陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

駒澤大学OB・藤井輝監督が率いる一関学院高校 負けから学び、全国上位進出へ挑戦!

駒澤大学OBの藤井輝監督は母校・一関学院高校で指導者に。今年で就任4年目となります(2枚目を除きすべて撮影・M高史)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は一関学院高校陸上競技部のお話です。2022年に駒澤大学OBの藤井輝監督が就任。常勝軍団、駒澤イズムを知る藤井監督のご指導のもと、未来の4years.で輝く可能性を秘めた皆さんを取材させていただきました。

大学時代は箱根駅伝に4年連続で出場

藤井監督ご自身も一関学院高校の出身で、高校時代はインターハイや全国高校駅伝(以下、都大路)に出場していました。駒澤大学では箱根駅伝に4年連続で出場し、2度の総合優勝(81回大会、84回大会)メンバーになっています。ちなみに藤井さんはM高史の1学年後輩です。僕が駒澤大学で主務をしていた時に、藤井さんは箱根駅伝の6区を走っていました。6区のスタート地点となる復路の芦ノ湖で、藤井さんの付き添いをさせていただいたこともあります。

卒業後は実業団の愛三工業で競技を続け、その後は福祉のお仕事を経験されました。その後、母校の一関学院高校で監督として指導にあたっています。

藤井さん(中央)は4年生の時に副将を務め、箱根駅伝総合優勝。右は主将の安西秀幸さん

就任1年目は岩手県高校駅伝で28連覇となる優勝を果たし、都大路に出場しましたが、2年目の2023年は県高校駅伝で2位に。連覇が途切れるとともに、都大路行きも逃す形となりました。雪辱を誓った昨年は県で優勝し、都大路に戻りました。

大八木弘明総監督や藤田敦史監督のDNAを受け継ぎ、指導力を発揮されています。就任1年目には、現在駒澤大学3年の工藤信太朗選手が飛躍を遂げ、5000m13分台に突入。昨年度は当時2年の森松彩夢選手が、都大路の1区で八千代松陰高校の鈴木琉胤選手(現・早稲田大学1年)に果敢についていき、離れてからも粘りきって区間11位。チームは全員が2年生以下のメンバーながら、上位進出が見える24位でのフィニッシュとなりました。森松選手は都道府県駅伝1区でも快走。自身の5000m持ちタイムである14分15秒34を大きく上回り、5kmを13分台で通過する積極性を見せ、区間8位で襷(たすき)をつなぎました。

都大路を逃した後、藤田敦史監督と大八木弘明総監督から助言

取材では藤井輝監督とエースの森松彩夢選手、菅原颯太主将にお話を伺いました。まずは藤井監督です。ちなみに、取材日は伊那駅伝メンバー以外のタイムトライアル練習でした。「この子たちが力をつけてくればチーム全体としてもっと強くなってきます」と藤井監督は選手一人ひとりに熱い声をかけていたのが印象的でした。

――2023年に連覇が途切れたものの、1年で都大路の舞台に戻ってきました。

「思い返すとピークがずれてしまって、自分の調整が悪かったです。選手たちは悪くありません。自分のミスが一番ですし、負けたというよりは『勝たせられなかった』というのが僕の中では1年間ありました」

「駒澤大学の藤田監督に相談したところ、調整メニューのアドバイスをいただきました。すぐ切り替えて、東北大会からはその調整で走れるようになってきましたし、この1年間はずっとそのルーティンを崩さずにやってきた成果が出ました。大八木総監督からは『今回負けたけども、2回連続で負けちゃダメだぞ』と声をかけていただいたので、1年間しっかり準備してきました」

「またOBや保護者からは誰一人『なんで負けたんだ』とは言われませんでした。気持ちが楽になってやれたところが大きかったですね」

悔しさをバネに、チームは1年で都大路の舞台に戻りました

――準備の大切さと今年の都大路について。

「子どもたちには心と体の準備の話をしています。事前に1カ月の練習メニューを出して、『どこで治療院の予約を入れるか』を言われてからやるのではなく、自分で考えて準備をするように言っています。子どもたちにも『準備、準備』と言ってます。100%の準備ができれば自信がつきますし、心にも余裕ができてきます」

「子どもたちが1試合1試合やるたびに結果が出てきまして、調整方法も確立してきました。都大路は挑戦する立場ですし、指示は特に出していなくて、森松には『森松らしさを出しなさい』と言ったくらいです。トラックよりもロードに強い子ですが、全国でも積極的な走りでびっくりしました。チームとしても『2時間06分台で10番台』が目標だったので、それには少し届きませんでしたが、先が見えるレースだったかなと思います」

――駒澤大学出身の指導者が増えていますね!

「秋田工業高校の高橋正仁監督、青森山田高校の河野仁志監督は大学の先輩ということもあり、お互いによく連絡をとっています。チームの雰囲気が似てきたり、練習内容もよくかぶったりします(笑)。練習の流れや調整が似ているとすごく感じますし、設定タイムも細かく刻んでやっているのは、駒澤カラーかもしれないですね」

「またうちは12人が寮生活で、通学の子もいます。朝練は寮生も通いの子も一緒にやっています。(ちなみに寮母は藤井監督の母・妙子さんで)母も孫みたいに愛情を持って接してくれます。寮生活に関しては僕より厳しく言う時もありますね(笑)。競技の結果だけでなく、普段の姿を見て、『地域の方や学校の先生からも応援してもらえるように』と普段から口酸っぱく言っています。結局、普段の生活に自信を持てていないと、いざ大きな試合の時に、精神的なところでうまくいかないです」

常に情熱を持った指導者でいたい

――どんな指導者になっていきたいですか。

「やっぱり常に情熱を持った指導者でいたいですね。自分が情熱を持っていないと、子どもたちに伝わらないですし、子どもたちの情熱も薄くなってしまいます。情熱だけは持ち続けていきたいです」

「あとは、一番は負けて気付いたことの方が多かったです。それを早い段階で気付けたのは今の自分にとって大きいです。その時に負けてしまった3年生には申し訳なかったですが、今のチームがあるのは卒業生たちのおかげです。自分が来て4年目になりますが、卒業生たちのおかげで今のチームがあります」

「自分が声をかけた世代が、今年で3年生になります。危機的状況で来てくれた子どもたちは、自分にとってスーパースターですし、ヒーローです。子どもたちが全国で自分たちの目標を達成できるようにしてあげたいです」

学生時代からのご縁に感謝です!

周りの方からも応援されるチームを目指して

続いてエース森松彩夢選手のインタビューです。

――2024年度のシーズンを振り返り。

「県駅伝で勝てたことは本当に大きな喜びでした。ただ、勝つのがゴールではなく、その先の東北大会である程度良い走りができましたし、そこで流れを作れて都大路に持っていけました」

「都大路の1区は調子も良くて、『行けるところまで行こう』と自分で決めていました。ただ、正直自分でもびっくりしました(笑)。後ろの選手も来ると思っていたら来なかったので、行くしかないと思っていきました。区間1桁が目標だったのですが、タイムやレース展開からしたら良かったと思います。都道府県駅伝では5000mの持ちタイムがそんなに上の方ではない中、5kmを13分台で通過して、都大路以上にびっくりしました」

――2025年シーズンや将来の目標について。

「今年は高校駅伝の集大成になるので、都大路で輝けるように、チームでは入賞、個人では区間賞を目指しています。一関学院高校は上下関係も厳しくなく、みんな仲良く明るくて、練習がキツそうにしていると声をかけ合い、お互いを高め合えるのがチームの良いところかなと思っています。積極性やキツくなってからの粘りがアピールポイントで、自分でも持ち味だと思っているので、そこを見ていただきたいです」

「大学は箱根駅伝で活躍したいですし、さらに上のマラソンなど、長い距離にも挑戦して活躍できる選手になりたいと思います。トラックよりもロードが得意です」

都大路、都道府県駅伝と1区で積極的な走りを見せた森松選手。積極性に加えてロードや上りの強さが魅力です

最後に菅原颯太選手にもお話を伺いました。

――昨シーズンの振り返りと今シーズンの意気込みについて。

「昨年度、自分たちが意識していたのは県駅伝でしっかり勝って一昨年のリベンジをすることでした。しっかり勝ちきれたのが大きかったです。今年の都大路は全員2年生以下でしたので、一人ひとりが経験し、今年にもつながる良い大会となりました。2年生から主将で、昨年の経験もあって不安もないですし、チームの状況も良いです。新入生も力のある子たちが入ってきますし、昨年以上に力のあるチームになっています。経験豊富なチームに、新入生も入ってフレッシュさもある強いチームになってきました。全国でもそういう姿をお見せしたいなと思います」

「チームとしては都大路で3位入賞を目標にしています。目指すにはとても高い目標で、簡単な話ではありませんが、チーム全員が一つの目標に向かって努力していくプロセスを大切にして取り組んでいきます」

――主将として心がけていることや将来の目標について。

「主将として心掛けているのは、口だけでなくしっかり行動でも引っ張っていける人になりたいので、そこは特に意識しています。また、チームとしても競技面だけ強いチームではなく、日常生活でも人としても応援されるチーム、応援される人にということを意識しています。例えば練習場所までの道や敷地のごみ拾いなどをチームで率先してやっています」

「将来は先生になることが目標で、陸上の良さだったり、陸上を通じて得た経験を教えていけたらと思っています」

2年生から主将を務める菅原選手。将来は教員志望です

というわけで一関学院高校の皆さんに取材させていただきました。藤井監督は「まずは次も県で勝って全国へ! そして上位を目指そう!」と兜(かぶと)の緒を締めるように、前を見据えています。生徒さんたちも競技や勉強だけでなく、あいさつ・礼儀・地域清掃などの活動にも積極的。周りの方からも応援されるチームを目指し続けています!

M高史の陸上まるかじり

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