陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

箱根駅伝の5区、6区候補がここに? 順天堂大なども参加した富士山須走五合目競走!

富士山須走五合目競走、往復の部のスタートです(提供・リスタート)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は6月8日に開催された富士山須走五合目競走のお話です。大学からは順天堂大学、拓殖大学、亜細亜大学の選手たちが出場。ゲストランナーで吉田響選手(サンベルクス)と萩原歩美さん、そしてM高史も参戦いたしました。

高低差1200m、最大傾斜22%の超過酷ロードレース!

今年で3回目の富士山須走五合目競走は、「ふじあざみライン」と呼ばれる全面舗装のロードを使って行われました。山道を走るトレイルレースとは異なります。スタート地点の標高は約800m、五合目が約2000mとなりますので、高低差は実に1200m! 片道11.8kmですので、 平均勾配は10%、最大傾斜22%という激坂が続きます。種目は片道の「登りの部・11.8km」、五合目まで行って戻ってくる「往復の部・23.6km」の2種目。それぞれの走力に合わせ、ウェーブスタートで行われました。

大学生は順天堂大学が3人(登り1人、往復2人)、拓殖大学は登りの部に4人、亜細亜大学は往復の部に7人の選手が出場。M高史は往復の部で、大学生の皆さんや出場ランナーの皆さんと過酷なコースに挑みました。順天堂大学と拓殖大学は招待のため、順位はつかずオープン扱い。亜細亜大学は一般参加のため順位対象となりました。

登りの部のスタートです(提供・リスタート)

標高が高く、急勾配が続くコースとあって、各校の指導者の皆さんは「箱根駅伝の5区、6区や起伏への適性の見極め」や「心肺機能の強化や脚作り、高地トレーニング対策、メンタルの強化」などを期待されるようです。

箱根駅伝を目指す選手たちの速さを体験

登りの部では拓殖大学の主将・熊谷哲平選手(4年、一関学院)が55分58秒でトップ。拓殖大学は全日本大学駅伝関東地区選考会に3年ぶりに出場するなど、チームの状態も上向いています。M高史はトップを走る熊谷選手と、コース上ですれ違いました。その走りからはチームスローガン「橙輪の花を咲かせろ」を体現する気持ち、攻めの姿勢が伝わってきました。2番手には順天堂大学の野崎健太朗選手(2年、佐久長聖)が56分11秒で続きました。

往復の部では亜細亜大学の松永遥斗選手(2年、純真)が1時間32分11秒で優勝。順天堂大学の須田光星選手(3年、浜松日体)が1時間33分18秒で、2番目にフィニッシュしました。

往復の部、下りに入って順位を上げた順天堂大学の須田光星選手(提供・リスタート)

M高史は大学生の皆さんと一緒にスタートしましたが、先頭から20分遅れて1時間52分15秒でなんとか完走。改めて大学生の皆さんの速さとすごさを体感しました。40歳以上の部では年代別2位相当だったので、自分なりには現状打破できたかなと思います。参加されたランナーさんにとっても、箱根駅伝を目指す選手たちの速さを体験できるというのは貴重ですね!

箱根駅伝5区、6区とはコースもスピードも違うので、一概に比較はできませんが、坂道のレースを走ると選手にリスペクトの気持ちを抱きます。上り坂はペースを無理に上げすぎてしまうと、パタッと止まってしまうので、無理のないギリギリのペースで刻んでいきます。平地のレース以上に、ペース配分の大切さを感じます。

下り一辺倒のコースについては、スタミナがないと最後まで攻めていけないなと感じました。技術やコース取りなども重要ですが、やはり走力も必要になってきますね。加えてメンタルも大事になってくるので、山区間にスペシャリストが生まれやすいんだなと、改めて感じました。そして絶賛、全身筋肉痛です。

高低差1200mを登って下ってくる過酷なコースをM高史も走りました!(提供・リスタート)

「今後はこのコースを思い出しながら走れば乗り越えられる」

レース後、大学生の皆さんにもお話を伺いました。

順天堂大学・須田光星選手(3年、浜松日体)往復の部・1時間33分18秒(招待選手) 
「前回は登りの部でしたが、僕は下りが好きで下ってみたかったので、今年は往復の部に出場しました。上りは少し苦手意識があるのですが、克服できるようにどう走ったらいいか考えていました。下りは普段走らないスピードになるので、楽しいと感じました。下りに入ってから順位を上げ、リズムに乗れて良い感触でした。今後はトラックはもちろん、起伏のあるコースやロードでもしっかり走れるようにしたいです。箱根駅伝の6区を目指しています」

順天堂大学・氷見哲太選手(4年、富山商業)往復の部・1時間35分53秒(招待選手)
「2年生の時に箱根6区を走りました(区間17位、1時間00分46秒)。それ以上にきつかったです。箱根よりも(勾配が)急でした。監督と箱根6区の練習の過程と話をしていたので、良い練習になりました。今後は夏明けに5000m13分台を出したいです。昨年は箱根を走れなかったので、次はもう1回、6区でリベンジしたいです」

順天堂大学・野崎健太朗選手(2年、佐久長聖)登りの部・56分11秒(招待選手)
「今までで一番キツい上りでした。思ったより体を動かせたので、今後につなげられそうです。ロードの方が得意です。チームは箱根予選会からのスタートとなるので、まずはそこに絡んでいけるように現状打破していきたいです!」

左から順天堂大学の須田光星選手、野崎健太朗選手、氷見哲太選手(撮影・M高史)

拓殖大学・熊谷哲平選手(4年、一関学院)登りの部・55分58秒(招待選手)
「3カ月ほどレースから離れていたので、復帰戦でした。日体大長距離競技会の5000mに出場するので、その前に刺激や追い込みというところと、『箱根駅伝で山を走りたい』という二つを考えていました。後半は足が止まりそうなくらいきつかったですが、先頭を走れてはいたので、後ろとの距離を見ながら意地で勝つというつもりで走っていました。これよりキツいコースはないと思うので、今後はこのコースを思い出しながら走れば、乗り越えられると思います。(主将として)チームでまとまってタイムも出していきたいですし、箱根駅伝出場を達成したいので、応援してくださる方々の声を背中に受けて、必死に頑張っていきたいと思います」

登りの部をトップでフィニッシュした拓殖大学の主将・熊谷哲平選手(撮影・M高史)

亜細亜大学・松永遥斗選手(2年、純真高校)往復の部・1時間32分11秒(優勝)
「上りの適性を見る目的で、1位を取るつもりで、走りました。上りは意外と楽で下りの方がきつかったです。上りをしっかり走れたのは強みになると思います。個人ではハーフマラソン63分台が目標です。チームとしては箱根予選会で10位以内を目標にしています」

往復の部で優勝を飾った亜細亜大学の松永遥斗選手(提供・リスタート)

吉田響選手、萩原歩美さんも熱烈な応援!

また、ゲストランナーの吉田響選手と萩原歩美さんも大会を盛り上げられました。吉田響選手は今年の箱根駅伝2区を日本人最高記録となる1時間05分43秒で走破。この春からサンベルクス所属のプロランナーとして、マラソンとトレイルランニングの両方を極めるという新たな挑戦をされています。箱根駅伝5区経験者である吉田選手からは、スタート前に出場選手に対して上りの走り方のアドバイスもされており、会場も盛り上がりました。

萩原歩美さんは現役時代、アジア大会女子10000mで銅メダル、国際千葉駅伝日本代表で優勝を飾るなどの実績を残され、現在は静岡県裾野市の地域おこし協力隊として活動するほか、陸上やマラソンを応援する活動に取り組まれています。

ゲストランナーの萩原歩美さんと吉田響選手も、ランナーの皆さんへ熱いエールを送られていました(提供・萩原歩美さん)

ゲストランナーのお二人にもレース後にお話を伺いました。

吉田響選手
「高低差の激しいコースで、走っている時は苦しくても、終わってからは満足感や充実感を皆さんから感じました。自分たちも走る楽しさやパワーをもらえましたし、いただいたパワーを糧に、これからの練習や試合を頑張っていきたいです。次は富士登山競走でしっかり優勝を狙いたいです。秋冬は東日本実業団駅伝、ニューイヤー駅伝があるので、そこに向けて練習を頑張っていきたいです」

萩原歩美さん
「昨年に引き続きゲストランナーをさせていただきました。リピーターの方も初めての方も多く、走り終わった後の第一声は皆さん『キツい!』でしたが、それ以上に『楽しかった!』という声が多かった印象です。皆さん良い表情で走られていました。キツさよりも感動の方が勝っていて、『やりきった』というパワーから私たちも元気をもらえました。今後もランナーさんを応援しながら頑張っていきたいです」

お二人はフィニッシュ地点で学生選手や出場されたランナーさんを全力でお出迎え。ランナーの皆さんとも笑顔で記念撮影をされ、選手の方々にとっては過酷なレースの後にうれしいご褒美が待っていました。

M高史の陸上まるかじり

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