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筑波大・井伊拓海 SR渋谷ユース出身、初めて知った応援してくれる仲間のありがたさ

サンロッカーズ渋谷のユースから筑波大にやってきたルーキー・井伊拓海(すべて撮影・青木美帆)

身長197cm、体重98kgという恵まれた体格。柔らかさと力強さを兼ね備えた動き。精度の高い3ポイントシュート。筑波大学の井伊拓海(1年、早稲田実業)は、デビュー戦となった関東大学新人戦でポテンシャルを発揮し、若手の登竜門「ウィリアムズ・ジョーンズカップ」に向けた代表合宿にも招集された、今後が楽しみな選手だ。

新人戦の準決勝からスタートで出場

3月にケガを負った影響も重なり、5月の関東大学選手権(スプリングトーナメント)はエントリー外だった。新人戦の序盤はベンチからの起用だったが、準決勝の白鷗大学戦、3位決定戦の中央大学戦はグビノグン デロック(1年、正智深谷)の負傷を受けて先発出場した。

「得点の中心だったデロックが抜けたことで、『自分が点を取らなきゃ』という意識でプレーしていましたが、結構疲労がありました。今までよりも高い強度でやらなきゃいけないと思いながらプレーしていましたが、少し運動量が落ちてしまったなと感じる場面もあったので、もっと体を鍛えて、大学バスケに適応しなきゃいけないなと感じました」

3位決定戦を戦い終えた後、井伊はこのように大会を振り返った。

3位決定戦の中央大学戦、「自分が点を取らなきゃ」という意識が強かった

Bリーグユースと部活動の違いを実感

井伊は中学、高校とBリーグ1部・サンロッカーズ渋谷の下部組織に所属した。ユース制度がサッカーほどは成熟していないバスケットボール界において、ユースから国内指折りの強豪大学チームに進んだ井伊は、パイオニア的な存在だ。系列校である早稲田大学を含め、いくつかの選択肢を検討した後、自身が理想とする長身オールラウンダーを多く輩出している筑波大への進学を決めた。

Bリーグのユースチームと部活動である大学の違いについて問うと、井伊は次のように答えた。

「ディフェンスをハードにやるのは、部活もユースもあまり変わらないと思うんですが、オフェンスに関してはユースの方が『戦術色が強い』という印象があります。高校の部活でやってきた人がほとんどの大学トップレベルの選手は、シンプルな1対1の強さや能力が違うと感じました」

大学バスケの世界に飛び込み、シンプルな1対1の強さを実感している

SR渋谷U18で井伊を指導した森茂達雄コーチは、2年前の取材で、ユースは個々のスキルやシステマティックなハーフコートバスケに注力する傾向があるため、運動強度やスタミナ、身体能力がものを言うオールコートバスケや1対1では高校の部活に一歩引けを取るところがあると話していた。

井伊は高さの面でも「部活とユースの違い」を実感した。BリーグU18チームには、身長が195cmを超える大型選手が井伊以外におらず、高校の部活では当たり前の存在になったアフリカ系留学生もいない。白鷗大戦では、マッチアップしたウィリアムスショーン莉音(2年、仙台大明成)の高さと腕の長さに戸惑い、苦しんだ。

「莉音さんのようなサイズ感の選手と対戦するのは初めて。ドライブからの得点や外からのプルアップは通用したかなと思っているんですが、高さが気になってポストでシュートを決めきれませんでした。インサイドでのフィジカルや手の長さで、向こうに少し分があったのかなというふうに思います」

ユース時代は195cmを超える大型選手が自分以外にいなかったという

「ウインターカップで活躍した選手とやり合える」と証明を

また、SR渋谷ユースは1学年最大6人という少数精鋭。60人のプレーヤーを擁する筑波大に来たことで、応援してくれる仲間のありがたさを知ったという。「応援を受けながらのプレーは初めてだったので、本当に力になるなと思いました。感謝したいです」

現在はセンターポジションを主戦場としつつ、時にアウトサイドに飛び出すというプレースタイルだが、これからはポジションを上げていき、ボールハンドラーとしてプレーしたいという夢を描いている。これを目指すには当然、たくさんのタスク遂行が必要不可欠。今大会で得た課題は、フィニッシュの力強さ、3ポイントシュートの試投数アップ、パスの判断、アウトサイドプレーヤーへのディフェンスなど山積みだ。

「ユースよりも高校の部活の方が注目度はあると思うので、『ユースから出てきた選手もウインターカップで活躍した選手としっかりやり合えるんだぞ』というところを見せていきたいって思います」

ユース出身として培ってきた技術とプライドを胸に抱き、井伊は自らの理想像に向かって歩み続ける。

力を与えてくれる仲間たちとともに、自らの理想へと突き進む

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