名古屋大学がトップ通過で2大会ぶり伊勢路 河﨑憲祐は東大の箱根ランナーと切磋琢磨

第57回全日本大学駅伝対校選手権大会 東海地区選考会
6月21日@マルヤス岡崎龍北スタジアム(愛知)
1位 名古屋大学 4時間15分09秒24
2位 岐阜協立大学 4時間15分51秒28
----------ここまで本戦出場------------
3位 皇學館大学 4時間16分45秒39
4位 愛知工業大学 4時間18分02秒58
5位 中京大学 4時間18分03秒24
6位 三重大学 4時間25分57秒34
7位 静岡大学 4時間32分16秒02
8位 至学館大学 4時間37分36秒73
9位 日本福祉大学 4時間41分20秒69
10位 愛知大学 4時間47分34秒52
11位 中部大学 4時間48分35秒33
12位 東海学園大学 5時間02分09秒09
南山大学、愛知教育大学、名古屋工業大学、名城大学は途中棄権者や欠場者のため、選考外
6月21日に開催された全日本大学駅伝の東海地区選考会で、名古屋大学が2大会ぶり17回目の本戦出場をトップ通過で決めた。これまでに4度、東海学連選抜の一員などとして伊勢路を走ってきた河﨑憲祐(院2年、大津緑洋)にとっては最後の全日本。チームは河﨑に頼りすぎる必要がないほど、地力がついてきた。
1組・吉田和輝が「強み」のラストスパートを発揮
東海地区選考会は関東地区と同じく、当日の出走者は8人。その合計タイムで争われるだけに、誰か一人でもゴールできなかったら選考外になる。まだ暑さが残る午後4時半スタートだった1組は、1000mを3分20秒ほどで進むスローペースとなった。

名古屋大は小川海里(院1年、津西)と吉田和輝(2年、北野)がエントリー。8000m付近で先頭集団は9人となり、小川は真ん中付近、吉田は集団の最後方につけた。残り1000mあたりで皇學館大学の塩見昊瑛(2年、鎮西学院)がロングスパート。離されまいと小川が食らいつき、吉田はラスト1周で一気に前をうかがった。吉田は2着まで順位を上げてゴール。小川は組5着だった。
「ラスト400mが僕の強みです。それまでは後ろで力をためておこうと思っていました。今回のレースでは、それが発揮できたかなと思います」と吉田。先頭集団の前の方にいると、ペースが変動したときの対応で足を使ってしまう可能性がある。後方で様子をうかがっていたことが、うまくはまった。この快走には河﨑も「あれはびっくりでした」と驚いていた。

暑さで体を疲れさせないよう「勉強場所から工夫」
チームは昨年、脱水症状による棄権者が出てしまった影響で、2大会連続の伊勢路を逃してしまった。当時の悔しさを今年にどう生かしているのか、吉田に尋ねると、名古屋大ならではの対策を教えてくれた。
「学生は図書館で勉強することが多くて、そこは結構広いんです。冷房の数も限られているので、効きやすいところと効きにくいところがある。じかに当たるのは良くないんですけど、暑さで体に疲れをためないように、勉強場所から工夫しています」。加えてレース当日の気温が高くなることは、前の週から分かっていた。「暑い時間帯に給水を取りながら走って体の中の血液を増やし、暑さに体を慣らしてきました」
名古屋大は、2組も外さない走りが光った。岐阜協立大学、皇學館大、中京大学、愛知工業大学を合わせた5校の10選手で集団を形成し、浅野稜太(4年、菊里)が組7着、松村公平(院1年、生野)が組8着でゴール。2組を終えた時点でトップの岐阜協立大と2秒96差の暫定2位。ただ暫定3位の中京大とは16秒29差で、まだまだ気が抜けない状況は続いた。

3組の長距離パート長・加藤太一が意地のラスト1周
最終4組を走る河﨑たちにいい形でつなぐべく、流れを持ってくる走りを披露したのが、3組の吉原諒(院1年、旭丘)と加藤太一(4年、千種)だった。1000mが3分03秒ほどのペースに対し、2人は先頭集団の後方で安定したピッチを刻んだ。レースの中盤以降、先頭集団は4人に絞られ、吉原は入っていたものの、加藤は遅れ始めていた。しかし、ここから今季の長距離パート長を務める加藤が意地を見せる。ラスト1周で組4着まで上げ、組3着だった吉原に続いてフィニッシュした。
名古屋大は例年、パート長が中心となって選考会の組順や駅伝の出走順のたたき台を作り、選手たちで話し合って決める。「選考会の3、4組は涼しくなるので、速いレースになる可能性が高い。『そこに対応できる選手を』ということと、他のチームとは4組で『エース対決』になることが多いので、うちの中でも1番、2番の選手を配置しようとなりました」。最終4組は河﨑と阿部祥典(院1年、基町)に託された。

「2枠ある中で、3位とはかなりの差があって、1位とは数秒差。ここは組1着を取って、いい気持ちで伊勢路に臨むのが良いかなと思っていました」。外さなければ全日本の舞台が見えてくるという状況でも、河﨑は守りに入らなかった。
3分を少し上回るペースで周回を重ね、4000m通過時点では先頭に立った。トラックの周りでは、すでに走り終えた選手たちを含む仲間が声をからし、「音圧が耳の鼓膜にまで届いてきたので『すごいな』と思いながら走っていました」と河﨑。レース中盤は声援に親指を立てて応える様子も見られた。愛知工業大の岩田玄弥(3年、津島東)に組トップは譲ったものの、両腕を上げながら2着でゴール。組8着で戻ってきた阿部とともに、レース後は応援してくれたチームメートたちとタッチを交わした。

名古屋に戻ってきたときに仲間の成長を実感
修士2年の河﨑は昨年の10月ごろから東京で暮らしており、試合の際など1、2カ月に1回ほどペースで名古屋に戻っているという。在京中は、年始の箱根駅伝で関東学生連合チームの8区を走った東京大学の秋吉拓真(4年、六甲学院)や昨年度までは東京大学大学院に在籍していた同9区の古川大晃と一緒に練習することも多かった。「あと、同学年に本多(健亮、麻布)という選手もいて、走力がある選手たちと切磋琢磨(せっさたくま)できています」と手応えを感じている。
名古屋に戻ってきたときには、チームの成長を感じてきた。「上の学年になるにつれて、『背負いすぎず、自分の力を出すこと』への意識が強くなっている感じがします。そういったところが、今回のような安定感のある走りにつながったのかなと。もう一つは吉田のような下級生の突き上げですね。バランスの良いチームになってきていると感じています」

一昨年は11大会ぶりにチームで襷(たすき)をつないだ。学連選抜で走るのとは、意味合いがまったく異なる。「2年前に僕は2区を走って、結構外してしまったんです(区間21位)。僕にとってはラストなので、もう1回チームで伊勢路を踏みしめたいという思いと、リベンジしたいという両方の思いがあります」
狙うは、東海地区に再び複数の出場枠をもたらすこと。チームも自身もレベルが上がっていることを伊勢路で証明してみせる。
