全日本大学駅伝関東地区選考会を西村菜那子が振り返る 本戦は「型破り」な走りに期待

みなさんこんにちは! 先月5月25日には、第57回全日本大学駅伝関東地区選考会が、レモンガススタジアム平塚(神奈川)で開催されました。時折激しい雨が打ち付ける天候となりましたが、伊勢路への切符をつかみ取るため、今年も熾烈(しれつ)な争いが繰り広げられました。
前回のシード落ちから奮起した中央大学の選手たち
トップ通過を果たしたのは、圧倒的な力を見せた中央大学でした。1組で田原琥太郎選手(2年、西条農業)と佐藤大介選手(2年、埼玉栄)が2、3着に入り、好調な滑り出しを見せると、その後も勢いが止まることはなく、2組で主将の吉居駿恭選手(4年、仙台育英)がトップを獲得。エースとしての役割を完璧にこなしました。最終4組でも溜池一太選手(4年、洛南)が日本人トップとなる組4着となり、チーム全体としては2位に約1分の差をつけました。

昨年の全日本大学駅伝では12位に終わり、4大会ぶりにシード権を逃してしまった中央大学。藤原正和監督は結果を受け、特に当時の4年生に対して活を入れたそうです。具体的には「4年生が甘いからこういう成績とチームの状況になっている。4年生が奮起しないとチームの状況は良くならないぞ」と指摘されたとのこと。昨年11月23日に開催されたMARCH対抗戦2024で、藤原監督に取材させていただいた際、監督本人も「厳しめに言った」とおっしゃっていました。
あれから約半年が経ち、まずは伊勢路で雪辱を果たすための第一歩を踏み出しました。國學院大學、駒澤大学、青山学院大学、早稲田大学など、強豪ひしめく大学駅伝界で、伊勢路本戦では優勝争いに加わる可能性があるのではないかと、私自身も楽しみにしています。

2年生コンビが勢いを加速させた大東文化大学
中央大学に続く2位通過となったのが、大東文化大学でした。今年の箱根駅伝は19位と苦しい結果になりましたが、全日本の関東地区選考会では全員が安定したレースを展開し、見事に4大会連続となる本戦出場を決めました。
中でも印象に残ったのは3組に出場した大濱逞真選手(2年、仙台育英)と中澤真大選手(2年、埼玉栄)の2年生コンビです。
終始、集団を引っ張っていた中央大の藤田大智選手(3年、西脇工業)が残り600mでギアを上げ、このままトップでゴールするかと思われた矢先、ラスト100mの直線で強烈なスパートを放った大濱選手が、逆転勝ちで組1着をつかみました。中澤選手も組3着で続き、チームの勢いをさらに加速させました。

大東文化大は関東地区選考会を走った8選手のうち、2年生が4人、1年生が1人。下級生が過半数を占める布陣で挑みました。
そんな中、本戦では上級生でエース格の一人、棟方一楽選手(かずら、3年、弘前実業)の走りに注目しています。昨年11月17日に開催された上尾シティハーフマラソンでは、U20日本記録を3秒更新する1時間01分38秒の走りで優勝を果たしました。
レースが終わった後、真名子圭監督に棟方選手の走りの特徴を伺ったところ、「天然で突拍子もないことをする可能性がある」と話されていました。上尾ハーフの走りは、監督も良い意味で予想しておらず、信じられない走りだったそうです。
今回の関東地区選考会で棟方選手は最終4組に出場し、組17着。それでも10000mを28分35秒80にまとめる底力を発揮しました。本戦では見る側をワクワクさせてくれるような、型にとらわれない走りを期待したいです。

今でも想像できない、東洋大学がいない全日本
そしてもう1校、強く記憶に残ったのは名門の東洋大学でした。
今年の箱根駅伝では総合9位に入り、更新中では最長となる20年連続のシード権を獲得。毎年選手が入れ替わり、戦力が目まぐるしく変わる大学駅伝界で、長年安定した成績を残し続けてきました。しかし今年の全日本大学駅伝は、2007年の第39回大会以来、18大会ぶりに伊勢路出場を逃す形となってしまいました。
2年時に箱根駅伝10区区間賞、今年は4区3位と力を発揮してきた岸本遼太郎選手(4年、高知農業)がエントリーから外れるなど、選考会の前から不安要素があったものの、私としては「東洋大学なら最終的に踏みとどまってくれるだろう」と期待を寄せていました。今でも東洋大学のいない伊勢路が想像できません。
上位7校が全日本への切符をつかむ中、8位となった東洋大学の記録は3時間53分12秒19。このタイムは前回トップ通過を果たした東海大学の3時間55分28秒21を上回っています。暑さ対策のため、選考会が昨年から約1カ月前倒しとなった影響もあるでしょう。加えて大学陸上界のレベルが年々高くなっていることを実感しています。今年の本戦も、観戦がより楽しみになりました。

関東地区選考会は終了しましたが、まだまだ地区選考会は続きます。どの大学が伊勢路への切符をつかむのか。最後まで注目していきたいと思います!
