法政大・金田成来 かつて佐賀から目指した甲子園、自分があの芝の上で戦って日本一を

大学アメリカンフットボールの春の交流戦も終盤に入った。6月22日には関西大学カイザーズと法政大学オレンジの定期戦が、大阪・関西大学千里山キャンパス中央グラウンドである。ともに春の最終戦だ。法政大の金田成来(せいき、3年、早稲田佐賀)は、新たにOL(オフェンスライン)のスターターとなり、充実の春を過ごしている。
3年になって気づいた本当の面白さ
法政大は6月8日に神戸・王子スタジアムで関西学院大学ファイターズと戦った。昨秋の全日本大学選手権準決勝では関学を下したが、春の再戦では7-34と敗れた。身長178cm、体重105kgの金田は本来はガードの選手だが、この試合は左タックルで先発。関学のDL(ディフェンスライン)との戦いに苦しんでいたが、ナイスブロックでRBを走らせたシーンもあった。「スピード、フィジカル全部で負けたなと思いました。準備はしてきたんですけど、力の差は感じました」。金田は関学戦の直後、そう振り返った。

無理もない。金田はフットボールを始めて2年ちょっと。しかもOLになったのは去年の夏からだ。「入部してすぐDLになって、1年目はほんとに基礎的な練習だけで、2年目はJV戦に出始めたんですけど、いい結果を残せませんでした。去年の夏合宿からOLになって、3年になって試合に出させてもらうようになってから、フットボールの本当の面白さに気づいたような気がします」
早稲田進学と甲子園出場を狙って佐賀へ
東京で生まれ育ち、高3までずっと野球に打ち込んできた。目黒西リトルシニア(当時)でプレーしていた中2の夏、甲子園に初出場を果たした学校に興味を持った。佐賀県唐津市にある早稲田佐賀高校。「大学も早稲田に行けるし、甲子園も佐賀なら結構行きやすい。どっちにも魅力を感じました。どっちもダメだったんですけどね」。自分でオチをつけて笑った。

専願で受験して合格し、唐津へ。寮は1年生が4人部屋で、2年生からは個室になる。毎日の学習時間は眠気との闘いだった。金田と同じく関東から来ている生徒も結構いて、九州出身の生徒が大半という訳ではなかった。「もともと九州弁の子がだんだん標準語になっていくのが面白かったです」
野球のポジションはサードと「たまに」ピッチャーで、高2からベンチ入りした。右のオーバースローで最速は135キロの自称「技巧派」。カーブ、スライダー、スプリット、チェンジアップを操った。コロナ禍で2年の夏は甲子園をかけた戦いがなくなり、3年夏の佐賀大会は初戦の2回戦で唐津東に7-3で勝った。金田は7番サードで先発し、3打数無安打。続く3回戦は伊万里と。この日はスタメンを外れ、サードの守備から入った。2打数無安打、1三振の記録が残る。1-6で敗れ、金田の代の高校野球が終わった。

3年の12月に早稲田大学へ上がれるかどうかが決まる。前述のように金田は東京の両親に朗報を届けられず、一般受験に切り替えたが不合格。実家に戻って浪人した。1年後も早稲田には届かず、法政大学経営学部に進むことになった。
花巻東野球部出身のDLとぶつかり合った関学戦
いま法政オレンジのキャプテンを務めるDL矢満田衛良(やまだ・えいすけ、4年、法政二)は金田の小、中学校の同級生だった。「法政に行くよ」と連絡したところ、「一回アメフトの練習見においでよ」という話になった。そこで初めて甲子園ボウルの存在を知る。「これはもう、やるしかないな」。こうして金田のフットボール人生が始まった。

高3のころは体重が80kgぐらいだった。浪人中に少し太ったため「やせなきゃな」と思っていたが、そうもいかなくなった。入部してDLになり、ある意味「大きいことが正義」の世界に飛び込んでしまった。ただ、金田はたくさんごはんを食べることに関しては絶好の環境にいた。両親が品川と六本木で焼き肉店を営んでいる。「僕の体の7割はカルビでできてるかもしれないっす」と笑う。大好きなカルビをのせて、白米をかき込んだ。冷麺やビビンバも好きで、おいしく順調に増量できた。何ともうらやましい。いま105kgで、あと5kgは増やすそうだ。
先日の関学戦では左タックルに入り、62番のDLと何度もぶつかった。試合後の金田に「あの62番が花巻東の野球部だった八木(駿太朗)君やで」と伝えると「ええーっ、あの子がそうなんですか!!」と驚きを隠さなかった。「花巻東の子がいるのは知ってたけど、まさかずっと当たってた子とは……。デカくてやりにくかったです」

今年は自分が感動を呼び起こす側に
OLのやりがいを感じるのはどんなときか、金田に尋ねた。「パスプロでビシッと止めてパスが決まったり、ブロックしてQBやバックを走らせたり。そうやって点を取ったときの達成感がすごいです。チーム一丸っていうのを感じられるのが、ディフェンスにはないところかなと思います」
昨年は全日本大学選手権準決勝で前評判を覆し、関学の甲子園ボウル7連覇を阻んだ。「心のどこかで『ほんとに勝てるのか』という不安があったんですけど、勝って感動しました。試合に出てたみんながカッコよくて」。今年は自分が感動を呼び起こす側に立つつもりだ。過去2年連続でチームは甲子園ボウルに進んだ。ずっと憧れてきた場所に足を踏み入れられたのはよかったが、あの芝の上で暴れたい思いは募るばかりだ。「今年は自分が甲子園のフィールドに立って、チームを勝たせたい」。66番はそう誓う。
そして、かつて目指していた早稲田との対戦も待ち遠しい。「いやもう、気合が入りますね。楽しみです」。3年目に入ったフットボール人生、ようやく晴れ舞台が近づいてきた。

