陸上・駅伝

特集:第104回関東学生陸上競技対校選手権

創価大学勢が、関東インカレ最終日に軒並み上位進出「全員がエースになる覚悟」を持つ

最上級生として今シーズンの創価大学を引っ張る野沢悠真(左)と黒木陽向(すべて撮影・井上翔太)

創価大勢、関東インカレ最終日の活躍

▽男子2部ハーフマラソン決勝(参考記録)
2位 野沢悠真 1時間01分49秒
3位 山口翔輝 1時間01分51秒

▽男子2部3000mSC決勝
優勝 ソロモン・ムトゥク 8分38秒89
2位 黒木陽向 8分44秒25

▽男子2部5000m決勝
優勝 スティーブン・ムチーニ 13分32秒59
8位 小池莉希 13分57秒73

5月11日の関東インカレ最終日、各長距離種目の決勝では創価大学勢の活躍が目立った。レース後に選手たちが口にしていたのは、前年度の駅伝シーズンでインパクトを残し続けた吉田響(現・サンベルクス)が抜けたことによる「危機感」。新チームは、総合力の高さで勝負する姿勢が伝わってきた。

【写真】第104回関東インカレフォトギャラリー、母校の誇りをかけて戦った主役たち

例年より「1.8倍ぐらいのきつさ」だった合宿

チームにまず大きな流れを持ってきたのは、午前8時にスタートした男子2部ハーフマラソン決勝に出場した選手たち。野沢悠真(4年、利府)と山口翔輝(2年、大牟田)だった。レース序盤から山口が駒澤大学の山川拓馬(4年、上伊那農業)や青山学院大学の塩出翔太(4年、世羅)らとともに、積極的に集団を引き、15km付近で先頭集団は7人。野沢もこの中に入り「前半から有力校の様子を見つつ、自分は引っ張らずに力をためて、15km以降の勝負どころを見極めていました」。

男子2部ハーフマラソンの先頭集団、山口翔輝(右端)が引っ張った

競技場を飛び出した後の周回コースがラスト1周となり、駒澤大の帰山侑大(4年、樹徳)と國學院大學の高山豪起(4年、高川学園)が飛び出した。「自分にはスピードがもともとないので、そこから焦らずに1人ずつ拾っていこうと、冷静に切り替えられました」と野沢。高山はとらえたが、帰山までは6秒届かなかった。「優勝を狙ったレースだったので、率直に悔しい。まだまだ力不足ということを感じます」

レース後、まずは悔しさを口にした野沢だったが、3位に山口が入ったことに話題が及ぶと、今年の箱根駅伝後にチームとして取り組んできたことを誇った。

「吉田響さんが抜けて戦力ダウン、というのが周りからの評価だと思います。確かに今年のチームは大エースがいないんですけど、1人ずつの力を底上げして勝とうというチームなので、表彰台の2位と3位に上れるというのは収穫だと感じています」

野沢(左手前)に続き、山口も3位表彰台をつかんだ

野沢は箱根後、1月下旬の大阪マラソンに出場。その約1カ月後には大阪でフルマラソンも走った。「サブテン(2時間10分切り)を狙っていたんですけど、2時間15分かかってしまって……。もっとスタミナをつけないといけないと思いました」。2、3月にはチームとして宮崎で合宿を行い、「メニューが例年の1.8倍ぐらいのきつさに変わりました」。ペース設定が上がり、本数も増え、新しい補強トレーニングも採り入れられた。「チーム全体のレベルが上がった」ことを関東インカレでもしっかりと示した。

3大駅伝すべてで3位以内を目標に

朝のハーフマラソンに刺激を受けたのが、昼前に行われた男子2部3000mSC決勝の出場選手たちだった。特に黒木陽向(4年、九州学院)は、この種目で2連覇がかかっていた。「朝の出発の時、野沢が『先に優勝してくるから』と言ってて、グータッチで送り出したんです。ハーフで創価大の強さを2人が見せつけてくれたので、自分も絶対に優勝しようと思っていました」

レースはスタート直後に関東学院大学の緒方快(4年、宇土)が先頭を走り、創価大のソロモン・ムトゥク(2年)、黒木と続いた。ほどなくしてムトゥクが緒方を抜き、黒木は2番手。最初の1000mを2分52秒で通過した。2000mに向かうところでペースを上げたムトゥクがじりじりと後続を引き離し、「一番大事なところでソロモンに離される結果になってしまった」と黒木。3番手にいた緒方との差が縮まり、ラストスパート勝負までもつれた2位争いを制した。

男子2部3000mSCでワンツーフィニッシュとなったソロモン・ムトゥクと黒木

「2位という結果には全然満足していません。昨年までは優勝したことがなかったので、心が軽かったです。でも、今年はマークされる立場で、持ちタイムも一番。プレッシャーも感じていました。ソロモンはハードルの跳び方が自分と違うので、リズムが崩れて離される形になってしまった。でも世界を見たら、ハードルに足をかけない人が多いので、言い訳はできないです」

3000mSCを主戦場にしている黒木は、駅伝部副将としての顔も持つ。取材では駅伝の話題にもなった。

「響さんが抜けた中、今年は『厳しい』という見られ方をしていると思います。でも今は少しずつ『創価大はこんなもんじゃないんだぞ、まだまだやれるんだぞ』というところを見せている途中です。駅伝シーズンは『全員がエースになる』という覚悟を持って、3大駅伝すべてで3位以内を目標にしています」

黒木自身は昨シーズン、出雲と全日本に出走したが、箱根は大会前に調子を崩してしまい、走ることができなかった。最初で最後の箱根出走にかける思いは強く、「今年は三つともちゃんとそろえて結果を残す」とチームへの貢献も誓う。

レース後、ムトゥクと健闘をたたえ合った

ムチーニと小池莉希も10000mと5000mで好成績

4日間に及ぶ関東インカレで、創価大勢にとって最後の登場となった男子2部5000m決勝は、スティーブン・ムチーニ(3年)が優勝。大会初日の男子2部10000mとの「二冠」を達成した。1年時から3大駅伝を経験している小池莉希(3年、佐久長聖)は両種目で8位入賞。5000mでは石丸惇那(4年、出水中央)も9位に入った。

昨シーズンの創価大は出雲と全日本が4位、箱根が7位だった。もちろん大エースだけの力ではない。今年の創価も強い。

男子2部10000mと5000mの「二冠」を達成したスティーブン・ムチーニ

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