陸上・駅伝

特集:第104回関東学生陸上競技対校選手権

早大・山口智規が関東インカレ10000m1部日本人トップ 駅伝主将の背中を見せる

強風の中、レースの半分ほどを単独走で押し切った山口(すべて撮影・藤井みさ)

第104回 関東学生陸上競技対校選手権大会 男子1部10000m決勝

5月8日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

優勝 ジェームス・ムトゥク(山梨学院大4年)28分06秒37
2位 ヴィクター・キムタイ(城西大4年)28分31秒37
3位 山口智規(早稲田大4年)28分37秒82
4位 山崎丞(日本体育大4年)28分53秒27
5位 野田晶斗(法政大3年)28分55秒80
6位 清水郁杜(法政大4年)28分56秒58
7位 佐藤大介(中央大2年)29分03秒41
8位 高田眞朋(日本大3年)29分08秒78

5月8日の関東インカレ1日目にあった男子1部10000m決勝で、早稲田大学の山口智規(4年、学法石川)が3位に入り日本人トップとなった。最低限の走りができたと振り返る山口は、最終学年で駅伝主将となって担う責任の重さについて口にした。

序盤はハイペースで先頭へ

レースには17人が出場。スタートしてすぐに山口が前に出て、先頭で一人旅に。最初の1000mは2分43秒とハイペース。1800mで徐々に間隔を詰めてきた山梨学院大学のジェームス・ムトゥク(3年、ンゴニ)が先頭に立ち、ペースを上げて前へ。山口は後ろから来た順天堂大学の石岡大侑(ひろゆき、4年、出水中央)と2人で走り、3000mを過ぎてからはそこに城西大学のヴィクター・キムタイ(4年、マウ)もついた。

キムタイ、石岡、山口の順に3人となったが、後ろにつかれることを嫌ったキムタイがペースを上げた。石岡が下がり、山口も5400mほどでキムタイから離れ、単独走になった。山口はそのまま最後まで1人で走り続け、全体3位、日本人トップでゴールした。

入りの1000mは2分43秒とハイペース。積極的なレース運びだった

レース後、山口は「優勝を狙っていたんですが、若干思うようなレース展開ができずに3位という結果になってしまいました。でも駅伝主将を任された身で、こうやって気持ちを見せるレースができたのでよかったかなと思います」とまず振り返った。

最初に1人で飛び出したことについて問われると、「調子もよかったので、スローペースになるのはもったいないなと思って。ハイペースになったらいいなと思ったんですけど、風があったので誰も出たがらないだろうなと思っていたら、前に出されてしまったような感じになって、そこは腹をくくっていきました」という。

花田勝彦監督からも、「調子がいいので(1000m)2分50秒ぐらいで押していけるんじゃないか」と言われていた。ハイペースの練習を積んでいたため、そのイメージで入り、8000mぐらいまでいきたいと思っていたが、「なにより風が強かったですね。本当に甘くなくて、最低限の走りになってしまいました」と辛口評価だ。

チームに貢献する「最低限の走り」

2月と3月はオーストラリアの合宿に行っていた山口。しかし4月に帰国してからは気候の変化などもあり、体調を崩してしまった。4月末の学生個人選手権は、7月にドイツで開催されるFISUワールドユニバーシティゲームズの選考を兼ねていたが、男子10000mにエントリーしていた山口は調子を合わせることができず、29分52秒00で11位と本来の実力とはほど遠い結果となってしまった。

2週間前の学生個人選手権は、体調不良で合わせられなかった。そこからチームの思いも背負って強化してきた

そこから2週間弱で迎えた今回のレース。個人選手権は個人のレースだが、関東インカレは「対校戦」となるので、駅伝主将としてチームのために、という思いがあった。個人選手権から関東インカレまでの期間を強化にあて、必ずチームに貢献できるようにと準備してきた。

駅伝主将として、チームに目を向ける難しさ

年始の箱根駅伝で総合4位となったあと、満足している選手は1人もいなかったという。1月4日にすぐに新チームのミーティングを行い、全員で熱く語って「絶対(箱根駅伝)総合優勝するぞ」と話をした。そして2月からは勢いのある新入生が練習に参加。「いままでになかった早稲田大学が、4年目にして見られてるんじゃないかなと思います」

勢いのある、熱い新チームで、山口は駅伝主将を務めている。昨年、上級生になった時に立てた目標は「5000m、10000mの学生記録を更新する」。しかしオーストラリア合宿を経て、4月に本格的にチームに合流した時に、「自分だけの競技ではない」という思いが実感として湧いてきた。

駅伝主将になり、あらためて伝統あるチームの「重み」や「責任」のようなものを感じたという山口

「駅伝主将である前に、いち競技者としてわがままでありたいと思っていました。でもいざこの伝統あるチームの駅伝主将になったからには、自分の競技よりもなによりも、チームとして駅伝でしっかり結果を残さないといけないと思うようになりました。伝統あるチームの輝きをもう一度取り戻せたらなと思っています」。ただ、これまで自らに集中して実力を高めてきた山口にとって、チームに目を向けてやっていくことは難しさもあった。

「キャプテンだからといって、僕が何をしようとチームを強くすることはできないと思うんですけど……同じ方向に向かっていく仲間たちなので。やっぱり個性が強いので、勉強もみんな大変ですし、目指す部分が違うところもあります。あと今までは4年生が故障で苦しんでいたので、そこはなんとしても自分が走って、引っ張っていかないといけないなと思っていました」

キャプテンとしてチームの中心に立つ覚悟

山口は最終日に行われる5000mにも出場予定だ。同じレースにはルーキーで先日の個人選手権男子5000mで僅差(きんさ)の2位になった鈴木琉胤(るい、1年、八千代松陰)と山口竣平(2年、佐久長聖)も出場する。

「早稲田も3枚そろえてますし、他大学も5000mはかなり力を入れてきていると思うので。前半シーズンの力比べとして、僕もですが他の2人にもしっかり点数を取ってもらって、早稲田の存在感を出していければなと思います」

2月の学生ハーフでは「早稲田の名探偵」工藤慎作(3年、八千代松陰)が優勝し、個人選手権ではルーキーの佐々木哲(1年、佐久長聖)が3000mSCで優勝。後輩たちの勢いが目立つが、負けるつもりはない。

最終日の5000mにも出場予定。早稲田の勢いを前半シーズンから見せる

「競技者として埋もれないためにも、僕も上を目指していきたいですし、なにより駅伝主将として下の選手たちに『俺の背中見とけよ』ぐらいの練習をしたり、結果を残したりしていきたいなと思っています」

最終学年、駅伝主将として、早稲田のエースとして。チームのために山口は走り続ける。

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