陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

駒澤大、東洋大、中央学院大12選手が10000m28分台「あおもりディスタンス」

10000m最終3組の先頭集団、右からムトゥク選手、安原選手、緒方選手、市川選手(提供・@runrun_aoneco)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は6月22日に開催されました「あおもりディスタンスチャレンジ記録会」のお話です。10000mの最終組では12人の選手が28分台で走破。私、M高史は場内MCを務めさせていただきましたので、実況リポートいたします。

強化期間の前に、少しでも涼しい環境で挑戦させてあげたい

全国的に蒸し暑い日が続く中、「夏の強化期間に入る前に、10000mの記録を出しておきたい」「選手に少しでも涼しい環境で記録に挑戦させてあげたい」という各校の思いに応えるような形で開催されました。関東からは駒澤大学、國學院大學、創価大学、東洋大学、立教大学、中央学院大学、法政大学、山梨学院大学、大東文化大学、国士舘大学、関東学院大学、上武大学、平成国際大学、拓殖大学の14校が参戦しました。

会場となった新青森県総合運動公園陸上競技場(カクヒログループアスレチックスタジアム)は山に近いということもあって、青森市街地に比べると、少し気温が下がるそうです。天候は小雨で、傘がいらなかったり、また少し降り出したりといった空模様でした。気温は20度。全国各地で暑さが続く中、半袖でじっとしていると肌寒いくらいのコンディションに、選手の皆さんからは「涼しいですね、全然違いますね」といった声が聞かれました。

この日は10000mのほか、3000mや5000mが開催され、M高史は青森陸上競技協会の今泉慎吾さんとアナウンスと実況をご一緒させていただきました。

青森陸協の今泉慎吾さんと実況席でご一緒させていただきました!

3000mと5000mのレースも開催

3000mには青森山田高校、一関学院高校(岩手)、花巻東高校(岩手)といった強豪校が出場。インターハイ出場を決めている一関学院高校の森松彩夢選手(3年)と小菅誠太選手(2年)が、U20日本選手権3000mの標準記録、8分25秒00の突破を目指して出場しました。青森山田高校の山本悠悟選手(3年)が1000mまでペースメイク。そこから森松選手と小菅選手が引っ張り合ってさらにペースアップし、森松選手が8分20秒55でトップ。2着には小菅選手が8分21秒45で続き、一関学院高校勢のワンツーフィニッシュとなりました。

森松選手は昨年の全国高校駅伝1区11位、今年1月の都道府県駅伝1区8位といずれも好走。ロードや上り坂が得意で、持ちタイム以上の強さを発揮する選手です。

3着には花巻東高校の小原健太郎選手(1年)が8分30秒79の自己ベストで続きました。小原選手は昨年、全中3000mで3位に入っており、ダイナミックで伸びやかなストライドが魅力。とにかく陸上が大好きで、研究熱心な選手です。

森松彩夢選手は以前、取材でもお世話になりました(撮影・M高史)

続く5000mは青森山田高校のジェームス・カルリ選手(3年)がペースメーカーを務め、1周400mを68秒の設定で引っ張りました。このペースで刻むと1000mが2分50秒、5000mが14分10秒となります。このペースに果敢に挑んだのが地元出身の国士舘大学・田中翔選手(1年、青森山田)。後半に少しペースを落としたものの、14分25秒13をマークし、トップでフィニッシュしました。

10000mは1、2組目から自己ベスト

10000mは3組に分かれて行われました。1組目は拓殖大学のラファエル・ロンギサ選手(3年、イリギザーティ)が29分40秒から50秒という設定でペースメイク。山梨学院大学の綱本幸栄選手(2年、倉吉東)がロンギサ選手についていきました。後方からは同じく山梨学院大の友村輝選手(4年、世羅)が猛追し、記録とともに勝負の行方も熱い展開に。ロンギサ選手に続いて、国士舘大学の今堀匡道選手(2年、洛北)が29分53秒71、綱本選手が29分54秒78、友村選手は29分57秒37。友村選手はそれまでの自己記録31分01秒から、一気に29分台へと突入。チームの関係者からも熱い応援を受けていました。

10000m1組は拓殖大学のロンギサ選手がペースメーカーを務めました(提供・青森山田高校陸上競技部)

2組目のペースメーカーを務めたのは、創価大の織橋巧選手(3年、中京)。設定が29分10秒ということで、2分55秒前後でペースを刻みました。3000mを8分45秒、5000mを14分36秒で通過し、徐々に集団の人数が絞られていく中、創価大の山瀬美大選手(2年、熊本工業)が織橋選手についていきました。

織橋選手が8000mを23分24秒で走り、ペースメイクを終えた後は山瀬選手が単独走。8000mから9000mにかけて2分59秒と少しペースを落としましたが、ラスト1000mは2分53秒まで戻して29分16秒47でトップ。2着、3着は熾烈(しれつ)な争いとなり、ラストスパートで追い込んできた國學院大の永田智基選手(3年、保善)が29分20秒05で2着。冷静なレース運びから、後半も粘りの走りを見せた拓殖大の中野裕心選手(2年、倉敷)が29分20秒23で3着に入りました。永田選手、中野選手ともに自己ベスト更新です。

東洋大・酒井俊幸監督「大収穫となりました」

最終レースとなった3組目。山梨学院大の留学生2人がペースメーカーを務め、ジェームス・ムトゥク選手(4年、ンゴニ)が28分20秒から30秒の設定、ブライアン・キピエゴ選手(3年、カプカテット)が28分40秒から50秒の設定で刻みました。

5000mを14分07秒で通過し、28分台前半も見えてくる好ペースでレースが進む中、耐えられなくなってきた選手が集団から脱落していく展開に。最後までムトゥク選手についていった東洋大の緒方澪那斗選手(4年、市立船橋)が28分27秒50で自己ベストを更新し、トップでフィニッシュ。ムトゥク選手が2着で入った後、3着は東洋大の西村真周選手(4年、自由ケ丘)で28分34秒86。こちらも緒方選手に続いて自己ベストを更新しました。全日本大学駅伝の出場を逃した東洋大ですが、「悔しさを晴らそう」という気持ちのこもった走りが伝わってきました。

東洋大の酒井俊幸監督も「大収穫となりました。開催していただいた青森陸協の方々に感謝です。今後はさらに地力をつけていきたいです」とお話しされました。

緒方選手はムトゥク選手に食らいつき、28分27秒50で自己ベストを更新(提供・@runrun_aoneco)

7選手が出場した駒澤大学は、5人の選手が自己ベストを更新。安原海晴選手(3年、滋賀学園)が6着で28分45秒66、牟田凜太選手(1年、鎮西学院)が7着で28分54秒11、菅谷希弥選手(2年、駒大高)が9着で28分55秒55、帰山侑大選手(4年、樹徳)が11着で28分58秒07と4人が28分台。大幅更新とはいかなかったこともあってか、選手の皆さんは自己記録を更新したうれしさより「もっと走れた」という悔しさが伝わってくる表情でした。

序盤から積極的にレースを進め、5000mを14分07秒で通過した安原選手をはじめ、牟田凜太選手、菅谷選手も積極的にレースを進めました。後半にややペースを落としましたが、夏合宿を経て、秋冬に大きく飛躍しそうな予感。藤田敦史監督はレースで出た課題や今後のコンディショニング、練習計画などを選手たちに説明し、きめ細かいフォローをされていました。

中央学院大は近田陽路選手(4年、豊川)が28分43秒63、市川大世選手(3年、巨摩)が28分55秒46、前原颯斗選手(3年、北山)が28分59秒30と3人が28分台。エースだった吉田礼志選手(現・Honda)は卒業しましたが、全日本大学駅伝関東地区選考会では総合6位となり、3大会ぶりの本戦出場を決めるなど、チームの総合力が高まってきています。

雨の中、総勢12人の選手が28分台をマークしました(提供・@runrun_aoneco)

おもてなしや熱意があふれる大会に!

ホームストレートやバックストレートには応援エリアがあり、選手の息づかいなどを間近で感じながら応援することができます。また「遠方で応援に行けないけど、レースが気になる!」というお声がSNSで多かったこともあり、後半のレースは急きょ、青森山田高校のInstagramアカウントでライブ配信を行うなど、青森陸協の皆さんによるおもてなしや熱意があふれた大会となりました。

M高史の陸上まるかじり

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