるので、自分も負けたくない。常に『今自分は何ができるのか』を考えています」

東海大の同期からも刺激をもらっている。駒澤大戦ではU18日本代表やディベロップメントキャンプで一緒だった十返翔里(とがえり・しょうり、1年、八王子学園八王子)が豪快なワンハンドダンクをたたき込んだ。入野HCは「十返は練習への取り組みがめちゃくちゃ良いです。『とにかくうまくなる』っていう思いが成長につながっていくと感じています。チーム内の競争は(先輩陣も含めて)激化していきます」。

豪快なワンハンドダンクを沈めた東海大の十返翔里

取材の最後、渡邉はウインターカップ優勝について「過去の話」と口にした。前しか見ていない渡邉がここからどこまで成長し、ポジションを上げていくのか。背番号と同じ「3番」でアウトサイドからのプレーについても首脳陣から信頼を得られるようになったとき、バスケ選手としての完成形が見えてくる。大器の底は、まだまだ見えない。

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