青学大・黒田朝日 地元・岡山でのレースは「やる気の源」10000mで日本人トップ

第94回 日本学生陸上競技対校選手権大会 男子10000m決勝
6月5日@JFE晴れの国スタジアム(岡山)
優勝 シャドラック・キップケメイ(日本大3年)28分07秒94
2位 スティーブン・ムチーニ(創価大3年)28分08秒43
3位 黒田朝日(青山学院大4年)28分09秒18
4位 安島莉玖(青山学院大2年)28分35秒06
5位 石丸惇那(創価大4年)28分47秒86
6位 山口翔輝(創価大2年)28分53秒20
7位 川﨑颯(筑波大3年)29分13秒09
8位 遠藤大成(青山学院大2年)29分13秒59
6月5日の日本インカレ初日にあった男子10000m決勝で、青山学院大学の主将・黒田朝日(4年、玉野光南)が日本人トップとなる全体3位に入った。地元・岡山で開催されたレースで、改めて世代トップランナーとしての実力を示した。
「最終的に留学生との勝負に持ち込みたかった」
レースには18選手が出場し、青山学院大勢では黒田朝日の他、5月の関東インカレ男子2部10000mで日本人トップになった安島莉玖(2年、大垣日大)と遠藤大成(2年、佐久長聖)。3大駅伝有力校の中では創価大学の石丸惇那(4年、出水中央)や山口翔輝(2年、大牟田)、城西大学の桜井優我(4年、福岡第一)らがスタートラインに立った。

最も内側からスタートした黒田朝日は最初から先頭に立ち、その後ろに石丸、安島、今年の関東インカレ男子2部で10000mと5000mの「二冠」を果たした創価大のスティーブン・ムチーニ(3年)、昨年この種目を制した日本大学のシャドラック・キップケメイ(3年)と続いた。1000mは2分48秒で通過した。
黒田朝日にとって、この後の展開は「難しかった」と振り返る。「ハイペースになるのが一番走りやすい、と思って。『なるべくふるい落としのレースにしたいな』と走り出して、早い段階で留学生の選手が出てくれるかなと思っていたんですけど、あまり出てくれなかったです」。自身が先頭を引いたまま1000mを2分50秒で刻み、4000m手前で先頭集団は6人に絞られた。

先頭がムチーニに代わると、ペースが落ちた。6000m手前で再び黒田朝日が前に立ち、ペースを上げたところで創価大の山口、続いて石丸が遅れ始めた。「最終的には留学生と僕との勝負に持ち込みたかったので、ふるい落としにかけたという感じです」と黒田朝日。7000mを過ぎると、先頭争いは安島を含む4人になった。
あとは最後の部分をどれだけ突き詰められるか
終盤はムチーニとキップケメイが1000mのラップを2分40秒台に上げ、黒田朝日がそれについていく展開。安島は徐々に苦しくなった。ホームストレートを走るたびに、地元出身の黒田朝日には拍手が送られた。残り1周の鐘が鳴ると、前に出たキップケメイを外から抜こうとして、先頭をうかがった。しかしムチーニにもかわされ、全体3位でのフィニッシュとなった。

「悔しい思いっていうのが、一番です」。黒田朝日はまず、このようにレースを振り返った。「いかに楽な状態で終盤まで持っていくかが大事だと思っていて、そういう部分ではちょっと消耗してしまったかなというのはありました」。先頭を走る時間が思った以上に長くなったことを悔やんだが、スパート勝負への影響は否定した。「最後のスピードの部分は、まだまだ未熟。自分の弱さの部分が出てしまったと思っているので、これからの反省点として、しっかり鍛えていかないといけないです。最後の勝負にまで持ってきたところは、ある程度良かったので、あとは最後の部分をどれだけ突き詰められるかだと思います」
声援や拍手を受け「勝たなきゃいけない」思い新た
昨年11月の全日本大学駅伝では4区の区間記録を更新。年始の箱根駅伝は2区で当時創価大の吉田響(現・サンベルクス)とともに日本人として初の1時間5分台をたたき出し、区間新記録。自身にとって初マラソンだった今年2月の大阪マラソンは、2時間06分05秒で日本学生記録をマーク。3年時の成績だけを見ても華々しい黒田朝日だが、高校時代に中心としていた種目は3000mSCだった。会場になっているJFE晴れの国スタジアム(岡山県総合グラウンド陸上競技場)での思い出も「サンショー(3000mSC)で勝ってたぐらいです」と言う。

久しぶりに地元で迎えるレースに対しては、「モチベーションというか、やる気の源。『ここでいいところを見せたい』と、充実した気持ちで臨むことができた」と語る一方、多くの声援や拍手を受けたことで「勝たなきゃいけない」という思いを新たにした。本人はこの日の結果に満足していない様子だったが、実績十分の留学生選手たちと最後まで堂々と勝負した姿を見ることができただけで、地元の人たちは改めて黒田朝日の成長の実力を実感したことだろう。
今後は7月の日本選手権で5000mに出場する予定。そして駅伝シーズンは、チームとして最大の目標である箱根駅伝の3連覇へ。その中心には「走りで引っ張るのが一番だと思っています」と力強く語る主将がいる。

