埼玉栄高校女子駅伝部の挑戦 選手全員で高め合い「自己ベスト更新80回」を目標に

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、埼玉栄高校女子駅伝部のお話です。昨年の全国高校駅伝(都大路)では10位。今年の伊那駅伝ではチーム最高順位となる4位に入りました。全国での入賞、そして表彰台を目指して現状打破し続けているチームに伺いました。
Instagramで練習やレース結果をこまめに発信
埼玉栄高校は陸上、駅伝の名門としておなじみのチームです。かつて女子は都大路で3連覇(1995年~1997年)。1996年に打ち立てられた高校最高記録、及び大会記録(1時間06分26秒)は、30年近く経った今も破られていません。(国内国際最高記録は2020年に神村学園高校が鹿児島県大会で樹立した1時間06分04秒)

ただ、当時からは指導体制が変わりました。現在、指導されているのは田村敬明先生。埼玉栄高校のOBで、ご自身も高校時代はインターハイや都大路に出場。大東文化大学では3000mSCで関東インカレに出場し、その後は選手からマネージャーに転向され、主務も務められました。
埼玉栄高校では男子部と女子部のコーチを務め、2020年から女子駅伝部の監督に就任。今年で6年目になります。「歴代の先輩方の偉業は私も含め、後輩にとってはとても誇らしいことです。ですが、『だからそこを目指さなくてはいけない』のではなく、今目の前にいる選手をきちんと見て、その選手に必要なことをきちんと教えていくことを大切にしています。イメージとしては、その時を取り戻すというよりは、『伝統という骨組みは大切にしながら細かな部分をリノベーションする』つもりでやっています」
日頃から練習やレース結果をInstagramでこまめに発信されています。「写真が趣味です」という田村先生が、自ら撮影したカッコイイ写真や、選手の皆さんの生き生きとした動画が投稿されています。リール動画の中では400万回再生を超えるものもあり、家族や友人、卒業生はもちろん、高校で陸上を続けたいという中学生や大学・実業団関係者、はたまた陸上をやっていない方々にも届いているようです。

3月の伊那駅伝では4位に入り、今年は都大路で2009年以来となる入賞、さらには表彰台を見据えています。「上限を決めてはいけないよ、と選手に言い続けてきましたが、ここにきてメダル(3位入賞)を本気で目指し始めたように見えます。これだけ頑張っている生徒たちだからこそ、なんとか達成させてあげたいと思っています。大きな目標を口にする覚悟は、簡単ではありませんが、全員が同じ空気感で毎日精いっぱい走っています。5人しか出られない駅伝をチームの目標としている以上、必然的に競争が生まれます。今年度は22人の部員がいますが、『ただ5人や8人が強くなれば良い』のではなく、『全員が今の自分を超えるために努力し続ける空気のチーム』を目指しています。そこで誰でも目標にできるのが、自己記録更新です。学生スポーツなので、結果も大切ですが、目標を達成するということ、さらには達成するために、どんなことが必要かといった過程の部分も教える必要があると思っています。今年は22人のチームで、80回の自己記録更新を目標にしています」と田村先生。あくまで部員全員で挑戦していることを強調されていました。
大学で競技を続ける選手も多く、この春に卒業した選手たちも、新しい環境で競技を続けています。
都大路は5位以内「本気で3番を目指す」
選手の皆さんにもお話を伺いました。
主将 根岸彩花選手(3年)
「主将ということで最初は不安もありましたが 任されたからには自信を持とうと思いました。昨年はケガもあって、記録が伸び悩んだ時もありましたが、みんなが頑張っているから自分も頑張れましたし、家族の応援やサポートも心強かったです」
「主将としては『言葉に出してみんなに伝えよう』と、コミュニケーションを大切にしています。トラックよりロードでの単独走が得意で、そこで勝負できる強さをつけていきたいです。チームとしては都大路で最低でも5位以内、そして本気で3番を目指しています。本番を走る5人だけでなく、全員が同じ意識を持って頑張ろうという気持ちが大切です。将来的にはもっと長い距離に挑戦したいです」

副主将 福山若奈選手(3年)
「1年生の頃は、とりあえず先輩についていってました。昨年は自分で考えながら、先生とも相談しながらできたと思います。思った以上に記録も良かったと思いますし、全国のレースに出られて成長できました」
「一方で、課題も見つかりました。長い距離の方が得意で、集団の中では良い記録を出せるのですが、ラストスパートや単独走では、まだ力が足りないです。今年は個人として全国で勝負するのが目標です。チームとしては都大路でのメダル獲得を目指しています。将来的には日本代表になって、世界の舞台で勝負していきたいです」
ちなみに、福山選手のご両親は元陸上選手で、父の良祐さん(現・中央学院大学駅伝部コーチ)は世界ハーフマラソンの元日本代表です。

松浦銘玉選手(2年)
「みんなお互いに声を掛け合って高め合っていく、やる時はちゃんとやるメリハリのあるチームです。私自身は最初、長い距離に苦手意識がありましたが、練習して徐々に走れるようになってきました。1年生の時は常に追いかけるだけでしたが、2年生になって、今は追いかける背中(先輩)もあるし(後輩に)見せなきゃいけないのもあるので、もっと上を目指して、いいお手本にもなりつつ、前を追いかけていきたいです」
「目標は1500mでインターハイ決勝の舞台に立ってレースをすることです。駅伝は都大路で長い距離の区間でも、全国の強い人たちと戦っていきたいです。将来的にはプロや実業団など、陸上を仕事にして走りたいです」

5月12日から15日に行われた埼玉県高校総体では、福山若奈選手が3000mで優勝、松浦銘玉選手が800mと1500mで二冠を達成し、3種目で7選手が北関東高校総体出場を決めました。
インタビューさせていただいた選手はもちろん、全員が今シーズンで自己ベスト80回更新に向けて高め合っています。埼玉栄高校女子駅伝部の〝オレンジ旋風〟に注目です!
