高校日本一を目指す真冬の熱き戦いが12月23日に開幕する(写真は全て前回大会のもの) ©JBA
12月23~29日、バスケットボールの第73回全国高校選手権大会(SoftBank ウインターカップ2020)が東京体育館と東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで行われる。今年は新型コロナウイルスの影響を受けてインターハイと国体が中止となったため、ウインターカップが最初で最後の全国大会となる。今、バスケができることへの感謝を胸に、高校生たちは特別な大会に挑む。開幕に先立ち、今大会の注目選手を紹介する。
“堅守速攻”で3連覇へ - 福岡第一・ハーパージャン・ローレンス・ジュニア
ウインターカップ3連覇を狙う福岡第一(福岡)。河村勇輝(現・東海大学1年)ら昨年までの主力が抜けた中、今年のチームを象徴する存在と言えるのが3年生のハーパージャン・ローレンス・ジュニアだ。
ハーパージャンは底知れぬ身体能力、長いウイングスパン、強靭(きょうじん)な肉体を存分に生かしてコート狭しと駆け回るポイントガード。ダイナミックかつ切れ味あるドライブでリングへ突進するその推進力は、時に味方ですら置き去りにするほど突出している。また、ディフェンス力にも自信を持っており、相手の懐に入るような守備からチームの代名詞である“堅守速攻”を演出する。
福岡県予選では前回のウインターカップ決勝で相まみえた福岡大大濠(福岡)との対戦も制し、無敗で勝ち上がっている。ウインターカップでは過去2度、決勝の空気を味わった。自身の経験も生かし、3連覇へ挑む。
No.1ポイントガードの意地を見せられるか - 東山・米須玲音
2018年のウインターカップ1回戦・四日市工(三重)戦で17点をマークし、鮮烈なデビュー戦を飾った。過去2大会で見せた王者・福岡第一の河村勇輝とのマッチアップも、東山(京都)3年生の米須玲音(よねす・れおと)の存在を広く知らしめた。
広い視野から繰り出すピンポイントパスで得点を演出したかと思えば、状況を見極めて自らもゴールへアタックし試合を支配する。米須は1年生の頃から正司令塔を務め、前回大会ではチームをベスト4に導いている。今年のNo.1ポイントガードと目されている選手のひとりだが、京都府予選ではライバル・洛南(京都)に敗戦。その称号獲得に暗雲が立ち込めている。
米須は今年、司令塔だけではなく主将としてもチームを引っ張る責任を背負った。全国制覇へのラストチャンスへ向け、敗戦からどうチームと自分自身を立て直してきたか。初戦から目が離せない。
身長を生かした多彩な攻撃に注目 - 関大北陽・金近廉
関大北陽(大阪)3年生の金近廉(かねちか・れん)は、身長196cmながらオールラウンドにプレーできる将来有望選手のひとり。チーム最長身ということもありインサイドでプレーすることが多いが、しなやかな身のこなしからドライブ、ミドルシュートなどでも得点を量産。3ポイントも自身の強みとしており、彼を止めることは全国の猛者たちでさえも決して容易ではない。また、渡辺真二コーチが「すごいプレーのひとつ」と評するブロックショットは、留学生相手でもお構いなしに浴びせる。
2019年度男子U16日本代表では主将としてチームを牽引(けんいん)。前回のウインターカップは3年生が主体だったこともあり、金近の経験がチームに与える影響は大きいだろう。チーム内でもリーダーシップも発揮し、自他ともに認める攻守の柱として君臨する。
持ち前の爆発力でチームに勝利を - 開志国際・ジョーンズ大翔
非凡な得点センスで開志国際(新潟)のエースを張る攻撃型ガード。強靭なフィジカルと高い運動能力を兼ねそなえ、きれいなフォームから放たれるジャンプショットは高確率でリングを射抜く。開志国際3年生のジョーンズ大翔(たいが)は、1年生の時からスタメンの座を勝ち取り、インターハイ制覇にも貢献してきた。
ジョーンズはこれまで主にシューティングガードでプレーしてきたが、昨夏から富樫英樹コーチは彼をポイントガードでもプレーさせることを示唆。今年はトップの位置から味方に指示を送る姿も見受けられるが、他チームが最も警戒するのはジョーンズの得点力だろう。ウインターカップでは過去2年で1勝しかしておらず、冬の躍進へはジョーンズの爆発力が必要不可欠だ。
「圧倒して勝つ」を合い言葉に2連覇を - 桜花学園・江村優有
前回、桜花学園(愛知)は岐阜女子(岐阜)を破り、3年ぶり22回目の栄冠を手にした。そして今年、2連覇を目指す3年生の江村優有(えむら・ゆうあ)主将の口をついて出たのは、まさにその一戦についてだった。「13点差で勝っていたんですけど、残り時間3分くらいからペースをつかまれて点差を縮められました。その課題を改善するために、この1年、練習を積んできました」
今年はインターハイと国体が中止になり、加えて桜花学園は推薦枠でウインターカップへの出場が決まったため、愛知県予選にも出場していない。試合がない中でウインターカップを迎える不安はあるが、昨年からのスターターが3人残るチームの強みを生かし、今まで以上にゲームライクな練習を継続。持ち味であるディフェンスからのブレイクを更に強化し、課題としていたプレスディフェンス下でのボール運びも徹底的に鍛えてきた。とりわけ2年生の朝比奈あずさの成長が著しく、「ブレイクの先頭を走って点数をとってきたり、大事なところでリバウンドをとってくれたりと、とても頼もしい存在です」と江村は言う。
チームは今年、「圧倒して勝つ」を合い言葉にしている。「得点もそうなんですけど、ディフェンス面でも粘り強いディフェンスからどんどんブレイクを出していき、オフェンスでも確実に1本1本決めていく。トータルとして相手を圧倒したいです」と江村。主将として司令塔として、仲間を生かしたプレーを思い描いているが、それだけではない。「今までは自分の得点よりもアシストが多かったので、もっと点数を取りにいきます」。最後のウインターカップにかける主将の爆発力に期待したい。
去年の悔しさを胸に、打倒桜花 - 岐阜女子・佐藤果歩
2年ぶりの優勝を狙う岐阜女子3年生の佐藤果歩主将は「対戦相手をイメージして練習していますが、インターハイがなかったので、どういうチームかあんまり分からない状況です。順調に勝ち進んでいけば桜花さんと当たるので、それに向けてという感じです」。隣県のライバル桜花学園とは準決勝で顔を合わせる組み合わせになった。
前回大会の決勝はその桜花学園に67-72で敗れた。安江満夫監督は「決勝の先発で起用し、そういう悔しさを一番分かってくれているだろうとキャプテンに指名した。本人も自分の責任を感じながら頑張ってくれています」と全幅の信頼を寄せる。
佐藤は選手一人ひとりのことをしっかり見てくれる指導法や、先輩が必死にバスケに取り組む姿勢に魅力を感じ、奈良の上牧(かんまき)中からやってきた。ディフェンスを重視するチームの中で、佐藤は攻守においてバランスのとれた動きが光っていたが、主将になってからは他の選手を生かすプレーに磨きがかかった。
佐藤は「去年の悔しさを一日も忘れずに、今年はしっかりチームを引っ張って、勝利に導けるように意識してやってきた」と言う。新チームになり、桜花学園とは今年2月の東海地区新人戦で対戦したが、2点差で敗れた。春に新型コロナウイルスの感染が拡大し、奈良に戻った時には個人練習と基礎体力アップに努めた。あまり前に出て話すタイプでなかった佐藤は「先頭に立ってしっかり声を出し、周りのことをしっかり見られるようになった」と振り返る。一回り大きくなった主将が先頭に立ち、チーム3度目の頂点を目指す。
先輩方を超える記録をつくりたい - 京都精華・荻田美
前回のウインターカップで、学校史上最高の3位となった京都精華(京都)。3年生の荻田美(みゆ)主将は「先輩方を超える記録をつくりたい」と力強く宣言する。狙うは決勝、日本一だ。
新型コロナウイルスの影響で4~5月は休校になり、全体練習ができなかったが、その分、個人での練習が増え、一人ひとりのスキルアップにつなげられた。オフェンス主体だった荻田自身も、スキルアップによりガードのポジションができるようになったと振り返る。「でもチームとしての連携はまだまだで、今みんなでモチベーションを上げている状況です」と今年ならではの難しさも語る。
昨年は高橋未来(現・デンソーアイリス)が強力なリーダーシップを発揮し、コート内外でも存在感を放っていた。「高橋さんは堂々としていて、言ったことにしっかり責任を持つ方でした」。荻田は性格的にはズバズバ言えないタイプだと言いながらも、彼女の姿を見て言うべきことは言わないといけない、ということを学んだという。主将としてできるだけ声をかけ、自分のプレーで引っ張ることを心がけている。
荻田の強みは174cmの高身長を生かし、中も外もできること。ディフェンスのミスマッチをついたり、周りに合わせたアシストをしたりとオールラウンダーの働きをみせる。チームの強みは留学生のトラオレ・セトゥをはじめとして「全員が得点を取れること」だ。「攻めるバスケ」を貫き、頂点に向かって突き進む。(文・小沼克年/4years.編集部)