駒澤大学OBの監督同士が切磋琢磨! 東北の強豪校が集まった夏合宿を走ってリポート
今週の「M高史の陸上まるかじり」は青森山田高校、秋田工業高校、一関学院高校が青森県東北町で開催した合同夏合宿のお話です。青森山田高校の河野仁志監督、秋田工業高校の高橋正仁監督、一関学院高校の藤井輝監督は皆さん、駒澤大学のOB。東北の高校駅伝界を引っ張る3校の合同合宿を取材させていただきました。
青森山田、秋田工業、一関学院の合同合宿に参加
青森県東北町は「駅伝の町」を掲げられ、駅伝を愛する町というだけでなく、起伏に富んだロードコースやクロカンコース、陸上競技場や公園もあって、集中してトレーニングに打ち込むこともできます。
8月のお盆シーズンを前に、青森山田高校、秋田工業高校、一関学院高校と3校による合同合宿が開催されました。今年で2回目。3校合わせて67人が集まり、青森県内の中学生も3人参加されました。総勢70人の大所帯です!
青森山田高校の河野監督は学生時代、当時の青東駅伝(東日本縦断駅伝)などで活躍されました。実業団を経て、青森山田高校陸上競技部で最初は女子のコーチに。2013年より男子の駅伝監督に就任されました。田澤廉選手(現・トヨタ自動車)の高校時代の監督でもあります。
秋田工業高校の高橋監督は駒澤大学が箱根駅伝で初の総合優勝を飾った時のアンカーです。3年生から主将を務め、4年生の時には再び箱根駅伝総合優勝。2年生で10区、3、4年生で9区を走り、いずれも区間賞を獲得されています。実業団を経て、母校の駒澤大学で9年間コーチを務められました。その後は秋田工業高校でコーチに。2019年から監督をされています。
一関学院高校の藤井監督は4年連続で箱根駅伝に出場。1年生の時には8区を走り、チームの4連覇に貢献されました。4年生では6区を走り総合優勝のメンバーに。その後は実業団、介護の仕事などを経て、2022年より母校・一関学院高校の監督をされています。
M高史にとっても藤井監督は1学年下の後輩。高橋監督は僕が4年生の時に駒澤大学のコーチとして就任されたので、学生時代からご縁があります。
共通しているのは駒澤大学で大八木弘明総監督のご指導を受けてきたこと、そして母校の高校に戻って監督をされていることです。大学の先輩後輩関係である一方、東北地区のライバル校同士。インターハイの切符をかけた東北高校総体では毎年のように顔を合わせ、もちろん全国高校駅伝でもライバルとなってきます。
良い意味で切磋琢磨(せっさたくま)しつつ、選手の皆さんはもちろん、監督さん同士もお互いに負けたくないという気持ちが重なり、良い雰囲気の中で合宿が行われていました。
まるで「大平台のヘアピンカーブ」のような上り
取材に伺った日の2日目は朝練習から集団走でした。宿舎から約2km離れたスタート地点までウォーミングアップを兼ねて走って移動します。起伏のある1周1.9kmのロードコースを5周するので、9.5kmになります。走力に合わせてA、B、Cの3グループに分かれて行われました。
M高史はCチームで朝練に参加。途中「大平台のヘアピンカーブ」と監督さんたちが呼ぶほどの急な上り坂が数百メートルにわたって続くため、周回を重ねるごとにじわじわ足に効いてきます。グループごとに5周を終えると、ダウンジョグで宿舎まで再び走って帰ります。アップとダウンを含めると、自然に距離も踏むことができますね。
午前中はそれぞれの学校で補強トレーニング。昼食をはさみ、午後練習では再び朝練と同じロードコースで行われることになりました。実は、近くのクロスカントリーコースでの練習を予定していたのですが、この日は台風接近に伴って雨が降りしきり、クロカンコースを使うことができず、ロードに変更されました。このクロカンコースがまたキツいらしいので、来年以降の楽しみにしたいと思います(笑)。
午後練習もA、B、Cの3グループに分かれ、1.9kmのコースを今度は10周(19.5km)しました。朝と同様、片道約2kmをウォーミングアップとダウンジョグで走ります。A、B、Cのグループ分けは基本的には自分で選択するのですが、弱気になっている選手がいる時に、各校の監督から声がかかりチームが上がることもあります。
M高史は朝練習をCチームで走りきったことから、ペースが上がって距離も増える午後の本練習も「Cチームにしようかな」と思っていたところ、選手の皆さんから「M高史さんはAですか? Bですか?」と声をかけられました。つまり「またCってことはないですよね?」という意味です(笑)。
「現状打破!」と川内優輝選手の座右の銘を唱えさせていただいているからには弱気になれないと覚悟を決めて、Bチームで参加させていただきました。皆さんの自己ベストを事前に聞いてしまうと壁を作ってしまうと思い、あえてベストは聞かずにチャレンジャーの気持ちで臨みました。
この日は青森山田高校のOBでランニングコーチなどの活動をされている黒川遼さんも参加され、選手たちに声をかけながら、並走。卒業生も顔を出してくれるのはうれしいですよね!
距離走では上り坂になるたびにペースが上がりました。下りは逆にリラックス。変化走のようなトレーニングでした。
全国高校駅伝のように起伏があるコースに向けての脚作り、体作り、そしてメンタルも鍛えられるんだなと感じました。あるいは大学生になった後、箱根駅伝の山区間を担当する選手がこの合宿からも出てくるかもしれないと感じましたね。
上り坂の途中に河野監督からかけられる声も、周回ごとに変わりました。おかげさまでM高史は10周をコンプリートすることができました。もし1人で走ったら、とてもじゃないですけど、このペースで走りきれなかったと思います。やはり選手の皆さんと気持ちを入れて走ること、さらに監督さんたちからの声かけが力になるんだと感じましたね。合宿ということで場所、空気感、気持ちの面で普段と違うということも、プラスに働いているのかもしれません。
ちなみに、Bチームの選手たちについて「ベストはどれくらいですか?」と河野監督にお聞きしたところ「だいたい5000m15分前後から15分30秒くらいまでの選手」とのことでした。自分で言うのも恐縮ですが、よく走れたなぁと(笑)。やはり事前に聞いて心理的な壁を作らなくてよかったです。高校生の皆さんとは20歳以上の年齢差がありますが、皆さんのおかげで僕も現状打破することができました!
最終日にはレペティショントレーニングのような駅伝も
最終日はスケジュールの都合で朝練習のみの参加となったのですが、本練習では駅伝が行われました。3人1組になって、1人2kmを3本ずつ走って競います。
朝練習の各自ジョグで一緒に走った河野監督によると、「1本、あるいは2本だと勢いでいける。けれど、3本だと強さが求められる」というメニュー。逆に2kmを4本、5本と増やしてしまうと、ペース配分を考えて抑えてしまうそうです。3本というのは絶妙にキツく、抜くところがないのです。2kmを全力で走ったあとは丸々2人分休憩できるので、レペティショントレーニングのようですね。
メニューを聞いているだけで楽しそうで、参加したかったなと思いつつ、もし都合がついたとしても、2km3本を全力では走りきれなかっただろうなと。前日の朝練習と本練習で起伏に富んだコースをじっくり走り込み、全身筋肉痛でした。
この合宿から全国高校駅伝やインターハイで活躍する選手が、そして大学でも活躍する選手が出てくることを楽しみに、注目していこうと思います。駒大のOB同士が指導者として切磋琢磨されている関係性も、OBの一人としてうれしいです。
ちなみに、合同合宿以外にも、青森、秋田、岩手持ち回りで記録会を開催しているそうです。選手の皆さんが記録に挑戦する機会を定期的に作り、東北の陸上を盛り上げようと意欲的に活動されています。9月23日には「あおもり秋季ディスタンス記録会」が開かれる予定で、夏合宿の成果を試す機会となるのはもちろん、各県の高校駅伝に向けた選考レースとなる学校もあるそうです。秋田では「秋田長距離カーニバルサーキット」、岩手では「いちのせき長距離挑戦記録会」が定期的に開催されています。
9月下旬の青森ということで気温も下がり、特に夕方以降の時間帯は記録を狙うのに適したコンディションになりそうとのことです。青森山田高校、秋田工業高校、一関学院高校の3校も出場予定。選手同士ももちろんですが、きっと監督さん同士もお互いに負けたくないと意気込んでいることでしょう!