陸上・駅伝

特集:第94回日本学生陸上競技対校選手権大会

日体大・平島龍斗が大学初の表彰台、4月下旬から2週間おきの主要レース"完走"の末

日本インカレ男子5000mで3位に入った日本体育大の平島龍斗(撮影・藤井みさ)

第94回 日本学生陸上競技対校選手権大会 男子5000m決勝

6月7日@JFE晴れの国スタジアム(岡山)

優勝 山口智規(早稲田大4年)13分40秒06
2位 シャドラック・キップケメイ(日本大3年)13分42秒32
3位 平島龍斗(日本体育大4年)13分42秒84
4位 中村晃斗(志學館大3年)13分45秒74
5位 小池莉希(創価大3年)13分46秒96
6位 黒木陽向(創価大4年)13分47秒07
7位 スティーブン・レマイヤン(駿河台大3年)13分47秒50
8位 池間凛斗(順天堂大2年)13分49秒16

6月7日の日本インカレ男子5000m決勝で日本体育大学の平島龍斗(4年、相洋)が自己ベストとなる13分42秒32をマークし、大学初の表彰台となる3位に入った。「順位を狙っていたというよりは、『出し切る』というレースだったので、ゴールしてびっくりしています」。4月下旬から2週間おきに続いた大学陸上の主要大会を〝完走〟。駅伝シーズンはチームの上位進出へ、カギを握る存在となりそうだ。

【写真】日本学生記録・大会記録の更新も続々! 第94回日本インカレの主役たち

充実感と悔しさが同居したレース後

20選手が出場したレースは、アウトレーンからスタートした創価大学の小池莉希(3年、佐久長聖)が早々に飛び出した。1周目を61秒で入るハイペース。20~30mほど後ろに東海大学の兵藤ジュダ(4年、東海大静岡翔洋)が引っ張る集団ができ、平島は東京大学の秋吉拓真(4年、六甲学院)、青山学院大学の椙山一颯(1年、九州学院)らとともに集団の前方につけた。

兵藤ジュダ(右端)や山口智規(左端)ら有力ランナーが出走し、平島は集団の前方につけた(撮影・藤井みさ)

最初の1000mを2分40秒で通過し、2000mにかけて小池のペースが落ちてくると、2400m付近で小池は集団に吸収された。中央大学の三宅悠斗(1年、洛南)が先頭に立ち、大会初日の10000mで優勝した日本大学のシャドラック・キップケメイ(3年)や駿河台大学のスティーブン・レマイヤン(3年)が続く。3000mから4000mにかけて先頭集団の9人は縦に1列となったものの、再びペースが落ちて2列に。ラストのスパート合戦となった。

残り2周を切ったバックストレートで、小池が再び仕掛けた。そこに1500m優勝の早稲田大学・山口智規(4年、学法石川)が対応し、平島も食らいつく。残り1周の鐘が鳴ると、山口がスパート。十数mおきにキップケメイ、平島と並び、そのままフィニッシュを迎えた。平島は「ハイペースになるだろうなと思っていた中、意外と3000mや4000mの通過で余裕を持っていけました。でも1位の山口君は1500mを走って、キツイ状態でやっている。同じ舞台で走るからには、勝たないといけなかった」。レース後の平島の胸には、充実感と悔しさが同居していた。

レース直後は自己ベスト更新に気付かず、悔しそうな表情を浮かべていた(撮影・井上翔太)

良くも悪くも「固執しないタイプ」

今年は9月に東京で世界選手権が開催されることもあり、日本インカレが昨年までの9月から6月に前倒しとなった。4月下旬からは2週間おきに学生個人選手権、関東インカレ、全日本大学駅伝関東地区選考会、日本インカレと大学主要大会のレースが続き、平島はすべてに10000mまたは5000mで出走してきた。

各レースを終えた後は練習量を落としすぎることなく、「そのままの流れで行こう」とやってきたことが、好結果につながったと分析している。学生個人選手権10000mを29分02秒17で走って9位だった後は、関東インカレ男子1部5000mで13分46秒30の自己ベストをマークし、6位入賞。全日本大学駅伝の関東地区選考会はエースが集まる4組を走って伊勢路本戦出場に貢献し、今大会で再び5000mの自己ベストを更新した。

「ちょっと体が重いぐらいの方が、動きやすいタイプなのかなと思います。自分は良くも悪くも固執しないタイプで、言われたことをやって全力を出そうというだけなので、そこまで(調整が)難しいとも思いませんでした」

2週間おきに続いた主要レースで、きっちりと結果を残してきた(撮影・藤井みさ)

日本インカレでは、本来なら残り1000mぐらいで前に出たいと考えていた。しかし「勝ちに徹したレースをしよう」と思い直し、誰かが行くまではおとなしく、力をためていた。昨年の全日本大学駅伝1区区間賞、年始の箱根駅伝1区3位と、集団での駆け引きや最後の絞り出しで持ち味を発揮してきた。「ただ、自分はスパートがないと思っています。『何も気にせず、ただがむしゃらに』ということをやっているだけなので(笑)」。ラストスパートまでの余裕の持ち方や、ラスト1周の走り方などで、課題を感じる大会になったようだ。

"三本柱"それぞれの特徴

日体大の男子駅伝チームは、昨年から平島たちの世代が中心となり、活躍してきた。山崎丞(4年、中越)と田島駿介(4年、旭野)、平島の3人は、3年時から〝三本柱〟と呼ばれている。それぞれの特徴を尋ねると、「みんな真逆で、それもまた面白いです」と教えてくれた。「山崎は陸上にストイックで、常に『勝負には負けたくない』という強い気持ちを持っています。田島は『ゾーンに入る』タイプ。練習でちょっとでも気を抜いたら、山崎や田島に抜かれちゃうんで、身近にそういう存在がいるのは、すごく大きいです」

日ごろの練習から刺激し合えるチームメートがいる。それが「レースで外さない」という意識につながり、その先には、特に箱根駅伝で78年連続出場とシード権獲得という大きな目標がある。「伝統を途切れさせてはいけないですけど、逆に伝統を力と自信にできているので、プレッシャーは感じていないです」と平島は言う。

"三本柱"の一角として、これからもストイックにチームを引っ張る(撮影・藤井みさ)

3大駅伝ではこれまで1区を任されてきたが、ラストイヤーは「ここを頼む」と言われたところで走る。出走区間にも固執はない。「個人の走りがチームの目標に影響するので、自分はまず、どの大会でも『出し切る』ことを意識して、他の選手につないでいきたい。今年は4年生が行動面で引っ張っていますが、下級生は例年に比べると、力を出せていない印象です。これから夏を経験すれば、もっといいチーム状況になると思います」

鍛錬の夏を経て、まずは箱根駅伝予選会、伊勢路と続く駅伝シーズン。平島は「レベルが高い選手と戦うには、これぐらいやらないといけない」と後輩たちに示すためにも、普段からストイックに、出場するレースでは常に出し切って、チームを牽引(けんいん)する。

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