京都産業大・田村剛平 報徳学園時代にライバルたちにもまれて磨いた、自分だけの武器

この春の関西六大学リーグ戦で5試合に先発して4勝。京都産業大学の最速151キロ右腕・田村剛平(4年、報徳学園)はリーグトップとなる防御率(0.63)を残した。持ち前の制球力はライバルが多かった高校時代、自分にできることとして身につけたたまものだ。
初戦から修正し、1人で4試合を連続で投げきる
春初戦の大阪商業大学戦には敗れたものの、4月18日の大阪経済大学戦で被安打2、12奪三振で完封勝利。その後も、登板した3試合で完投勝ちを収め、1人で4試合を投げきった。
特に大阪経済大戦は、六回2死まで無安打投球。そこから、この試合初安打となる中越え二塁打を浴びると、四球を与えて2死一、二塁のピンチを作った。それでも次打者を二ゴロに仕留めて、本塁を踏ませなかった。田村は試合後、こう話していた。
「立ち上がりを特に意識していました。アウトローを意識しながら、低めに丁寧に投げ込めたのは良かったのかなと思います」。確かに、立ち上がりは圧巻だった。140キロ台後半のストレートを低めに集め、テンポ良くストライクを取り、一回は3者連続三振を奪った。

一方、今季初登板となった大阪商業大戦は一回から毎回のように安打を許し、三回に2ランを浴びた。7回3失点。結果的にこの2点が重くのしかかる試合となった。「その試合で気になったのが、ボールの高さでした」と田村。大阪経済大戦での快投は初戦から修正できた結果と言え、「とにかく甘く入らないように意識していました」と振り返る。
発する言葉の一つひとつに、落ち着きがある投手だ。1年からリーグ戦のマウンドに立ち、3年秋までに5勝を挙げた。ただ、1、2年時は主に救援での登板。3年春から先発の一角を任されるようになり、春と秋それぞれで2勝をマークした。球速も秋のリーグ戦を前に150キロを超えるようになり、翌年のドラフト候補という呼び声が徐々に高くなった。
最速151キロの速球以上に目を引くのが制球力の高さだ。この春は5試合で43イニングを投げて8四球。最終登板だった神戸学院大学戦は無四球で完封勝利を挙げ、抜群の安定感を見せた。

取材を受けるたび、口にする「感謝」
報徳学園で投手育成を担当する磯野剛徳部長によると、下級生の頃の田村は「そこまで目立った存在ではなかった」と明かす。当時はAチームの打者を相手に打撃投手として腕を振ることが多く、「練習試合でもほとんど投げることはなかった」。
田村の同級生には、現在明治大学で活躍する長身左腕・久野悠斗という絶対的な存在がいた。久野をはじめ、ライバルがひしめいている環境が、自分を成長させてくれたと本人は言う。
「チームには久野以外にも向髙(滉人、現・東洋大学)や森(新之助、現・中京大学)もいて、競い合いながら練習できる仲間が多かったのも良かったですし、刺激になる仲間の中で成長できました」
多くのライバルがいる中、同じことをしていてはメンバーに入れないと、ブルペンでは低めに丁寧に投げることを心がけた。もともと実直で真面目な性格。トレーニングや走り込みなど、ハードなメニューにも正面から向き合い、2年秋は背番号11をつけてベンチ入りを果たした。3年になると右の柱となり、最後の夏は久野に次ぐ2番手投手の位置にまで上り詰めた。

「夏の大会は久野が先発した次の試合は、田村が先発するような感じで、交互に試合を任せられるようになりました。ここまで成長してくれたのには本当に驚きました。地道に努力してきたことが、結果として現れたんだと思います」と磯野部長も賛辞の言葉を贈る。
最後の夏は準決勝で神戸国際大付に敗れ、甲子園出場はならなかったが、久野とマウンドを分け合いながら高校野球を完走した。「磯野先生もそうですが、大角(健二)先生にも本当に感謝しています。高校時代の自分があったから、今こうやって注目していただいていると思います」。田村は取材を受けるたび、高校時代の恩師に感謝の言葉を述べる。
チームを優勝に導けるピッチャーに
大学最後の春は、さらにその上を目指すため、成長した姿を見せた。
「球の質が上がったのと、コースに投げ切ることができたと思います。変化球でしっかりカウントを取って、真っすぐで勝負できるようになったことが大きいです。カーブやスプリット、チェンジアップをうまく使いながら、真っすぐをどう生かせるかも、意識しながら投げてきました」
多い時は11球団のスカウトがネット裏から視察するほど、注目度が増した今春のリーグ戦。秋も多くの熱視線を浴びることだろう。
もちろん、現状には満足していない。「やっぱり優勝したかったです。秋こそはチームを優勝に導けるようなピッチャーになりたいです」

同じ4年生には、この春に急成長した身長187cmの大型右腕・由上慶(4年、関西大倉)もいる。ただ、田村自身もそう簡単に第1戦のマウンドを譲るつもりはない。
