陸上・駅伝

特集:第104回関東学生陸上競技対校選手権

駒澤大学・帰山侑大が不調を乗り越え、初タイトル 主将・山川拓馬と挑むラストイヤー

ガッツポーズでゴールした駒澤大学の帰山侑大(撮影・井上翔太)

第104回 関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部ハーフマラソン決勝

5月11日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

優勝 帰山侑大(駒澤大4年)1時間01分43秒
2位 野沢悠真(創価大4年)1時間01分49秒
3位 山口翔輝(創価大2年)1時間01分51秒
4位 山川拓馬(駒澤大4年)1時間01分56秒
5位 高山豪起(國學院大4年)1時間01分57秒
6位 塩出翔太(青山学院大4年)1時間02分05秒
7位 浅川侑大(帝京大3年)1時間02分13秒
8位 谷口颯太(帝京大3年)1時間02分46秒
※トラックの周回不足のため、タイムは参考記録

5月11日の関東インカレ最終日に行われた男子2部ハーフマラソン決勝で、駒澤大学の帰山侑大(4年、樹徳)が優勝した。万全の体調ではなかったものの、粘りの走りで栄冠をたぐり寄せた。運営側のミスでコースが400m短くなるアクシデントによってタイムは参考記録になったものの、大学初のタイトル獲得に喜びを語った。

【写真】第104回関東インカレフォトギャラリー、母校の誇りをかけて戦った主役たち

腹痛でも気持ちを切らさず前を追った

レースは、競技場から外に出た後、1周1.58kmの周回を12周して競技場に戻るコースで行われた。トップ集団は、青山学院大学の塩出翔太(4年、世羅)、國學院大學の高山豪起(4年、高川学園)、創価大学の野沢悠真(4年、利府)ら、昨シーズンの3大駅伝に出場した選手が中心となって形成。その中で、昨年の全日本大学駅伝の最終区で区間賞の走りを見せた駒澤大の主将・山川拓馬(4年、上伊那農業)が果敢に前に出て集団を引っ張った。

ペースを上げ下げして揺さぶりをかける展開に、帰山は8kmと14km周辺で苦しくなり、腹痛にも襲われた。しかし、ライバルが徐々に離れていくのを見て、「ついていけば、可能性がある」と気持ちを切らさずに耐えた。その後、15km周辺で集団は7人にまで絞られ、ラスト1周で高山がスパート。帰山が即座に反応して追いかけ、20km周辺でトップに立ち、そのままゴールした。

ラストスパートで後続を引き離し、競技場に戻ってきた(撮影・松﨑敏朗)

調子が上がらずに迎えたレース当日

レース後の帰山は汗をぬぐいながら、晴れ晴れとした表情を浮かべた。「優勝したことがなかったので、最初で最後の関カレで優勝できたのは、いい思い出になりました」。切れ味鋭いスパートでレースを制したが、実は調子があまり上がらず、練習でも手応えはなかったことを明かした。それでも「どうすれば少しでも調子を上げられるか」と自問自答しながらコンディションを整え、この日を迎えたという。

藤田敦史監督からは慰めにも似た言葉をかけられ、帰山自身も周りに調子が上向かないと話していた。しかし、レースに出るからには一つでも順位を上げたいという意思は消えていなかった。「絶対に倒してやろう」。静かな闘争心を胸にスタートラインに立った。

先頭集団の後方で粘りの走りを続けた(撮影・松﨑敏朗)

「高山君が仕掛けて2人きりになっても、まだ余裕がありました」。レースではトップ集団の後方で粘り続け、最後に勝負を仕掛ける作戦が奏功した。2月の学生ハーフマラソンでは4位に終わり、惜しくもFISUワールドユニバーシティゲームズには手が届かなかった。しかし、前を向いて練習に打ち込んだことが実を結んだ。駅伝シーズンに向けては「とにかく試合に出て経験を積むことで学ぶことはたくさんあると思います。今まで、けがでレースになかなか出られなかった分、今年は積極的に出て経験を積みたいです」と語る。

4年生に実力者がそろう新チーム

昨シーズンの4年生は、篠原倖太朗(現・富士通)が飛び抜けた力でチームを引っ張った。一方、今年の4年生には実力者がそろっている。5000mの室内日本記録(13分09秒45)を持つエースの佐藤圭汰(4年、洛南)、4月の学生個人10000mで優勝した伊東蒼唯(4年、出雲工業)のほか、この日、帰山とともにハーフマラソンに出場した山川も全日本大学駅伝で鮮烈な走りを見せ続けている。帰山自身も、今年の箱根駅伝1区で区間2位という結果を残しているだけに、「いい記録を出されたら悔しいですが、いい刺激にもなります」と気後れはない。

秋以降の駅伝シーズンを彼らが盛り上げてくれるだろう(撮影・松﨑敏朗)

新チームでは山川が主将、帰山は副将をそれぞれ務めて下級生にも目を配る。箱根駅伝で好走した桑田駿介(2年、倉敷)、小山翔也(3年、埼玉栄)ら勢いのある選手がいる一方、けがが多いことを気にしている。帰山は、これまでの経験も踏まえながら、練習を抑えるようにアドバイスすることもあるという。「副将という立場なので、ものすごく責任を感じています。駒澤大の副将は、本当に素晴らしい先輩がいるので、少しでも近づきたいです」

気持ちを前面に出してレースに臨む山川に比べ、「すごいポテンシャルがあるわけじゃないので、頭を使って作戦を立てるタイプ」と自己分析する帰山。副将として、山川が抱えすぎないようにサポートし、4年生全員でチームを引っ張っていくつもりだという。「動」の主将と「静」の副将が存在感を発揮する今年の駒澤大。過酷な夏合宿をチーム一丸で乗り越え、一回り大きい姿で駅伝シーズンを目指す。

in Additionあわせて読みたい