順天堂大・田島愛理 日本インカレ1500mV、5000m3位と自己ベストに手応え

第94回 日本学生陸上競技対校選手権大会
@JFE晴れの国スタジアム(岡山)
6月6日 女子1500m決勝
優勝 田島愛理(順天堂大3年)4分14秒77
2位 長谷川麻央(京都教育大4年)4分19秒44
3位 木下紗那(中央大4年)4分19秒83
6月7日 女子5000m決勝
優勝 サラ・ワンジル(大東文化大3年)15分30秒04=大会新
2位 デイシー・ジェロップ(城西国際大1年)15分39秒52
3位 田島愛理(順天堂大3年)15分57秒14
6月5日から8日にかけて開催された第94回日本インカレで、順天堂大学の田島愛理(3年、静岡サレジオ)が1500mで優勝、5000mで3位(日本人トップ)と好結果を残した。2種目とも自己ベストを更新する好走に手応えをつかんだ田島。今後もさらに上を目指す。
「優勝だけを目指して」キレあるスパートで自己ベスト
まず1日目の1500m予選2組に登場した田島。終始先頭集団で走り続け、ラスト300mとなったところでペースを上げて先頭に。そのまま組トップで駆け抜け、決勝進出を決めた。2日目の決勝では序盤、田島は集団の後方にいたが、徐々に位置取りを前にし、5番手付近でレースを進めた。
ラスト1周手前の鐘が鳴る直前、外からスッと前に出ると一気にスパートし、集団を引き離す。後続に30m以上の差をつける独走状態でゴール。フィニッシュ後は笑顔で仲間の声援に応えた。

田島は4月、FISUワールドユニバーシティゲームズの選考がかかった学生個人選手権1500mで3位となり、悔しい思いをした。その後、5月の関東インカレでは優勝。1週間後のセイコーゴールデングランプリでは4分16秒07をマークして自己ベストを更新した。「絶対に全国で1位を取るぞ!」と強い気持ちで臨んだ今回のレースだった。
スローペースになると予想し、最後500mぐらいでの切り替えを考えていたが、序盤から比較的ハイペースなレース展開になった。最後300mぐらいから切り替えを考えていたが、そうするとラストが強い選手に負けてしまうかもしれないと考え、思い切ってラスト400m手前から出たのが勝因となった。
仕掛けたところで「勝ったな」と思いましたか? と問われると「いつもなら相手の選手が来てからじわじわいく感じだったんですけど、今回は思い切って初めの50mでダッシュしようという勢いで走りました。そうしたら後続と離れたのを感じて、そこからは自分との戦いだと思って走りました」。田島は出場選手中、自己ベストのタイムがトップだったということもあり、「挑戦する走り」を目標にした。
個人選手権で負けてしまってから、「誰にも負けたくない」という思いで、今回は優勝だけを目指して走った結果、タイムがついてきて自己ベストも更新できた。「優勝を目指していってそれが自己ベストにつながったことはとても驚いたし、タイムを見てまさか(4分)14秒という数字が本当だと思わなくて、正直びっくりしました」

冷静にレースを進め、ラストで勝ち切った5000m
翌日3日目の女子5000mのスタートラインにも田島の姿があった。スタートしてすぐに、日本学生記録を持つ大東文化大学のサラ・ワンジル(3年、帝京長岡)、城西国際大学のデイシー・ジェロップ(1年、仙台育英)、城西大学の兼子心晴(4年、浜松市立)の3人が飛び出した。田島は大きな4位集団の後方で周回を重ねた。
2000mを過ぎると兼子が離され、ワンジルとジェロップの2人旅に。田島は集団の中で徐々に前方へと移動した。3400mほどで集団は兼子を吸収。田島は集団の4番手に上がり、残り3周では3番手に上がった。ラスト1周の鐘が鳴ると帝京科学大学の今西紗世(1年、成田)が前に出て田島が続いた。最後は激しいラストスパート勝負になり、田島がわずかに先着した。

今回は1500mの優勝は目標にしていたが、5000mは8位入賞を目標にしていた。連戦の疲労もあり、途中はきつくてたれてしまうこともあったと振り返る。「最後の1周までいけばラストには自信があったので、しっかり粘ることを意識しました」。結果的に1500m優勝と5000mの日本人トップ。「まさか5000mでこういう成績になると思っていなかったので、2種目合わせてとても自信につながりました」
仲間の応援も背中を押した。3日目は土曜日になり、前日まで授業で来られなかった部員も続々と岡山入り。「競技場の全部のところで自分への応援が聞こえて、とても力になりました。4年生の最後のインカレというのもあって、自分が少しでも4年生の力になれたらなと思って、頑張りました」
上級生の自覚で変わった練習への取り組み
チーム内でも3年生となり、上級生の立場になった田島。心強く支えてくれていた去年の4年生が卒業し、練習でも気合が入らないと思う時もあった。しかし監督やコーチ、チームメートに支えられて、練習にもいい流れで取り組めるようになった。
「自分が上級生になり、下級生たちやチームをまとめていかないといけない」という気持ちも出てきて、練習への取り組み方やモチベーションがガラリと変わった。
「今まで練習はきついもの、と考えていたんですが、3年生になってからは練習を楽しむようになりました。そうしたら今までできなかった練習ができるようになっていって、どんどんレベルが高くなっていって、そのおかげでこういったハイレベルな争いで戦える心とか、走りができていると思います」
具体的には練習の時、自己ベストより早いペースで400m、800mを走ることもある。そうすることでいざ試合に臨んでスローペースになった時に余裕を持ち、力を使わずに走れるようになった。それが勝負強さにもつながり、自己ベストにもつながったと手応えを感じている。

「まだあと1年あるので、(1500mの)学生新記録も目指していきたいと思います」と田島。現在の学生記録は立教大学の道下美槻(現・積水化学)が2021年に樹立した4分12秒72。今回4分14秒77をマークした田島なら、現実的に狙える数字にもなってきた。
このあとは7月の日本選手権1500mに出場予定。「しっかりトップレベルの選手たちについていって、シニアの選手たちと戦っていきたいです」。そして夏合宿を経て秋の駅伝シーズンに臨む。
「今年は“エース”という存在があんまりいなくて。だからみんなで総合力で戦っていこうという話になっています。少しでもチームの力になれるような、チームを勢いづけるような走りをしていきたいと思っています」と話した田島だが、チームのエースと呼ばれる日も近いのではないか。そう期待させるインカレでの活躍だった。

