早稲田大・鈴木琉胤 注目のルーキーが描く、ロサンゼルス・オリンピックまでの青写真

2025日本学生陸上競技個人選手権大会 男子5000m決勝
4月27日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
優勝 松井海斗(東洋大2年)13分44秒59=大会新
2位 鈴木琉胤(早稲田大1年)13分44秒83=大会新
3位 大島史也(法政大4年)13分56秒53
4位 宇田川瞬矢(青山学院大4年)14分00秒74
5位 折田壮太(青山学院大2年)14分31秒46
6位 濵口大和(中央大1年)14分42秒57
2025日本学生陸上競技個人選手権最終日の4月27日、男子5000m決勝で早稲田大学注目ルーキーの一人・鈴木琉胤(るい、1年、八千代松陰)が2位に入った。スタートから終始先頭を引き続け、積極的なレース展開が光った。伝統ある臙脂(えんじ)のユニホームを身にまとい、大学4年時に迎えるロサンゼルス・オリンピック出場をめざす。
積極的なレースをすることは大学でも曲げない
レースには7選手が出場。最も外側からスタートした鈴木は花田勝彦・駅伝監督から「自分のやりたい走りをしてこい」と言われていたと明かす。その言葉で「自分がもともと思っていたことを迷いなくできた」と鈴木。スタート直後にするすると前に出て、いきなり先頭でレースを引っ張った。「大学に入っても、高校でやってきたような積極的なレースを続けていこうと思っていました。そこは一つ、絶対に曲げないところでした」

2周目には青山学院大学の平松享祐(3年、中部大一)が鈴木の前に出た。「1回出られたときには『タイムが落ちてなければ、そのままでいいかな』と思ってました」。最初の1000m通過タイムは2分42秒。ただ鈴木は次の1000mに向かう途中で平松をかわし、再び先頭に立った。「(後ろに)つくのは嫌いなので、途中で我慢できなくなって、パッと出ました。そこからは誰にも前に立たせないように走っていました」
3000mに向かうところで縦長になった先頭集団は鈴木、青山学院大の宇田川瞬矢(4年、東農大三)、法政大学の大島史也(4年、専大松戸)、東洋大学の松井海斗(2年、埼玉栄)の4人となり、8分17秒で3000mを通過。4000m手前で優勝争いは鈴木と松井に絞られた。鈴木はラストスパート前の心境について、次のように振り返る。
「思ったより4人になったのが遅くて、『離れないなぁ』と思いながら我慢するようなレースでした。4000mで2人になったときも、ラスト勝負にしようと思ってペースを落とすと、後ろから追いつかれてしまうという難しい部分がありました」

コンディションでレースを変えるようでは通用しない
鈴木は結果的にラスト1周までペースを維持した。後ろにピタリといた松井については「ついてこられないかなと思っていました」。しかし暑さとバックストレートで吹き付ける強い向かい風の影響もあり、「だんだん体力がなくなってきちゃいました」。最後の直線までもつれた勝負は、松井が僅差(きんさ)で制し、鈴木は2位でのゴールとなった。
「ラストは力が残っていなかったのかなと思います。先輩たちの意地というか、大学初のレースで洗礼を受けたなと。自分の想定ではついてこないと思っていたので、やりづらいレースでした。粘り強い選手がたくさんいたことは、初戦でいい経験になったかなと思います」

高い気温と強い風の中で先頭を引っ張り続けるのは、勇気がいるだろう。グラウンドコンディションが決して良いとは言えない中でも、それを決行したのはなぜか、という質問に鈴木はこう答えた。「自分は高校の時から『前を引いて勝ちきる』ということをしてきました。それで勝てなかったら『自分の力不足』と諦めがつくんです。コンディションを見ながらレース展開を変えているようでは通用しない。そこはずっと曲げずにやってきました」
勝ち気な性格で、現状に満足しないアスリート気質であることが、十分にうかがえる言葉だった。以前、花田監督に話を聞いた時、「今の選手は意識が高くて、放っておいたらいつまでも練習してしまう。それを止めるのが指導者の仕事」と口にしていたことを思い出した。
1、2年目は「ための時期」、3年目で記録を狙う
強いて課題を挙げるとするならば、レースの途中でペースが落ちてしまったことだと鈴木は言う。おそらく1000mから2000mにかけて6秒のペースダウンがあったことを指しているのだろう。「そこで後ろの選手も少し楽になったかなと思うので、自分が(ペースを)上げられていれば、トータルタイムも上がりますし、誰もついてこられないレースになったのかなと思います」
高校3年時は全国高校総体(インターハイ)男子5000m決勝で13分39秒85をマークして2位。冬の全国高校駅伝はエースが集う最長区間(10km)の1区で区間賞に輝いた。早稲田大入学直前の今年3月29日には、オーストラリアのメルボルンで開催された5000mのレースで13分25秒59と、高校歴代2位の記録をたたき出した。

世代屈指のスピードランナーとして注目される鈴木は、今年から臙脂(えんじ)のユニホームを着ることについて「テレビで見ていたユニホームで、いざ着ると重みがあって……。これから自分の色にできるように頑張っていきたい」と誓う。
生活環境も変わり、1、2年目は「ための時期」としてじっくりと力を蓄え、3年目で記録を狙いにいき、大学ラストイヤーで迎えるロサンゼルス・オリンピックにトラック種目での出場をめざす。それが「世界で戦える選手を目指す」鈴木が描いている青写真だ。
