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神奈川大・保坂斡希 兄から継いだ背番号5「努力を積み重ね、徐々にレベルアップ」を

兄と入れ替わる形で神奈川大に進んだ保坂斡毅(最後を除きすべて撮影・小沼克年)

第65回関東大学バスケットボール新人戦で、神奈川大学は初戦で姿を消した。「大学に入ってからは、高校の時のようなプレーがほとんどできていないですね」。ルーキーの保坂斡希(あつき、1年、富田)は、もどかしさをそっと吐露した。この春、卒業した兄の晃毅(現・熊本ヴォルターズ)とバトンタッチするように入学した18歳は、大学生活で最初の壁に直面している。

出場機会を得るも、課題のディフェンスが浮き彫りに

1回戦の大東文化大学戦は、ベンチスタートながら20分以上の出場機会を得た。1~4年生までが出場した春の第74回関東大学バスケットボール選手権で「ほとんど出番がなかった」保坂にとって、大学入学以降、公式戦では最も長くコートに立った試合だった。

186cmのルーキーは主にシューティングガードとしてプレー。高いオフェンス能力を最大の持ち味に、司令塔としてゲームメイクを担うこともできる。しかし、まだ入学して2カ月弱。ポイントガードのポジション争いでは先輩たちを脅かすような存在になれていない。オフェンスでは自ら指示を出すのではなく、味方からのパスを待つ時間が多いのが現状だ。

新人戦は大学入学以降、最も長くコートに立った公式戦だった

新人戦では得意の3ポイントやジャンプシュートから得点をマークした。一方、1対1を仕掛けてもなかなかリングへ切り込めない場面もあり、「あまり良くなかったです」と保坂。ディフェンスではがむしゃらに相手に食らいついたものの、その代償がオフェンスに響き、今の自分に最も足りない部分だと改めて実感したという。保坂は自分に言い聞かせるように言葉をつないだ。

「神大はディフェンスのチームですけど、自分はディフェンスが得意な方ではないです。今日の試合でもディフェンスで体力を使ってしまった分、オフェンスで思い通りのプレーができませんでした。やっぱり課題はディフェンス。相手と体をぶつけ合った時に体勢を崩されて攻められることが多いので、ディフェンスの足と体づくりがこれから一番大事になるのかなと」

保坂が得意としている外からシュートを沈める場面も見られた

攻撃に特化した高校時代のツケが回ってきた

「身長は中3の頃には追い越していましたね」。兄の晃毅よりも5cm高い保坂は、ポイントガードの中で「長身」の部類に入る希少な存在と言える。

昨年の冬には初めてウインターカップの舞台に立ち、高校最後の試合となった八王子学園八王子高校との2回戦では、1人で33得点を記録。34得点を稼いだ相手の絶対的エース、十返翔里(とがえり・しょうり、現・東海大学1年)とハイレベルな点の取り合いを演じ、保坂は高いポテンシャルを秘めた大型ガードとして爪痕を残した。

高校時代、チーム1の点取り屋として常に意識していたことは「毎試合25点以上取る」。保坂はその目標を大半の試合でクリアしてきたと振り返る。だが、「高校の時はゾーンディフェンスだったんですけど、ディフェンスで体力を使ってほしくないというコーチの考えがあったので、自分は後ろのポジションで必要最低限くらいのディフェンスしかしてなかったんです」とも明かし、「(ディフェンスで)努力してこなかったツケが、今、回ってきてますね」とバツが悪そうに笑った。

1対1の勝負を仕掛ける保坂、高校時代はオフェンスに特化していた

神奈川大の幸嶋謙二ヘッドコーチも、保坂に寄せる期待は決して小さくない。「ポテンシャルはお兄ちゃん以上です。サイズもあるので、ゆくゆくは将来の明るいポイントガードにしたいと思っています」と青写真を描きながらも、保坂の現状、その先を冷静にとらえ、これから身につけなければならない必須項目を挙げた。それがプレーする上での基礎・基本を意味する「ファンダメンタル」だ。

「彼は誰もマネできないようなプレーを平気でできてしまいますが、正直、まだファンダメンタルが足りないです。身体能力のある選手っていうのは、高校の時はその能力で全部処理してしまいがちですけど、大学に入るとそうはいかないです。ディフェンスに関しても、一つひとつのファンダメンタルが結構重要になりますので、それを身につけることがこれからの課題になると思います」

現状は「ファンダメンタル」が課題。克服すればポイントガードとして活躍する時も近づく

将来はBリーグでプレーして、兄と試合を

保坂は神奈川大に進学した経緯をこう話す。「兄が勧めてくれたという理由もありますし、実際に活躍していたのも見ていました。あとはチームの雰囲気がすごく良いなと感じて、チームメートと楽しみながら切磋琢磨(せっさたくま)できる雰囲気の中でバスケットに取り組めたら、自分としてももっと成長できるかなと思いました」

ユニホームの背番号は迷わず「5」を選んだ。高校時代から慣れ親しんだ番号で、兄から引き継いだ番号でもある。「やっぱりポイントガードでプレーしたい」。そう口にした保坂は、「ディフェンスは努力を積み重ねて徐々にレベルアップしていくしかないと思っています。オフェンスは今の自分でも通用する部分があるとも思っているので、得点を取って、オフェンスでも貢献したいです」と意気込む。

背番号5をつけ、昨年の日本インカレを戦う兄の晃毅(撮影・井上翔太)

「東海大に行った十返君にはやっぱり負けたくないですね」。チームの目標である日本一はもちろん、大学4年間では高校時代のリベンジにも静かに燃えているようだ。チームからの信頼を獲得し、自分をコートで表現するための課題は山積みかもしれない。それでも保坂斡希は、試行錯誤を繰り返しながらも前だけを見てアピールを続ける。

「将来はBリーグでプレーして、晃毅と試合をしたいです」。バスケットを楽しみ、ひたむきに進み続けた先に、その未来が待っている。

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