ホクレンDCが開幕!深川大会は「國學院の同窓会」もあった5000mで"PB祭り"

今回の「M高史の陸上まるかじり」はホクレン・ディスタンスチャレンジ(以下、ホクレンDC)のお話です。例年は7月に開催されていますが、今年は日本選手権が7月4日~6日に行われることもあり、6月と7月に分かれての開催となりました。M高史は今年もライブ配信の実況を務めさせていただきました。今回は6月11日に行われた第1戦・深川大会、6月14日に行われた第2戦・士別大会をリポートします。
ライブ配信や実況の裏側をお伝えします
ライブ配信の実況は今年で5年目になります。解説は今年もホクレンDCレースディレクター河野匡さん。M高史は毎回、お隣で勉強させていただいております。
結果についてはホームページで発表されているリザルトやライブ配信動画のアーカイブからもご確認いただけますので、今回は実況席から見たホクレンDCや滞在中に感じたことなどを書かせていただきます。
まずはライブ配信の準備からです。エントリー選手の情報を事前に調べるのはもちろん、各チームのSNSをフォローしたり、「M高史の陸上まるかじり」「M高史の部活訪問」で練習に参加させてもらったりして、選手のことを把握しています。一緒に走らせていただいた選手が、当時よりも速く、強くなっている姿を見るとうれしいですし、実況にも熱が入りますね!

ライブ配信中はチャットで応援コメントや質問をたくさんいただくので、実況の合間に可能な限りお答えしています。選手のご家族や恩師、チームメートからファンの方まで、画面の向こうで応援している皆さんに届くように、一緒に熱くなれる空気感を目指しています。
実況用の資料を作っても、実際に話す内容はごく一部です。心がけているのは、主役である選手の皆さんを応援してくださる方々に、分かりやすく、迅速に、丁寧にお伝えすることです。普段から駅伝やマラソンの実況をされるアナウンサーや解説の皆さまも、たくさんの情報から精査して、その場で必要なことをお話しされているのだと思います。
深川大会を受け、日本選手権の男子5000m出場者は100人超え!?
第1戦の深川大会は雨と雷が心配されていましたが、レースが始まる前には雨もやみました。風は中距離種目が始まる頃にはまだ残っていたものの、5000mがスタートする頃には穏やかになり、絶好のコンディションになりました。
実業団選手に交ざって学生選手も躍動しました。女子5000mBでは大阪学院大学の山田祐実選手(1年、大阪薫英女学院)が自己記録を30秒以上更新する15分56秒19でトップとなりました。

男子5000mBでは國學院大學の青木瑠郁選手(4年、健大高崎)が13分30秒42をマークし、大学記録を更新。日本人トップの2位に入りました。同じく國學院大の辻原輝選手(3年、藤沢翔陵)も13分35秒30で自己ベストを更新。男子5000mBには山本歩夢選手や中西大翔選手(ともに旭化成)、伊地知賢造選手(ヤクルト)といった卒業生も出場したため、ライブ配信中に「國學院の同窓会」というコメントをいただき、チャット上でも盛り上がりました!
解説の河野さんが「同じ組で10名以上が自己ベストを出したら『PB祭り』ですね」とお話しされたことで、さらにチャットも大盛り上がり。男子5000mBではトップから12位までの選手が自己ベストを更新。女子5000mAでも10選手が自己ベストを出し、まさに「PB祭り」となりました!

特に男子5000mは、深川大会の開催日までが日本選手権の資格記録として有効ということもあり、13分38秒の申し込み資格記録を新たに突破する選手が続出しました。ターゲットナンバーの設定がなく、突破した選手全員がエントリーできるため、現時点で日本選手権5000mの出場者は、100人を超えそうとのことです。5000mは予選と決勝が行われる予定とのことで、決勝だけのレースとはまた違った展開や戦略も注目されますね。
大会前日の調整練習やウェーブライト設置の様子をお届け
第1戦の深川大会が終わると、第2戦の士別大会に向けて準備をします。両大会の間に次のスタートリストが出るので、リザルトを追記しながら資料を作っていきます。ホクレンDC実行委員の皆さんも大忙し。というのも、連戦する選手の組が変わってくる可能性があるからです。
深川大会で自己ベストやシーズンベストを出した選手は、その記録が反映され、士別大会ではより速い組に入ることもあります。少しでも最新情報を反映して、選手に好記録を狙ってほしいという実行委員の皆さんの愛情を感じます。

レース前日に会場となる士別市陸上競技場へ伺うと、翌日に向けた調整練習をする選手の姿がありました。軽く体を動かす程度だったり、1000mをレースペースやそれより少し速く走って刺激を入れたり、300mや200mといった短めの距離を速いペースで走ったりと、内容は種目や調子によってそれぞれ。ウォーミングアップ、動き作り、前日刺激を見ているだけで、陸上ファンの一人としてはワクワクします(笑)。
前日刺激で1000mを1本走った金谷紘大選手(埼玉医科大学グループ)が、ご丁寧にあいさつに来てくれました。駒澤大学高校時代から部活訪問でお世話になっており、駒澤大学入学後は一番下のグループからのスタート。苦労しながらもコツコツと力をつけ、4年生の時には関東インカレ2部5000mにも出場しました。3大駅伝の出場はかないませんでしたが、出雲駅伝では補欠に。この春から実業団選手として新たなスタートを切りました。

大学4年の秋以降には調子を落としていたのですが、徐々にコンディションも上がってきているようで、今後の活躍に期待です!
競技場では電子ペーサー(ウェーブライト)の準備をされていた栃澤亨さんにも、お会いしました。ウェーブライトは400個のLEDでトラックの縁を緑、赤、白などの色で照らします。選手の皆さんが走りやすいように、安定したペースを刻みやすいようにという思いから導入され、できるだけ等間隔になるように、約3時間かけて設置されました。
ウェーブライトの導入により、ペースメーカーが以前よりも安定し、選手の皆さんの好記録にもつながっています。またペースメーカーが不在の組でも、走る目安になります。特にレース後半は、ウェーブライトを意識してペースアップする選手や、追いつかれないように必死で逃げる選手の姿も見られました。選手も応援される方にとっても分かりやすいですし、日が暮れたらイルミネーションのようで、トラックが映えます。

士別大会は1500mで32年ぶりの韓国記録誕生!
6月14日の第2戦・士別大会は、やや風が強いコンディションで始まりました。少し記録が出にくい雰囲気を吹き飛ばしたのが、男子1500mに出場した韓国のイ・ジェウン選手です。深川大会で3分40秒19の自己ベストをマークし、士別大会では3分38秒55でトップ。この記録は韓国記録を実に32年ぶりに更新する快挙でした。「ホクレンDCは記録が出る!」ということで韓国の選手にも人気のようです。

ホクレンDCのライブ配信は見やすいと、たくさんの方からお声がけいただき、本当にうれしい気持ちです。それはなんといっても、河野さんの分かりやすい解説があるからです。丁寧かつ理論的に解説いただき、視聴者の皆さんからの質問にも答えてくださり、時々冗談も交え、そこから一転「ここで離れたらもったいない!」「ラストいける!」と選手たちに熱いエールを送られます。
士別大会の最終レースとなった男子10000mでは、28分38秒67のシーズンベストでトップをとった中島大就選手(中国電力)の走りについて「イーブンで押していけるロードタイプで、マラソンもいけるのかなと感じさせますね」とお話しされ、28分43秒36の2位で自己ベストを更新した小泉樹選手(黒崎播磨)については「身長が高い中でもピッチで動けています。上半身と下半身の動きがマッチしていて、スピードの変化にも対応できそうです。練習の中で意識してトレーニングしていけば、十分スピードも出そうな動きです。今後も期待したいですね」と解説してくださいました。
河野さんは以前、ライブ配信での解説について「レースが終わってから、選手がアーカイブで動画を振り返った時に、少しでも参考になればと思って話しています」とお話しされていたことを思い出しました。

7月の日本選手権を経て、ホクレンDCは第3戦・千歳大会(7月12日)、第4戦・北見大会(7月16日)、第5戦・網走大会(7月19日)と続きます。出場される選手の皆さんの活躍に期待しながら、現地観戦やライブ配信を通しての応援も、よろしくお願いいたします!
