大東文化大・川瀬真由 3000mSCと出会い「自分でも戦える」駅伝は主将としても

第94回 日本学生陸上競技対校選手権大会 女子3000mSC決勝
6月8日@JFE晴れの国スタジアム(岡山)
優勝 山下彩菜(大阪学院大4年)9分57秒70
2位 小松夕夏(筑波大4年)10分02秒76
3位 川瀬真由(大東文化大4年)10分05秒81
4位 山田春佳(大東文化大4年)10分31秒63
5位 冨田紗帆(順天堂大1年)10分36秒19
6位 小松めい(白鷗大2年)10分39秒12
7位 道田衣舞(東京女子体育大3年)10分39秒98
8位 瀬戸悠理(拓殖大2年)10分40秒73
大東文化大学の川瀬真由(4年、豊川)は大学2年から3000mSCを専門種目にした。大学1年の頃、最上級生だった吉村玲美さんがこの種目で9分39秒86の日本学生記録をマークし「ずっと3000m障害に興味があった」。すぐさま頭角を現し、気付けば自身も最終学年に。今シーズンは主将も務め、駅伝シーズンでは力のある後輩たちとともに、悲願の初優勝を狙う。
序盤から光った積極性、4月に敗れた山下彩菜の前へ
6月8日の日本インカレ最終日。女子3000SC決勝に出場した川瀬は、序盤から積極的に走った。4月の学生個人選手権で敗れた大阪学院大学の山下彩菜(4年、千原台)の前に出てひた走る。最初の400mを通過したところで山下に先頭を譲ったが、離されなかった。山下は1000mを3分21秒で通過。この時点で優勝争いは山下と川瀬、筑波大学の小松夕夏(4年、唐津東)の3人に絞られた。

2000mに向かうところで山下と2位以下の差が広がり、小松が川瀬に並んだ。基本的に障害へ足をかけずに跳び越える小松が川瀬の前に出ると、上位陣はこのままの着順でフィニッシュ。川瀬は優勝にこそ手が届かなかったものの、10分05秒81は自己ベストのタイムだった。
レース後は、7月に迫る日本選手権に向けた意気込みを語った。「上のレベルの選手たちに食らいついて、自分の殻を破る。そこから一番いい形で、次のステージにつなげていきたいと思います」
壁は自分で破っていかないといけない
川瀬は大東文化大に進んだ後、1年目のトラックシーズンからケガに悩まされ「最初は全然、力も及ばなかった」と当時を振り返る。何かを変えようと、外園隆監督とのミーティングで種目転向を願い出た。「吉村玲美さんという強い先輩がいらっしゃったので、『やってみたい』という思いが出てきました」
1500mのスピードと5000mの持久力、そして脚力の強さ――。3000mSCは川瀬の言葉を借りれば「一筋縄ではいかない」。3000mを走りながら計35回、障害を越える。このうち7回は着地点に水が張られた〝水濠〟だ。「きついし、思うようにいかないこともたくさんある」と難しさを痛感する一方、「こんな自分でも戦うことができる」という新たな気付きも得た。

実際、結果はすぐに表れた。2年目の4月にあった学生個人選手権で優勝すると、翌年も連覇。関東インカレも昨年、今年と連覇を果たした。特に今年5月の関東インカレを制した後は、「一番の課題である『レースで自分の力を出し切る』というところを意識していました。中盤からの粘りで日本インカレにつながる走りをしたかった」と振り返っていた。
自分本位で強気なレースをできないことが、それまでの川瀬にとっては課題だった。「今までだと、後ろのことをすごく気にしてしまって……。相手のことを考えてしまって自分の走りができない、ということが多かったんです」
昨年から今年にかけて、練習やレースを重ねるうちに、先輩たちからもアドバイスをもらい「自分の走りをし続けることしか、自分の力を出し切れないし、勝つことにはつながらない」と気付かされた。周りを気にせず、自分の走りだけに集中することで、「最初から強気のレースをする」というプランで臨み、1000mの通過から粘ることで、ずっと練習してきたラストの走りに生かすことが徐々にできてきた。
「壁は自分で破っていかないといけない。いろいろとうまくいかないこともある中でも、自分のことを信じてくれる人がいますし、苦しいところや課題を乗り越えることでしか、3000m障害を自分のものにはできないと思います」

笑顔・明るさ・チームワークを受け継いでいきたい
大学ラストイヤーでは主将も務める。川瀬は昨年度から副将を務め、前主将の四元桃奈(現・資生堂)が全日本大学女子駅伝を走れなかった際は、チームを代表する立場も経験した。今年度の主将を務めることは、自然な流れだった。
四元さんからキャプテンとしての姿勢を学んだことはありますか、と尋ねると、「桃奈さんもそうですが、代々の先輩方は『大東文化の笑顔とチームワーク』をすごく大切にされてきたので、笑顔・明るさ・チームワークを受け継いでいきたいと思います」と答えてくれた。
全日本大学女子駅伝では過去に10度、年末の富士山女子駅伝は過去に5度の2位。惜しいところまでいくものの、まだ優勝は果たせていない。ただチームには、日本インカレ女子10000mと5000mの「二冠」を果たしたサラ・ワンジル(3年、帝京長岡)、10000mで3位に入った野田真理耶(3年、北九州市立)が健在。その中心には「強い選手じゃなかったし、入学したときは自分がこういう立場に立つとは思っていなかったけど、今こうして走れていることに感謝ですし、チームのみんなや監督スタッフにその気持ちを走りで表したい」と、控えめながらも強い意志を持つ主将がいる。

