東洋大・小川大輝 再び世界を目指すオリンピアン、豊田兼に「置いていかれないよう」

第94回 日本学生陸上競技対校選手権大会 男子400mハードル決勝
6月8日@JFE晴れの国スタジアム(岡山)
優勝 小川大輝(東洋大4年)48秒95
2位 渕上翔太(早稲田大2年)49秒24
3位 盛岡優喜(早稲田大4年)49秒62
4位 下田隼人(東洋大2年)49秒67
5位 髙橋遼将(法政大4年)49秒68
6位 田原佳悟(立命館大4年)50秒03
7位 栁田聖人(東洋大3年)50秒19
8位 渡邊脩(日本体育大4年)50秒37
6月8日の日本インカレ最終日にあった男子400mハードルで、東洋大学の小川大輝(4年、豊橋南)が48秒95をマークし、2年ぶりとなる優勝を飾った。昨年のパリオリンピックを経験。再び世界の舞台に立つため、これからも9月に東京で開催される世界選手権の参加標準記録(48秒50)更新を目指す。
日本インカレ予選の後に明かした足への不安
小川は今大会、万全なコンディションで臨めたわけではなかった。大会2日目にあった予選を50秒54で走りきり、組1着で準決勝進出を決めた後、不安を明かしていた。左のふくらはぎを指さし「びくびく来てます」。ウォーミングアップから足がつらないか心配で「1台目の練習でダメだったら、やめていいぞ」という話もあった。怖さはあったが、力まずに走って予選を通過。翌日の準決勝も49秒25で組1着となり、決勝に駒を進めた。

振り返れば、4月の学生個人選手権でも足に不安を抱えていた。レース直前の練習で、小川にとって1台目の抜き足となる右足をハードルに引っかけた際、右のハムストリングスがつりかけた。患部を気にしながらスタートラインに戻り、決勝のレースは49秒75で4位。7月のFISUワールドユニバーシティゲームズ代表の座を逃してしまった。「ゴールしたら両方のハムと両ふくらはぎがつってて、立ち上がれなかったです。自分の管理不足かなと思います」
左ふくらはぎにテーピングを施した日本インカレ決勝は、8レーンから世界選手権の参加標準記録突破を狙っていた。1台目を越えた後、5台目まではインターバルを14歩で刻む。ただ「バックストレートが向かってて『厳しいかな』とレース中に思いました」。スピードに乗っていたようにも見えたが、記録を見据えていた本人の感覚は少し違っていた。トップでゴール後は、首をかしげる場面も。「なんとか48秒台でまとめられたので、そこは良かったと思います」と振り返った。

パリでは「自分がどこにいるのか分からない感覚」
2年時の日本インカレは、当時慶應義塾大学4年の豊田兼(トヨタ自動車)と競い、1000分の1秒単位で着差がつかず、2人とも優勝になった。小川は昨年の日本選手権決勝でパリオリンピックの参加標準記録、48秒70をマーク。この時に日本の男子選手で歴代3人目となる47秒台を出した豊田とともに、パリの舞台をつかんだ。
パリでは「周りの雰囲気や観客の多さに圧倒されてしまって、自分がどこにいるのか分からないみたいな感覚になっていた」と振り返る。予選敗退となったが、あの経験は「どんな雰囲気でも楽しめるようになりましたし、自分のゾーンに入るという感覚も徐々に感じられてきている」と生かせるようになっている。

オリンピックに向けて調整してきたことや、夏場の大事な期間に練習が積めなかったことから、連覇がかかっていた昨年の日本インカレは出場を見送った。だが、そこで当時法政大学4年の井之上駿太(富士通)が48秒46をたたき出し、東京世界選手権の参加標準記録を突破。早稲田大学の渕上翔太(当時1年、東福岡)と東洋大学の下田隼人(当時1年、豊川)がともにU20日本新記録を出すなど、好記録が連発した。「すごく好条件がそろっていたので、悔しい思いをしました。でも、これも仕方ない。あまり調子が整っていなかったので、欠場しました」
「最低でも表彰台」→「優勝しなければ」
インカレ優勝の気分は、2年前と今とでは本人にとって異なる。「当時は『最低でも表彰台に乗れればいいかな』という中での優勝だったんですけど、今年は『優勝しなければならない』という感覚だったので、プレッシャーはありました。そこに打ち勝てたのは、収穫だと思います」。学生の中ではトップで居続けたいというプライドが、当然ある。

48秒50を更新するためには、今のレースプランのままで水準を上げるのか。それとも何かを改善するのか、という質問に、小川は「自分のレースプランは監督とも『これが一番合ってる』と一致しています。あとは自分のコンディションと会場のコンディションが合えば、タイムを狙えると思っています」と答えた。タイムのアベレージは上がってきている。あとは予選や準決勝から組1着を勝ち取り、走りやすいレーンをつかみ取るなど、自分がやれることを続ければ「どこかで一発」参加標準記録の突破を狙えると本人は語る。
次の大きな舞台は7月の日本選手権だ。最大のライバルは2年前、ともに栄冠をつかんだ豊田になるだろう。
「最近はどの大会でも、前半に置いていかれてる感じがあります」と小川。前半からスピードに乗るため、一時はインターバル13歩にも挑戦した。ただ「自分の走りや感覚に合わないところがあって、やっぱり14歩でハードルの間を速くする練習をしています。徐々に、力を使わず楽に回せているという感覚があるので、そこで豊田選手に置いていかれず、得意の粘りで最後に差しきりたいです」。思い通りのレースができたとき、念願の48秒50切りも見えてくる。

