陸上・駅伝

特集:第94回日本学生陸上競技対校選手権大会

日体大・佐々木琳音が女子棒高跳びで大学初タイトルV、ライバルとともに表彰台を独占

女子棒高跳びは日本体育大学勢が表彰台を独占(すべて撮影・井上翔太)

第94回 日本学生陸上競技対校選手権大会 女子棒高跳び決勝

6月8日@JFE晴れの国スタジアム(岡山)

優勝 佐々木琳音(日本体育大4年)4m10
2位 小林美月(日本体育大3年)4m10
3位 岡田莉歩(日本体育大2年)4m00
4位 村田蒼空(筑波大3年)3m90
5位 若林人生(福岡大4年)3m80
6位 松井愛果(大阪教育大1年)3m80
7位 相原ほのか(筑波大4年)3m80
7位 須崎心優(中京大4年)3m80

6月8日の日本インカレ最終日に行われた女子棒高跳び決勝で、日本体育大学の佐々木琳音(りお、4年、東京)が自己ベスト更新となる4m10をマークし、優勝を飾った。本人によると、大学でタイトルを獲得するのは初めて。この種目は2位に小林美月(3年、明星学園)、3位に岡田莉歩(2年、佐久長聖)と日体大勢が表彰台を独占した。

【写真】日本学生記録・大会記録の更新も続々! 第94回日本インカレの主役たち

1回目で4m10成功「自分がやることだけ」を意識

試技は3m50からスタート。佐々木はこの高さをパスして、3m70から跳躍を始めた。3m90まで10cmおきに高さが設定されていくところを、いずれも1回目でクリア。4m00は2回目での成功となり、この高さを終えた時点で残ったのは3人。日体大勢のワンツースリーフィニッシュが決まった。

続く4m10は資格記録が4m05の佐々木にとって、自己ベストへの挑戦だった。「これまでベストの高さに挑戦するときは焦って力んでしまって、何もできないっていうことが多かったんです。けど、高さをあまり意識しないで『自分がやること』だけを考えて臨みました」。具体的には、突っ込みの動作(ボックスにポールの先をぶつける瞬間に両腕を上に伸ばし、ポールを押し上げる動き)の際に腰が落ちてしまう癖を修正。ここで「少し余裕がある」動きを作れたため、空中姿勢への意識も向いた。

突っ込みで余裕のある動きを作れたことが、自己ベスト更新につながった

1回目で成功させると、マットに落ちた後に立ち上がって両腕でガッツポーズ。跳躍を見ていた小林と岡田も、自分のことのように喜んだ。小林は3回目で4m10に成功し、岡田は3回とも失敗。優勝は2人に絞られ、次の高さは日体大記録(4m20)と大会記録(4m22)の同時更新を狙って、4m23に定めた。しかし2人とも成功させることはできず、試技差の結果、佐々木の優勝となった。

今は力強い走りで空中での動きをカバー

「関東インカレの時も『ワンツースリーしようね』と言ってて、できなかったので、リベンジになったなって思います。日本インカレという関東インカレより高いレベルで、まさかできると思ってなかったので、本当にうれしいです。個人的には『やっと!』という感じでホッとしています」。佐々木は競技を終えた後、優勝の喜びを口にした。関東インカレは小林が優勝し、佐々木は3位。岡田は4位だった。

高校時代は3年時のインターハイで8位入賞。日体大に進んでからは、「助走・突っ込み・空中姿勢」と棒高跳びの跳躍を構成する要素を一つひとつクリアすることで、成長へとつなげていったと言う。

「過去の動画を見ると、全部ぐちゃぐちゃで……。最初は助走だけを意識していました」。一昨年ぐらいまでは助走のことだけを考えすぎた結果、その先の動きができないことも多かったと明かす。頭で考えなくても思うような助走ができるようになるまで練習を積み、次は突っ込み動作の方へ意識を向けることができるようになった。

かつては助走だけを意識して試合に臨んだこともあったという

本人は、まだまだ課題があると自覚している。「空中はあまりうまくないです。今は力強い走りをすることで、反発に乗れる跳躍ができているので、空中動作をカバーできているところがあります。それが自分の強みなのかなと思っています」。バーに向かう時は、本来なら倒立するような姿勢になることが理想だが、佐々木は上半身が起き、V字になってしまうところがあるという。「もっと空中で体を倒せれば、さらに上の高さも跳べるのかなと思っています」

小林美月「これまで一緒に頑張ってきた仲間」

自身にとって最後の日本インカレということもあり、優勝への思いは人一倍強かった。出場した20選手の中で、佐々木の試技は最後から2番目。小林や岡田よりも後から跳ぶことになり、「美月も莉歩も跳んだんだから『自分も負けてられない』という気持ちでした」。普段の練習から、大学トップレベルのライバルたちと競い合えるのも日体大の強みだろう。「2人の存在は大きいです」と佐々木も感謝する。

日本インカレでの連覇を狙っていた小林は悔しさをにじませながらも、優勝した佐々木を祝福した。「同じ大学の仲間でもあり、ライバルでもあったので『負けていられない』と思っていました。でも、琳音先輩はこれまで一緒に頑張ってきた仲間で、莉歩と一緒に『ワンツースリーしたい』という目標もあったので、素直にみんな跳べたことがうれしかったです」

跳躍を成功させると、小林美月や岡田莉歩(左奥)も自分のことのように大喜び

「すべてを合わせないといけない」棒高跳びの魅力

ポールを使って約4mの高さまで体を浮き上がらせる棒高跳びは、危険も伴う。それでも競技を続けられる魅力は何か。佐々木に尋ねると、こう答えてくれた。「ハラハラするんですけど、跳べたときはかっこいいですし、いつまでもどこまでも自分の限界にチャレンジできるところがいいと思います。あと、助走や入り、自分のコンディションが『良い』となっても、ポールやアップライト(バーの奥行き)が合わないと跳べないので、すべてを合わせないといけないところが、難しさでもあり、面白いです」

課題があるということは、まだまだ伸びしろがあるということでもある。佐々木は卒業後も競技を継続する予定で、さらなる飛躍を目指す。

空中での姿勢がもっと良くなれば、まだまだ記録は伸びると自覚している

in Additionあわせて読みたい