陸上・駅伝

特集:第104回関東学生陸上競技対校選手権

青山学院大・安島莉玖 関カレ2部10000mでつかんだ自信「青学の準エースに」

レース後、笑顔で撮影に応じた安島(右)と同級生の黒田(すべて撮影・藤井みさ)

第104回 関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部10000m決勝

5月8日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

優勝 スティーブン・ムチーニ(創価大3年)28分14秒30
2位 ネルソン・マンデランビティ(桜美林大4年)28分16秒10
3位 デイビッド・シュンゲヤネイヤイ(麗澤大4年)28分17秒45
4位 安島莉玖(青山学院大2年)28分19秒81
5位 黒田然(青山学院大2年)28分24秒38
6位 スティーブン・レマイヤン(駿河台大3年)28分28秒24
7位 辻原輝(國學院大3年)28分31秒42
8位 小池莉希(創価大3年) 28分35秒98

5月8日の関東インカレ1日目に行われた男子2部10000mで、青山学院大学の安島莉玖(2年、大垣日大)が4位に入り、日本人トップになった。粘りの走りで最後まで留学生に食らいつき、従来の自己ベストだった28分56秒62を大幅に更新する28分19秒81をマーク。「大きな自信になった」と手応えを語った。

最後まで留学生に食らいつく粘りの走り

レースには25人が出場し、青学勢は安島、黒田然(2年、玉野光南)、佐藤愛斗(2年、小林)と2年生3人がエントリー。スタートしてすぐに集団が縦長になり、安島は一時集団の最後方で走る場面もあった。

麗澤大学のデイビッド・シュンゲヤネイヤイ(4年)が先頭となり、創価大学のスティーブン・ムチーニ(3年)、桜美林大学のネルソン・マンデランビティ(4年)、駿河台大学のスティーブン・レマイヤン(3年)ら留学生集団がレースを引っ張る。そこに創価大の小池莉希(3年、佐久長聖)、國學院大學の青木瑠郁(4年、健大高崎)と辻原輝(3年、藤沢翔陵)、黒田らもついた。

序盤は集団の後方でレースを進めた安島

安島は徐々に位置取りを前にし、5000m手前から先頭集団へ。すでに苦しい表情を見せるが、ペースが落ちることはなかった。6400mを過ぎたあたりでは、留学生についているのが青木、黒田、辻原、安島の4人に。8000mを過ぎると先頭集団はさらに縦長になり、シュンゲヤネイヤイ、ムチーニ、マンデランビティの3人に青木と安島がつく形になった。

残り2周手前で青木が失速して先頭集団から離れると、先頭は留学生3人と安島の4人に。ラスト1周でペースが上がったが、安島は大きく離されることなく4位でのゴールとなった。ゴール後は何度も「よっしゃ!!」と雄たけびを上げ、黒田との記念撮影に応じたあとはこみ上げる涙を抑えきれない場面もあった。

「人生最高」の会心のレース

レースを振り返って、安島は「人生最高です。120点満点、120点オーバーです」とまず口にした。10000mのレースを走るのはこれが2回目だが、10kmの距離は駅伝で何度も経験している。7000mあたりで乳酸が出て、きつくなることはわかっていたため、「きつくても絶対つこう」という気持ちで乗り切ったと話す。100%の力を最大限使い切ることを意識してレースに臨み、その通りの結果となった。

後方からレースを進めたことについてたずねると、「自分は2レーンを走ることが多くて、それがもったいないというのは指摘されていので、最短距離を走りたいと思って後方にいました」と理由を語る。留学生のペースに最後までついていったことについては「ゴールタイムを見て驚いたんですけど、意外とつらくなかったなと思います」と大物ぶりを見せる。

走り終わったあと、安島は何度も雄たけびを上げた

安島は大垣日大高校2年時、岐阜県高校駅伝の4区を走り、58秒差を逆転して3位から1位に浮上。後続がトップを守り、学校として初の都大路出場を果たした。3年時には都道府県駅伝の1区を走り、区間3位で区間記録を更新。陸上に対しての成功体験を抱いて青学に入学したが、強い先輩や同期に囲まれ、自分として納得のいく結果を残せずギャップに苦しんだ。

練習メニューも、ロングインターバル中心だったところから、酸素の運搬能力を鍛える練習が9割となり、「本当にこれで速くなるのかな」と不安にかられることもあった。もうやっていけないのでは……と家族や友人、地元の恩師などに弱音を吐くことも多々あった。

「本当に去年すごく弱くて。でもそれがやっと花開いたっていうか、監督が与えてくれたメニューを信じてきて良かったという気持ちで、本当にこみ上げてきた思いがありました」と涙の理由を語った。

黒田朝日に次ぐ「青学の準エース」に

安島はこのレースに出場するにあたり、2日前に原晋監督に「学内トップで日本インカレの標準記録(28分35秒)を切ったら、(日本インカレの)10000mに出させてほしいです」と話してからここにきた。「その条件を満たしたので、それ(日本インカレ出場)は目指していきます」

チームのキャプテンを務めるのは黒田朝日(4年、玉野光南)。今年の箱根駅伝2区では1時間5分台で走るなど、実力は学生トップレベルだ。もちろんチームのエースとしても先頭に立つ存在だが、安島は「朝日さんがエースで、自分は青学の準エース、次のエースになるんだという気持ちで走ります」ときっぱり言い切った。

キャプテンでエースの黒田朝日に次ぐ「準エース」として青学を引っ張りたいと話す

安島の同級生には黒田然のほか、世代トップと言われて入学した折田壮太(2年、須磨学園)、ルーキーイヤーに唯一箱根駅伝を走った小河原陽琉(ひかる、2年、八千代松陰)など強い選手がひしめいている。「準エース」を目指していくうえで、特に折田はどのような存在かという質問に、安島はこう答えた。

「自分は学年の中で本当に下の方で、立場的に結構だらしない部分が多くて、みんなに助けてもらいながらという形です。折田は競技面でも生活面でも世代のリーダーというか、中心というか、本当に彼がいるから世代が成り立っているというところがあります」

自信をつかみ、挑戦し続ける

折田の存在の大きさは認めつつも、負けられない。会心のレースで自信をつけ、さらに上を目指していくつもりだ。今回のレースで特に評価できるところをあらためて聞いてみた。

「やっぱりタイムも順位も伴ったというのが、すごくいいと思っています。今までは駅伝が得意で、いい順位でもトラックのタイムがあまり伴っていないというのがあったので、速さも強さも証明できたのがすごく大きいです」

自らのレースを120点満点と評した安島。大きな自信を得た

将来的にはマラソンをやりたいと話す安島だが、学生のうちはスピードをつけるためにトラックでしっかり結果を残したいと考えているという。「今季は27分40秒を目指していきたいです。その先は本当に目指せる、行き着くところまで行きたいなって思ってます。マラソンのために、10000mの日本記録を更新するぐらいの気持ちで、ずっと挑戦し続けたいです」

ポテンシャル充分だった逸材が、ついにつかんだ自信と結果。青学にまた強力な戦力が名乗りを上げたレースとなった。

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