立命館大・瀧野未来 憧れの先輩と着る日本代表ユニホーム「こんなに早くかなうとは」

2025日本学生陸上競技個人選手権大会 女子400mハードル決勝
4月27日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
優勝 瀧野未来(立命館大2年)58秒55
2位 大川寿美香(早稲田大4年)59秒11
3位 小笠原光咲(福岡大3年)59秒25
4位 千葉史織(早稲田大2年)59秒34
5位 平木陽(大阪成蹊大3年)1分00秒12
6位 タネル舞璃乃(東京学芸大4年)1分00秒47
7位 新戸怜音(尚美学園大4年)1分00秒90
8位 益子芽里(中央大4年)1分01秒22
2025日本学生陸上競技個人選手権の最終日、4月27日に行われた女子400mハードル決勝で、立命館大学の瀧野未来(2年、京都橘)が初優勝を果たした。この種目の高校記録保持者は、これまでにない緊張感をもって大会に臨んでいた。
100m11秒台のスプリント力を武器に
前日にあった準決勝。瀧野は組1着だったものの、タイムは全体5番手の59秒48だった。今シーズンはこの個人選手権が初戦だ。「走りが全然よくなくて、全体的にいまいちなレースだった。とりあえず、明日の決勝でできることをイメージしたい」と語っていた。
決勝で4レーンに入った瀧野は、4台目までを15歩でいくプラン通りのレースを進めた。だが、ハイペースで飛ばす7レーンの早稲田大学・大川寿美香(4年、三田国際学園)に終始リードを許す。10台目を越えた瞬間は、まだ大川に次ぐ2番手だった。
ハードルがない最後の40m。瀧野は体を投げ出すように前傾となり、猛追した。100mを11秒台で走るスプリント力は、大きな武器だ。「ラストになったときに絶対負けへんっていう自信はある」。ゴール前で逆転。58秒55で優勝し、胸をなで下ろした。

「勝ちきれたのは評価していいと思うんですけど、レース展開もタイムも正直いまいち。周りから見たらヒヤヒヤするようなレースだったのは反省というか、次は、もっと前半からいけるようにしたい」
2年目の大飛躍へ、新たに採り入れたトレーニング
シーズンインはもっと早い時期を予定していた。計画が狂ったのは2月。この冬から本格的に始めたウェートトレーニングの影響で、腰を痛めた。
「体が強い方じゃないのに、デッドリフトとか、一生懸命みんなと同じような重さを持とうとして、限界が来て走れなくなりました」
昨シーズンの序盤も左足のけがで3カ月間ほど試合に出られなかった。夏以降に出場し始め、9月の全日本インカレは2位。秋の国民スポーツ大会では、自己ベストの56秒81を出して優勝した。2年目の大飛躍に向け、冬季練習では高校時代にしていなかったロングスプリントも積極的に採り入れた。体への負荷はこれまでになく上がっていた。

個人選手権はぎりぎりの調整で迎えた。それでも、譲れない目標があった。7月にドイツで開催されるFISUワールドユニバーシティゲームズへの出場だ。「ユニバが今シーズンの大きな目標の一つだったので、選考会のここを外すわけにはいかなかった」
大会前には、5月下旬に韓国であるアジア選手権の代表選出も発表された。シニアの国際大会に出ることが決まっていたからこそ、「さすがに、学生の中で負けるわけにはいかないという思いをすごく持っていました。でも初戦なので、正直不安はありました」。
万全の仕上がりではない中でも、優勝という最低限の目標をクリア。ワールドユニバーシティーゲームズの切符をつかんだ。

「良い空気を作って、チームに与えられるように」
瀧野には追いかけるべき先輩がいる。今春、立命館大を卒業し、富士通に入社した山本亜美だ。大学1年から日本選手権を4連覇、2023年の世界選手権にも出場した山本は、瀧野の3学年先輩にあたり、京都橘高から立命館大へと、同じ道を歩んできた。
「タフで、放っている空気がポジティブです。いるだけでチームが明るくなる。亜美先輩がいるだけでチームの雰囲気が変わる、そういう影響力がある人です」
アジア選手権にはその山本も代表に選ばれた。ともに日本代表のユニホームを着ることは、陸上人生を通しての夢だった。「高校生の頃から思っていたし、言っていたんですけど、こんなに早くかなうとは思っていなくて。『あ、そっか、もうかなったんか』って感じです(笑)。一緒に日本代表として結果を残したいです」

今季最大の目標は、世界選手権東京大会の開催国枠の設定記録、55秒80を突破することだ。「そこを見据えつつ、まずは最低でも56秒前半で速く走って、55秒台に少しでも近づきたい」
個人選手権から10日後、5月7日にあった関西インカレでも瀧野は優勝した。タイムは個人選手権から1秒近く縮め、57秒70だった。
この種目の学生の中でトップ選手であることは、誰もが認めるところだ。今季は、そこに別の目標も持っている。「2回生として影響力があると思うので、自分が良い空気を作ってチームに与えられるようにしたい」
自然と口をついたのは、憧れの先輩と同じ姿。競技内外で飛躍をめざす1年が始まった。
