駒澤大学・伊藤蒼唯 ラストイヤーのトラックシーズンは10000mで27分台を狙う
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第108回日本選手権クロスカントリー競走 シニア男子10km
2月22日@海の中道海浜公園(福岡)
優勝 三浦龍司(SUBARU)28分24秒
2位 井川龍人(旭化成)28分25秒
3位 塩尻和也(富士通)28分29秒
4位 伊藤蒼唯(駒澤大学)28分35秒
5位 小澤大輝(富士通)28分50秒
6位 吉岡大翔(順天堂大学)28分53秒
7位 下尾悠真(NTN)29分02秒
8位 新家裕太郎(愛三工業)29分06秒
2月22日に開催された第108回日本選手権クロスカントリー競走のシニア男子10kmで、駒澤大学の伊藤蒼唯(3年、出雲工業)が全体4位に入った。学生の中ではトップ。ラストイヤーのトラックシーズンは、まず10000mで27分台を狙っていく。
積極的にレースを進め、クロカン日本選手権4位
レースは福岡・海の中道海浜公園で行われ、起伏に富んでいたり、砂地だったりする1周2kmの専用コースを5周する。約90人が出走し、その中には東京とパリの両オリンピック男子3000m障害で2大会連続入賞を果たした三浦龍司(SUBARU)のほか、10000mの日本記録保持者・塩尻和也(富士通)、元日のニューイヤー駅伝で切れ味鋭いラストスパートを披露して優勝に貢献した井川龍人(旭化成)といった実業団の有力ランナーもいた。
1周目は序盤で城西大学の柴田侑(2年、滋賀学園)が先頭に立ち、順天堂大学の吉岡大翔(2年、佐久長聖)、東京国際大学の佐藤榛紀(4年、四日市工業)ら学生たちも積極的に前でレースを進めた。伊藤は先頭集団の中で力を蓄え、3周目の序盤で先頭集団は13人。4周目で三浦、塩尻、井川、伊藤の4人に絞られた。伊藤はラスト1周の手前で離されはじめ、必死に食らいついたものの、前3人の切れ味も鋭く、4位でのフィニッシュとなった。
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「あの位置で最後まで行けたので、そこは自分の中で評価したいポイントではあるんですけど、10kmトータルで考えたときには最後までもつれた中で離れてしまって、そこで4番に残ったのは悔しさがあります」。一定の手応えと反省と、両方の感情が入り交じった様子でレースを振り返った。
合宿で1日だけ体調不良「自分のミス」
表彰式を終え、陣地に向かいながら話を聞いていると、藤田敦史監督が伊藤に「惜しかった!よく頑張ったけど、あそこまで行ったら3人に加わりたかったな」と伊藤に話しかけた。伊藤が「あとちょっとでした」と返答すると、藤田監督は「いや、よく頑張ったよ、あの状態から」。実は、このレースに照準を定めてから、チームとして合宿を行っている最中に、1日だけ体調不良になったという。
「1週間前にちょっと体調を崩して、1日だけ寝込んだことがあったんです。朝練する前に『体調がおかしいな』と思って」。このときは発熱があったという。「それで今回の4番ととらえれば、周りから見たら『うまくいったんじゃないか』という評価になると思うんですけど、結局体調を崩しているということは、自分のちょっとしたミスということでもあるので……。そこでもう『1日練習が積めていた』と考えれば、もうちょっと伸びしろがあって、先頭に長い間、絡めたのかなとも思っています」。現状に満足しないという駒澤の選手に共通している姿勢は、もちろん伊藤も兼ね備えている。
年始の箱根駅伝で自身2度目となる6区を走った後は、1年時に任されたときよりもダメージが少なかったと振り返る。「思ったよりも疲労が少なく、割とすんなりポイント練習やジョグに復帰できました」。当時は箱根が終わってから、すぐレースに出ていたと言うが、今回は大八木弘明総監督や藤田監督とも相談し、2月2日の香川丸亀国際ハーフマラソンの出場を回避。箱根後に空ける期間がちょうどよく、狙えるレースとして今回のクロスカントリーを選んだ。「1年生のときは、それで体に負担がかかったり、疲労が増したりして故障につながって、2年目の前半シーズンを棒に振った感じがあるので、それを踏まえると今年はうまくいっています」
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前年は苦しんだトラックシーズン、今年は繰り返さない
伊藤の力強い走りに、藤田監督も太鼓判を押した。「日本でもトップレベルのスピードを持っている3人との差が、ラスト1周に出たかなと思いましたけど、そこまで一緒に行けたというのは自信にしていいと思います」。丸亀ハーフとの併催だった日本学生ハーフマラソン選手権では、今夏に開催されるFISUワールドユニバーシティゲームズへの出場権をつかんだ選手が現れなかった。その分、春からのトラックシーズンに懸ける思いは強い。「次の学生個人選手権(4月)、トラック種目で1人は代表をつかみ取りたいと思っているので、そこに向けて準備したい」
伊藤はその中心メンバーになってくるだろう。レース後は10000mでユニバ代表を目指すこと、そして27分台を狙うことを明かした。「今回のゴールタイムは28分35秒で、トラックの自己ベストから7秒しか変わらない(28分28秒15)。それだったら10000mのトラックも、もっと頑張らないといけないです。27分台も夏合宿に入るまでは、そこを狙いたい」
塩尻らすでに10000mで27分台の力を持っている選手たちと勝負できたことについては、藤田監督も「自信になっているでしょうし、非常に収穫があったと思います」と評価した。あとは実現させるために、4月の本番までにどれだけ準備できるか。昨年のトラックシーズンは、チーム全体で苦しんだ印象がある駒澤大。伊藤の走りからは、同じことを繰り返さないという強い意志も感じられた。
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