明治大学WTB海老澤琥珀　高校代表漏れをバネに走り続け、U20代表での飛躍狙う

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昨季の大学ラグビーシーンで早稲田大ラグビー部WTB矢崎由高（桐蔭学園）とともに大きなインパクトを残した1年生ランナーがいる。創部100周年を迎えていた明治大ラグビー部のWTB海老澤琥珀（報徳学園）だ。身長こそ173cmと決して大きくはないが、昨年11月の慶應義塾大学戦で11番を背負うと、そこからチームのエース格のトライゲッターとして存在感を示し、大学選手権では3試合連続トライを挙げた。昨季、高校日本代表に選ばれなかった悔しさを胸に、U20日本代表に選ばれるため、研鑽（けんさん）を積んでいる。

昨季の活躍は「通過点。油断せず努力」

海老澤は、大学ルーキーイヤーとなった昨季に関して、「大学選手権の決勝などに出させていただいて自信はついたが、まだ通過点です。いい1年生も入ってくるので、油断せずに努力して上にいけたら」と笑顔で振り返った。

昨年3月、明治大に進学した選手が10人参加した高校日本代表のアイルランド遠征に参加することはかなわなかった。だからこそ海老澤は、「高校のときに（高校日本代表に）外れてしまったので、その悔しさはしっかり晴らしたい。U20日本代表に入りたい気持ちはある」と語気を強めた。

今季のU20日本代表候補はFWのみ2月から始動しており、BKも含めて3月から本格スタート。3月にはいるとリーグワンチームと試合を重ねて、4月にはU20日本代表を中心に、大学生数人も加えて「JAPAN　XV」としてパシフィックチャレンジに参戦。その後も海外遠征などを経て、最終的には7月にスコットランドで開催される国際大会で優勝し、1部に昇格することが目標だ。

エディーHCも「いい脚を持っている」

U20日本代表候補合宿には、1月に就任したばかりの日本代表のエディー・ジョーンズHCも視察に訪れた。ジョーンズHCは海老澤について「速くて、いい脚を持っていて、性格も活発で明るい。彼はいい選手になる可能性がある」と高く評価し、合宿中に声をかけられたという。海老澤は「ワールドカップで南アフリカに勝った試合は見ていたので、その監督がいるのはすごい。名前を覚えてくださっていました！」と声を弾ませた。

3月の合宿では、U20日本代表候補の1人として、日本代表経験者2人がいた埼玉ワイルドナイツと練習試合で対戦し、大敗した。海老澤は「大学レベルとは違うスピード感とフィジカルで、簡単にテンポを上げさせてくれなかった。みんなこのレベルで試合をしたら海外のフィジカルにも慣れて、いい経験になるかな」と前を向いた。

中学高校で奔放さと快速磨く

海老澤は東京都世田谷区出身。ラグビーは小学校4年、9歳の頃に、友人に誘われて世田谷区ラグビースクールで本格的に始めた。中学、高校、大学と同じチームでプレーし続けているSO伊藤利江人と出会ったのも、このスクールだった。中学校は公立中学校ながら強豪だった世田谷区立千歳中学校に進学した。50mは6.1秒。気づいたときには足が速いと周りから言われたという。

中学校では自由奔放なラグビーの下、関東大会では1位、全国大会では4位に入った。「中学時代は、背番号だけ2番（＝HO）で、スクラムとスローイングだけをやってずっとWTBの位置にいました（笑）。中学の長島章先生（現国際武道大ラグビー部監督）が面白いと認めてくれたので良かったです！」

伊藤とともに親元を離れて報徳学園（兵庫）に進学し、高校から本格的にWTBに転向した。高校2年時からレギュラーとなり、3年時にはSO伊藤とともに春の選抜、そして夏の高校セブンズ大会を制した。花園は惜しくも決勝戦で東福岡に負けて準優勝だったが、快足ランナーとして大きなインパクトを残した。

昨秋レギュラー奪取「明治にコハクあり」

大学は、東京に戻ってきたかったこと、練習グラウンドが自転車で30分ほどと実家から近かったこと、昔からプレースタイルが好きだったことなどもあり、明治大への進学を決めた。「明治大に高校代表がいっぱいいたので、その悔しさで、最初に紫紺を着てやる、という気持ちになりましたね！」

高校代表組よりも早くから練習に参加していた海老澤は、昨年5月、春季大会の1試合目で、見事に紫紺のジャージーに袖を通した。しかし、夏合宿では先輩選手たちの壁の前に、なかなかチャンスをつかむことができなかった。

それでも、背中などを中心にフィジカルトレーニングを重ねた。体重は7kg増えて82kgとなったが、「スピードは落ちていない」と感じた。対抗戦の序盤は23番をつけていたが、先輩WTBがケガをしたことで先発の座が回ってきた。「あまり自分の良さを出し切れていなかった中で、コーチ陣がチャンスをくれたおかげです。感謝しています」

結局、対抗戦後半から大学選手権決勝まで6試合連続で「11」番を背負い、優勝できなかったが4トライを挙げた。「明治にコハクあり」を強く印象づけたことで、U20日本代表候補選出につながった。

憧れはコルビ　世界のサイズにキレで勝負

自らの武器を「運動量。いろんなところに顔を出してアタックするのが持ち味」と話す。憧れの選手は、身長172cmながら世界的なWTBの南アフリカ代表チェスリン・コルビ（東京サンゴリアス）だ。「コルビはボールを持っていないときもめちゃくちゃ働いていて献身的です。それを見習って、試合で常に走り続けてチャンスをいただけたけたらいい」

趣味は釣り。好きな言葉は「首尾一貫」だ。WTB海老澤は「世界は大きな選手が多いので、真っ正面に行かずキレで勝負して、ディフェンスでは低さで勝負したい。ボールを持ったら100％ゲインするなど、チームに求められることをやって、しっかりU20日本代表に選ばれたい」と意気込んでいる。

昨年は袖を通せなかった桜のジャージーを今年こそ身にまとい、世界の舞台で躍動して、「コハク」の名を世界に轟（とどろ）かせたい。