陸上・駅伝

特集:第104回関東学生陸上競技対校選手権

日体大・小林美月「正直できるとは」大ケガから完全復帰の途上で、女子棒高跳び3連覇

関東インカレ女子1部棒高跳びで3連覇を果たした日体大の小林美月(すべて撮影・井上翔太)

第104回 関東学生陸上競技対校選手権大会 女子1部棒高跳び決勝

5月10日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

優勝 小林美月(日本体育大3年)4m02
2位 村田蒼空(筑波大3年)4m02
3位 佐々木琳音(日本体育大4年)3m92
4位 岡田莉歩(日本体育大2年)3m82
5位 上山友美恵(日本女子体育大3年)3m82
6位 志賀日向子(東京女子体育大1年)3m72
7位 高橋侑莉愛(順天堂大2年)3m62
7位 相原ほのか(筑波大4年)3m62

5月10日の関東インカレ3日目にあった女子1部棒高跳び決勝で、日本体育大学の小林美月(3年、明星学園)が優勝を果たし、この種目で3連覇を果たした。3月の競技会中に負ったケガから、完全復帰に向けた途上での制覇。「正直3連覇できると思っていなかったです。ここまで来たら来年も優勝して4連覇したい」と誓った。

1位と聞いて驚き「2位だと思ってました」

すっかり日が落ちた中で挑戦した4m07の3回目。バーに体が触れて失敗に終わると、仲間たちが詰めかけた応援席に笑顔で手を振った。「そのときまではあまり順位を気にしていなくて、自分は2位だと思っていました」。先生たちに「何位ですか?」と聞いたところ「1位」だと教えられ、急に驚いた表情を見せた。

すべての試技を終えた後、自身が1位だと聞いて驚いたという

この高さに挑んだのは筑波大学の村田蒼空(3年、前橋女子)と小林の2人。ともに3回とも成功できず、その前の4m02は2人とも2回目で成功。さらにその前の3m92は小林の成功が2回目だったのに対し、村田は3回目。試技差によって、小林の優勝が決まった。

難しいグラウンドコンディションだった。競技開始後、強い向かい風の影響でピットが変更になった。小林は序盤の高さをパスしていたため、向かい風の中では結局、一度も跳躍しなかった。助走路が逆方向になると、今度は強い追い風に。棒高跳びと同時に行われ、助走と同じ向きで直線を走る女子七種競技200mの2レースは、追い風が5.2mと3.9mだった。「基本的に追い風ってうれしいと思うんですけど、あれほどだと逆に苦しいんです。ポールを持って立っていられないぐらい。すごく振り回されちゃって、自分がやりたかった助走の動きは、たぶん1回もできずに終わっちゃいました」

ポールを持って立っていられないぐらいの追い風の中、3連覇に挑んだ

2年前と似た状況に「やってやるぞ」

ただ、小林に焦りはなかった。関東インカレ初優勝を大会記録更新の4m06で飾った1年時も似た状況だったからだ。「そのときも雷が鳴って競技が中断したり、ピットの変更があったりしました。なので、あまり集中力を切らさずというか、逆に『やってやるぞ』という気持ちで、最初に跳ぶ高さまで準備できました」。当時の記録をたどると、2年前は午後8時10分に競技終了とある。3連覇を果たしたこの日は午後7時55分に終了した。

その環境下で4m02を成功させたのは、小林にとって「収穫」だったと振り返る。「『跳んだ』というよりは『跳べた、跳んだの?』みたいな感覚でした。楽に空中に持っていけたので、4m02の2本目だけは良かったです」

2回目で成功させた4m02で、ポールを突き放した瞬間

ポールを持ち始めたのは学生個人選手権の1週間前

いまの小林は、まだ体が本調子ではない。3月17日にあった関東学連春季オープン競技会の試技中に跳躍がうまくいかず、着地マットではなく、ポールを差し込むボックスに落下してしまい、背中側の左の肋骨(ろっこつ)が折れてしまった。そこから約1カ月間はジョグや下半身のウェートトレーニング、もも上げなどの基本的なドリルしかできなかった。4月27日の学生個人選手権の1週間前からポールを持ち始めて跳躍を再開。現在も完全には治っておらず、競技への支障はないものの、練習でも跳躍は週1回に控えているという。

「4週間ほど跳躍ができていなかったので、練習が積めていないんです。その点では助走から空中まで、全然動きが完成していない状態で、学生個人も関東インカレも終わってしまいました」。次に見据えるのは、大会連覇がかかる6月の日本インカレ。「痛みなく今大会を終えられたので、インカレまでは休みつつ練習を積んで、元に戻せるようにしたいです」

そこでめざしている記録は、台信愛(日体大SMG横浜)が持つ日体大記録の4m20超え。さらに日本記録保持者の諸田実咲(アットホーム)が中央大学時代にマークした4m30超えも先に見据える。

練習を思うように積めず、まだ本調子ではないが、僅差で3連覇を勝ち取った

小林は昨年9月の関東学生新人戦で、自己ベストを更新する4m15をマークした。実はこのとき、直前1週間は練習ができていなかったと明かす。「4m15のような空中での動きができれば、4m21も4m31も見えてくると思っています。でも、試合になると『跳びたい』という気持ちが勝ってしまって動きが崩れてしまうので、その気持ちを抑えて、動き作りに集中することが課題かなと思います」

基礎を体に覚えさせることが大事

つくづくちょっとした環境やメンタルの変化が結果を左右する繊細な種目だ。最近は棒高跳びに取り組んでいる中学生や高校生から、小林のもとへ「記録が伸び悩んでいるんですけど、どうしたらいいですか」などといった質問も寄せられるという。「自分も簡単なことしか答えられないですけど、自分に聞いてくれるということがうれしいです」

これから子どもたちが棒高跳びを始めるとしたら、どんなアドバイスを? という質問に、小学6年から始めたという小林は「とにかく基礎のポールワーク。ピットに入らなくてもできるポールを使ったドリルを徹底して、基礎を体に覚えさせることが大事かなと思います」と答えた。学生の第一人者とも言える小林は、棒高跳びの普及や競技力向上の役割も、少しずつ担い始めている。

6月の日本インカレで連覇、さらには来年の関東インカレで4連覇を狙う

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