オリンピックに二刀流、立命館大に夢だらけのルーキー RB奥村倖大・DB山本依武希

昨年12月の甲子園ボウルで9年ぶりとなる大学アメフト日本一に輝いた立命館大学パンサーズが4月27日、春の初戦として東海大学トライトンズ(関東大学1部BIG8)との定期戦(富士通スタジアム川崎)に臨み、41-6と大勝した。復活したパンサーズの門をたたいたルーキーたちも、実戦デビューを飾った。
山本はスタメンデビューでインターセプト
新入生の中でも注目を集めたのが、フラッグフットボールで2028年ロサンゼルス・オリンピック出場を狙うRB(ランニングバック)奥村倖大(こうだい、追手門学院)と、DB(ディフェンスバック)とWR(ワイドレシーバー)の攻守二刀流を目指す山本依武希(いぶき、立命館宇治)だ。
山本はいきなりDBのスターターとして出場した。立命館宇治高ではDBとWRの攻守両面で大活躍し、昨年6月のU20世界選手権に際して結成された日本代表に入った3人の高校生の一人だった。13-0で迎えた第2Q(クオーター)中盤、立命館DL(ディフェンスライン)の激しいラッシュを受けた相手QBのパスが浮く。右のCB(コーナーバック)に構えていた山本は「これ、捕れる!!」と反応し、ジャンプしてつかんだ。

スタメン出場が決まったときから狙っていたインターセプトを決めると、先輩たちが集まってきてくれた。「実力でスタメンになったんじゃなくてたまたまですけど、大学での初戦から出て、インセプもできてよかったです」。山本は試合後、いい笑顔でそう話した。後半からはサイドラインに下がり、WRとしての出番を待っていた。

奥村は初のオフェンスプレーで独走TD
奥村は昨年初めて高校日本一に輝いた追手門学院の大エースだった。すぐにトップスピードに乗れるのが最大の強みで、高校時代は独走TD(タッチダウン)を量産した。パンサーズのおひざ元である滋賀県草津市で生まれ育ち、草津リトルパンサーズで競技を始めた。U15やU17のフラッグフットボール日本代表に選ばれてきており、4月に発表された28年ロサンゼルス・オリンピックに向けた男子の強化指定選手24人にも入った。この日は、昨年のキャプテンで年間最優秀選手賞(チャック・ミルズ杯)に輝いたRB山嵜大央(現・富士通)の付けていた22番のユニフォームで出番に備えた。先輩からは「あれ、22番ってそんなカリカリやったっけ」とイジられた。

早く出たくてウズウズしていると、ようやく第3Qにパントリターナーとしてフィールドに送り出された。このときは相手の蹴ったボールが奥村のかなり前でサイドラインを割ったため、リターンできなかった。次は試合時間残り53秒からの相手のキックオフで、リターナーに入った。立命館のサイドラインから「おっくん、狙いすぎるなよ!!」の声が飛んだ。今度はキックされたボールをキャッチ。しかし東海大のキックカバー陣がよく、わずかなゲインで止められた。奥村はそのままオフェンスに残った。
自陣28ydからの第1ダウン。スナップを受けたQBも、このプレーから入ったルーキーの井口想良(立命館宇治)だ。井口はラッシュをかけてきた相手DLの頭越しにフワッと奥村へパス。スクリーンだ。奥村がパスを捕って振り向くと味方のブロックが完璧で、花道が見えたそうだ。「これはきたな」。22番はグングン加速し、エンドゾーンまで駆け抜けた。

大学生として初めてのオフェンスでのプレーで独走TD。さすがというしかない。立命館のサイドラインも観客席もこの日最高の盛り上がりを見せた。サイドラインに戻った奥村は祝福の嵐でもみくちゃになった。試合後に奥村に取材していると、通りがかった先輩も同期も「よっ、スーパースター」と声をかけていった。「数少ないプレーでいい結果を残さんとな、と思ってました。(オフェンスコーディネーターの山口)慶人さんが、スペースがあれば僕が走りやすいのを知っててくださってて、スクリーンを入れてくださったと思います。タッチダウンまで持っていけてよかったです」。草津が生んだスーパースターはそう振り返った。このプレー、実は山本もWRとして初めて入っていた。「やっと出られたと思ったら、1プレーで終わりました」と言って笑った。

6月にフラッグフットボールの国際親善大会がロサンゼルスであり、先に発表されたオリンピック強化指定選手24人のうち選ばれた12人だけが海を渡る。奥村はその選考のため、東京での練習にも参加している。「世代別のときとはレベルが段違いで、ほんとに誰が選ばれるか全然分からない感じです。すごくいい経験をさせてもらっていると思ってて、いろんな人とのつながりが増えたのが、すごくうれしいです」。パンサーズでRBとしての序列を上げていきつつ、フラッグで28年のオリンピック出場を狙う日々が続いていく。
両面出場への挑戦、高橋監督「全面的にバックアップ」
山本は大学進学にあたって、攻守両面で出られる選手になることを心に誓った。「高校までは人が足りないから両方で出てた部分もあるんですけど、大学では普通やらない中で両面で出られたら、ほんまにすごいと思います。チームからはまずディフェンスでと言われてます。でもレシーバーもほんまに好きなんで、オフェンスでも出たいです」。立命館のトラビス・ハンター(コロラド大~NFLジャガーズ)になりたいかと尋ねると、「なれるように頑張ります」と力強く返した。高橋健太郎監督は彼の思いをよく知っており、両面出場への挑戦について「全面的にバックアップします」と話している。
奥村も山本も、入学1カ月にして早くもパンサーズが大好きになったと言いきる。先輩たちがとにかく明るくて優しく、フットボールがめっちゃ楽しい、と。彼らの明るく楽しいチャレンジを追っていくのもまた、めっちゃ楽しそうだ。

