合宿の聖地「菅平・峰の原」で、城西大・亜細亜大・九電工の選手の皆さんと走りました
今回の「M高史の陸上まるかじり」は、大学駅伝の合宿でおなじみとなっている「菅平・峰の原」のお話です。実際に菅平に泊まって、各チームの練習に参加しながら体を張ってリポートいたします。
距離は5kmほどのため、行き来も可能
長野県にある菅平高原は毎年、夏になると、陸上やサッカー、ラグビーなど、体育会系部活の合宿でにぎわいます。菅平からさらに坂を上ると、峰の原に到着。菅平高原は上田市ですが、峰の原は須坂市です。標高1500mほどで、菅平から5kmほどしか離れていないので、合宿では両方を使うチームが多いです。峰の原に宿泊している選手が菅平で練習を終えた後、ダウンジョグの代わりに走って帰る選手もいるそうです。
今回は3泊4日の日程で、大学や実業団の練習に参加させていただきながら、自分の足で走って、菅平、峰の原の魅力をお伝えしたいと思います。拠点にさせていただいたのはPUMA RUNNING HOUSE SUGADAIRA (以下、PUMA HOUSE)です。期間限定でオープンしているPUMAさんの施設で、シューズの試し履きのほか、高酸素ルーム、テントサウナ、水風呂、ボディーケアルームなどがあります。菅平・峰の原を拠点に合宿をしている大学生や実業団選手を中心に、連日にぎわっていました。
バリエーション豊富な練習環境をご紹介!
菅平には西側のウエストランニングコースと東側のイーストランニングコースがあります。ロード走でよく使われるのがウエストランニングコースです。その中でも3.91km、6.28km、6.74kmという3種類のコースがあります。イーストランニングコースは片道5kmの折り返しコースです。ちなみにウエストランニングコースのスタート地点は標高1240mです。
トラック練習をする際は、標高1300mにあるアンダーアーマー菅平サニアパーク(菅平高原スポーツランド)の競技場を使います。
さらに標高で約200m登っていくと、峰の原に到着します。須坂市のホームページによりますと、今年の第100回箱根駅伝に出場した23校のうち、実に16校がこのクロスカントリーを合宿で利用されたそうです。まさに箱根ランナーの健脚を育んできたクロカンコース!
峰の原高原クロスカントリーコースには芝のクロカンコース(2km)があり、ショートカットすれば1.5kmや1km にすることも可能。500mの平坦(へいたん)なコースもあります。また、全天候型(ゴムチップ弾性舗装)で起伏のある2km、さらには平坦な400mとバリエーションも豊富です。
滞在初日は九電工・朝吹花菜選手と20km走
滞在初日。到着後にいきなりポイント練習をしました。本当は着いてすぐ追い込むより、軽めの練習や刺激を入れて標高の高さによる低酸素低気圧環境に順応してからの方がよいそうです。しかし今回は、スケジュールの都合で初日から追い込みます(笑)。
まずは九電工陸上競技部(女子)の練習に伺ってきました。駒澤大学の1学年先輩にあたる井手貴教さんが監督をされていて、つい最近では、大分県の九重で行われた合宿にも伺いました。今回はルーキーの朝吹花菜選手が20km走をされるとのことで、ご一緒させていただきました。
菅平ウエストランニングコースの6.28kmと3.91kmを交互に2回ずつ走って、約20.4kmです。3.91kmのコースは、2km以降にややキツめの長い上り坂があり、それ以外は細かなアップダウンが続きます。スタート地点の標高が1240mということで、平地より若干呼吸がキツい感覚もあります。 九州国際大付属高校を卒業して1年目の朝吹選手ですが、井手監督によりますと「ロードと長い距離に強く、将来はマラソンでも楽しみな選手」とのことで、この日の20kmも設定タイム以上のペースでこなされていました。
亜細亜大学さんと九電工さんのポイント練習を「はしご」
滞在2日目の朝練習は、拠点としているPUMA HOUSEから峰の原クロスカントリーコース入り口までの往復ジョグ。片道5kmで高低差200mという楽しいコースです(笑)。上りが終わって、帰りの下り坂を走っていると、青山学院大学の選手たちが、競り合いながらキツい上り坂をすごいスピードで駆け上がってきました。朝練習からかなりの追い込みです!
午後練習はアンダーアーマー菅平サニアパークの競技場へ。まずは亜細亜大学女子陸上競技部のポイント練習に参加させていただきました。全日本大学女子駅伝、富士山女子駅伝にも連続出場中の亜細亜大学。この日は「高地に体を慣らす意味合い」ということで、10000mペース走とショートインターバルでした。選手の皆さんは交代で先頭を引っ張り、安定したペースを刻んでいました。
午後3時半スタートの亜細亜大学さんの練習が終わって、そのまま午後4時半スタートだった九電工さんの練習にも参加させていただきました。ポイント練習のはしごです(笑)。
九電工さんのメニューは200m5本を3セットでしたので、全部で200mを15本走るインターバルトレーニングでした。井手監督によりますと「高地に来て最初のポイントなので、高い負荷をかけるというよりは、次のポイント練習に向けて刺激を入れる、動きを確認する練習」とのことでした。
ご一緒させていただいたのは、逸木和香菜選手とドリーン・チェロップ選手。九電工さんの合宿に参加されている大学生選手も、一緒に走られていました。皆さんキレのある走りで、僕はついていくのに必死。無事に15本を走り終えました。
同じトラックを使って、実業団と大学それぞれがポイント練習をされていて、選手の走りやウォーミングアップ、ドリル、動きづくりなどを見ているだけでも、テンションが上がりました!
3日目は城西大学女子駅伝部さんの練習へ
滞在3日目。この日は朝練、午後練とも城西大学女子駅伝部さんの練習に参加させていただきました。城西大学さんは昨年の全日本大学女子駅伝で4位入賞、富士山女子駅伝で6位入賞されている強豪チームです。
城西大学さんの朝練は、菅平ウエストロードコースの6.74kmを使用した10~15km走です。赤羽周平監督から丁寧な声掛けがあり、選手の皆さんも安定したペースを刻まれていました。僕も10~14kmまで引っ張らせていただきました。ラスト1kmはペースも上がり、朝から良い練習ができました。
午後は、峰の原高原クロスカントリーへ移動しての練習です。この日は全天候型のゴムチップコースで16km走が行われました。交代で引っ張りながら、後半にかけてペースが上がっていく練習です。
1kmで高低差40mを上っていき、今度は40mを下ってくるという2kmの周回コース。標高も1500mほどあるため、心肺にも脚にもキツく、設定タイムを刻むのも難しいです。その分、鍛えがいがあります。
僕は序盤からかなりキツかったのですが、城西大学の皆さんのおかげで中盤から後半も粘ることができ、無事に最後まで走りきることができました。川内優輝選手の座右の銘「現状打破!」を心に刻み、気持ちで乗り切りました!
地元の皆さんのご協力に感謝
滞在4日目。帰る日の朝です。3日連続で強度が高い練習に参加したため、まるでフルマラソンを全力で走った翌日のような疲労度。この日は練習訪問の予定を入れていなかったため、軽い散歩のみで回復に努めました。ちょうど僕の母校でもあります駒澤大学が菅平に入られたと伺いましたので、藤田敦史監督にごあいさつへ。駒澤大学は全体合宿を経て、菅平では選抜メンバーで合宿をされるとのこと。主将の篠原倖太朗選手(4年、富里)を中心に、チームの状態も着実に良くなっているそうです。秋からの3大駅伝が楽しみです!
今回の滞在中は、峰の原高原観光協会の協会長をされている小布施みづきさんにお話を伺うことができました。
峰の原高原クロスカントリーで選手の皆さんが走る環境を整備するため、各チームが泊まっている宿の方々が、コースの草刈りや周辺道路の整備などを、交代で年に数回行っているそうです。熊対策などもしているとか。
小布施さんによりますと、草を刈っている最中、蛇に遭遇することもあるそうで、お話を聞いているだけでも大変そうでした。地域の皆さんの支え、ご協力、選手を応援したいという愛情があってこそ、整備されたコースを走ることができます。皆さんに感謝、道に感謝という気持ちで、走らせていただきました。
また、クロスカントリーコースの管理人さんについても小布施さんが教えてくださりました。「毎日皆さんの朝練に間に合うように出勤して、熊避けの爆竹を鳴らしたり、芝の水やりをしたり。少しでもいい状態で選手に走っていただけるように、暑い日も草刈りや雑草取りなどの作業してくださっています」
僕が申し上げるのも大変おこがましいのですが、地元の皆さんが文字通り汗をかいて、熊に気をつけながら、蛇を避けながら、コースを整備されているということが、チームの関係者や選手の皆さんにも伝わればうれしいなと思います。
他県の話ですが、クロスカントリーコースを維持できなくなって廃止したという話をちょうど聞いたばかりでした。コースを常に整備して維持するには、お金も時間もかかり、たくさんの方々の協力や応援が必要不可欠ということを学ばせていただきました。コースがあるのは当たり前ではなく、僕もこれからさらに感謝の気持ちを込めて走らせていただこうと思った合宿となりました。