バスケ

関大北陽・金近廉 大型オールラウンダーが大学バスケを前にして魅せたトリプルダブル

身長196cmのオールラウンドプレーヤーとして、金近は大会前から注目されてきた(写真提供・JBA)

昨年末の高校バスケ日本一を決める「ウインターカップ」に出場した選手から、4月に大学へ進む注目のアスリートを紹介します。関西大学北陽(大阪)の金近廉(かねちか・れん)です。2回戦の福岡大学附属大濠(福岡)戦で敗れたものの、34得点12リバウンド10アシストというスタッツをたたき出し、自身初となるトリプルダブル(得点、リバウンド、アシスト、ブロックなどの3項目で2ケタの数字を挙げること)を達成しました。

196cmの長身を生かし、時にはぴょんぴょんと跳ね

このウインターカップで金近のプレーを初めて見た。「よく弾む選手だな」というのがファーストインプレッションだった。大会初日、1回戦の県立広島皆実(広島)戦。金近は思った通りのプレーができた時、ディフェンスに戻る時、仲間のナイスプレーの後などに、やたらにぴょんぴょん跳ねていたのだ。

33得点15リバウンドでチームの初戦突破に貢献した後、普段からよく跳ねるのかと尋ねてみると、金近は少し考えた後に「去年のウインターカップは初戦の入りが良くなかったので、今年は自分でそれを払拭したいと思って試合に入りました。それが思い通りにいったし、気持ちもだいぶ乗っていたので、動きにも出たのかもしれないです」と、少し照れくさそうな様子で話した。

この“ぴょんぴょん”も含め、金近はまるで彼ひとりだけが重力の影響をさほど受けていないかのように、196cmの長身を軽く、素早く、しなやかに躍動させる。登録ポジションはパワーフォワードだが、ボール運びをスムーズにこなす、細かなフェイクやステップで相手を出し抜く、的確なパスを仲間に供給するなど、プレーの幅は非常に広い。それでいて、マッチアップの相手が自分より小さければパワープレーも使えるし、豪快なダンクシュートだって決められる。

続く2回戦の福大大濠戦は序盤から外角シュートの不調に苦しんだが、ならばと、マークが集中する自分をおとりとするパスで切り抜けようとする姿勢がよく見てとれた。試合には敗れたたものの、大きくて能力の高い選手がそろう福大大濠を相手に、前述の通りトリプルダブルを成し遂げた。今年度最初で最後の全国大会で、“大会屈指の大型オールラウンダー”という前評判通りのパフォーマンスを発揮した金近は、「力の差も感じましたが、やりきったという感覚の方が強いです」と報道陣にコメントした。

U16日本代表の主将を経験して意識が変化

福大大濠戦後、大勢の記者に囲まれる金近の横で、同校の渡辺真二コーチに少し話を聞く機会を得た。金近の入学時からの成長について聞くと、渡辺コーチは「体つきはヒョロヒョロだったし、声が出せない子でね」と、隣に立つ教え子を見やりながら目を細めた。

今大会では最上級生として、金近はプレーでも声かけでもチームを支えた(写真提供・JBA)

高校生は1年どころから1試合で成長するところがあるが、それでも驚いた。最後のウインターカップを戦う金近は、大きな声と豊かな感情表現で仲間たちを引き込む素晴らしいリーダーだったからだ。「金近が変わったのは去年、U16日本代表に選ばれてからだと思います」と渡辺コーチ。名門校のスターたちを差し置いて主将を任され、一気に意識が変わった。金近は言う。

「去年のウインターカップは、スタートで出ている下級生が自分だけでした。気持ちとか精神面は3年生に任せて、お前は自分のプレーに集中しろってずっと言われていて。でも代表での経験があって、試合の時は誰よりも声をかけようと意識しています」

昨年2月の近畿新人大会は準決勝の洛南(京都)戦を欠場。「インターハイこそは」と気持ちを新たにしたところで、部活動の活動とインターハイの中止が決まった。前代未聞の事態に対し、全国の高校バスケ部員たちが心を大きく揺らしていた中、金近は「割と気持ちが切れなかったんです」と当時を振り返った。

バスケはできないけれど、その分、課題だったフィジカルの強化に思う存分取り組める。3カ月という活動休止期間を前向きにとらえた金近は、自宅で様々なトレーニングを実施し、練習再開後にコーチやチームメートを驚かせるほど体を変化させた。恵まれた体格や才能にあぐらをかくことなく、より高みを目指し続ける姿勢が、金近を大きく成長させたのだ。

活動休止期間は自分の課題と向き合う時間と考え、気持ちを切らすことなく練習を継続した(写真提供・JBA)

筑波大・三谷に「追いつきたい」

今春からは関東の強豪大に進学予定。中学2年生の時に遠征で対戦しそびれた三谷桂司朗(筑波大1年、広島皆実)とのマッチアップを楽しみにし、「三谷さんのような高確率のアウトサイドシュートを身につけて、追いつきたい」と語る。そんな金近の今後の成長が一層楽しみになる言葉を紹介して、本稿を締めくくりたい。ウインターカップ出場選手を対象とした、テレビ局のアンケート。ほとんどの選手がチームメートやプロ選手を挙げた「入れ替わってみたい選手」という問いへの回答だ。

「みんなに自分と入れ替わりたいと思われるような選手になりたい」

“みんな”にどれくらいのスケール感を込めているかは、本人のみ知るところだ。しかし、日本中、もしかしたらもっと広い世界のバスケプレーヤーを想定しているのではなかろうかと思わせるだけのポテンシャルが、金近の未来に詰まっている。

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