陸上イヤーの幕開け、セイコーゴールデングランプリ 大会の位置づけと注目選手を紹介

セイコーゴールデングランプリ陸上(セイコーGGP)が5月18日に開催される。戦いの舞台は昨年に引き続き、〝聖地〟国立競技場。今大会は改修された「国立」で20年ぶりに行われる7月の日本選手権、18年ぶり3回目の日本開催となる9月の世界選手権へとつながり、〝陸上イヤー〟のキックオフ的な位置づけにある。大会の概要や見どころを注目選手とともに紹介する。
世界で12大会しかない「ゴールドランク」
2011年から毎年5月に行われてきたセイコーGGP(コロナ禍により20年は8月開催、21年は開催見送り)は、ワールドアスレティックス(WA、世界陸連)公認の「ワールドアスレティックス・コンチネンタルツアー」として開催される、One-Day競技会の国際大会だ。
今季のワールドアスレティックス・コンチネンタルツアーは、世界各地で約260大会が予定されている。競技レベルや賞金によって、「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」「チャレンジャー」の4カテゴリーに分類され、セイコーGGPはわずか12大会しかない「ゴールド」にランクづけされている。
コンチネンタルツアーゴールドは、大会結果がWAのワールドランキングにも大きく影響する。そのため9月の世界選手権出場を目指す選手にとって、セイコーGGPは重要な意味を持ち、世界のトップアスリートが数多く参戦する。そうした選手たちには、秋の大一番でも舞台になる国立競技場の雰囲気を経験しておきたいという狙いもある。

世界選手権やオリンピックのメダリストが続々参戦
出場を表明した選手には、世界選手権やオリンピックのメダリスト、ファイナリストがずらりと並ぶ。
男子100mのクリスチャン・コールマン(アメリカ)は、19年ドーハ世界選手権の金メダリスト。これまで世界大会の4×100mリレーで2つの金メダルを獲得したジェローム・ブレーク(カナダ)らとの熱いバトルに期待が集まる。

21年東京オリンピック男子200m王者のアンドレ・ドグラス(カナダ)は、オリンピックで通算7個、世界選手権で通算5個のメダルを獲得した走りを、初出場となるセイコーGGPで披露する。女子100mのシャカリ・リチャードソン(アメリカ)は23年ブダペスト世界選手権で金、昨年のパリオリンピックで銀メダルを獲得。パリでは今回来日するトワニシャ・テリー(アメリカ)らと組んだ4×100mリレーでも世界一に輝いた。
フィールド種目にも豪華なメンバーがそろう。中でも、ブダペストとパリで頂点に立ち、すでに世界選手権日本代表に内定している北口榛花(JAL)の女子やり投げは最注目の種目になる。ブタペストとパリでそれぞれ銀メダルだったフロル・デニス・ルイス・ウルタド(コロンビア)とジョーアネ・デュプレッシ(南アフリカ)は、〝世界女王〟北口への雪辱に燃えている。ブタペスト銅のマッケンジー・リトル(オーストラリア)を含めた最高峰の戦いが繰り広げられるだろう。

他にも、女子走り高跳びの世界記録保持者で、ブダペストとパリを制したヤロスラワ・マフチフ(ウクライナ)らが参戦。〝聖地〟国立でどんなパフォーマンスを見せるのか、興味は尽きない。
大学時代から活躍してきた日本勢の奮闘にも注目
そうそうたる顔ぶれとなった世界の強豪に、日本勢も果敢に挑んでいく。特に東京世界選手権を目指す選手たちは、参加標準記録の突破や3位以内が代表内定の条件となる7月の日本選手権を見据えつつ、海外勢との距離感を確認しながらセイコーGGPを迎えるに違いない。
男子110mハードルの日本記録保持者・村竹ラシッド(JAL)は、4月のダイヤモンドリーグ(DL)厦門大会で13秒14(+0.3)をマークし、世界選手権参加標準記録(13秒27)を突破。パリオリンピック5位入賞と合わせて基準を満たし、トラック&フィールド種目では北口に続いて代表内定を勝ち取った。
男子3000m障害でオリンピック2大会連続入賞の三浦龍司(SUBARU)も、DL厦門大会で基準をクリアし、3大会連続となる世界選手権代表に内定した。世界大会における自身初の表彰台に向けて、2年ぶりに臨むセイコーGGPをステップにしていく。

男子400mハードルの豊田兼(トヨタ自動車)は、DL厦門大会300mハードルで34秒22の日本新記録を樹立。昨年のパリオリンピックは大会前の故障で不完全燃焼だっただけに、今季にかける思いは並々ならぬものがあるだろう。豊田と同じく社会人1年目で、法政大学4年生だった昨季、日本インカレで世界選手権標準記録を突破した井之上駿太(富士通)が、初の日本代表に向けてダークホースになるかもしれない。
女子では3000mにエントリーした山本有真(積水化学)に注目。昨年のパリオリンピック5000m予選では序盤から果敢に飛び出し、3000mまで独走した大逃げが記憶に新しい。今季は4月に5000mで15分12秒97をマークし、およそ2年半ぶりに自己記録を更新した。世界のトップ選手を相手に再び熱いレースを展開できるか。

今大会は他にも大学生からベテランまで、多士済々のメンバーが国立競技場に集結する。各選手が掲げる目標やテーマはそれぞれ異なるが、いずれもレベルの高いパフォーマンスで見る者の心を熱くさせてくれるはずだ。
