陸上・駅伝

特集:第103回関東学生陸上競技対校選手権

城西大学・高橋葵が女子1部10000mで2位 スランプから復活した「負けず嫌い」

Vサインを掲げながらゴールする城西大の高橋葵(撮影・藤井みさ)

第103回関東学生陸上競技対校選手権 女子1部10000m決勝

5月9日@国立競技場(東京)

1位 サラ・ワンジル(大東文化大2年)32分02秒87=大会新
2位 高橋葵(城西大3年)33分29秒22
3位 長島奈南(城西国際大2年)33分30秒28
4位 高橋朱穂(亜細亜大4年)33分31秒55
5位 白木ひなの(城西大2年)33分34秒01
6位 金子陽向(城西大3年)33分34秒79
7位 四元桃奈(大東文化大4年)33分35秒79
8位 嶋田桃子(日本体育大4年)33分38秒86

5月9日に開催された第103回関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)の女子1部10000mで、城西大学の高橋葵(3年、日体大柏)が日本選手トップとなる全体2位に入った。直前までベストコンディションではなかったそうだが、本番での強さを見せつける形となった。

素直な気持ちが出たガッツポーズ

レースは1周目から大東文化大学のサラ・ワンジル(2年、帝京長岡)が抜け出し、後方に日本選手の集団が形成される形となった。高橋はチームメートの金子陽向(3年、川崎市立橘)や白木ひなの(2年、山田)とともに「1km3分20秒ぐらいのペースで引っ張り合いながら、絶対に3人で8位以内に入賞しよう」と決意して臨んだ。

1000mを過ぎたあたりから第2集団は10人ほどとなり、高橋は集団の最後方につけた。すぐ後ろには日本学生記録を持つ不破聖衣来(4年、健大高崎)がいた。4000m付近、不破が第2集団の先頭に立つと、高橋も引っ張られるように続いた。

不破(31番)が積極的に前に出ると、高橋も続いた(撮影・井上翔太)

レースが大きく動いたのは8000mの手前。日本体育大学の嶋田桃子(4年、九州国際大付)が、バックストレートから外を回ってスパート。高橋もそこについていった。「迷ったんですけど、関東インカレという舞台は順位争いなので、少しでも前に行く人がいれば、自分も食らいつこうと思っていました。自分の信念みたいなものです」。残り1000mとなったところで嶋田を振り切って前へ。最後の力を振り絞り、右手で作ったVサインを突き上げながらゴールした。

「自然と『あれ、自分2位? うれしい!』みたいな素直な気持ちが出ました」

「葵は本番に強いんだから大丈夫」

高橋はレース後、この関東インカレが今シーズンの初戦だったことを明かした。「練習メニューの消化状況が悪くて、全然ベストコンディションとは言えなかったんです。でも『このレースで何かを得よう』という気持ちで走り出しました」。後方から様子をうかがいながらの8位入賞が目標だった。

前回のレースは、昨年12月末の全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)までさかのぼる。7区間の中で最長の10.5kmを走るエース区間の5区を任され、区間17位。チーム順位も3位から6位に後退させてしまった。「大ブレーキしてしまってから、メンタルがボロボロの状態になってしまって……。2024年はレースにも全然出られない状況が続いてしまいました」

不調が続き、関東インカレが今シーズン初レースだった(撮影・井上翔太)

けがではなく、自分本来の走りを取り戻せないスランプのようなものだったと振り返る。ポイント練習も予定したメニューをこなせず、1000mを10本の内容で4本しか走れないこともあった。スピードも出ず、体作りもうまくいっていない感覚があった。赤羽周平監督からは「このレースを通して、今の現状を確かめよう」とアドバイスを受けた。おそらく苦しい戦いになるから、今回をきっかけに、次に向けて気持ちを奮い立たせよう、という狙いがあったのだろうと高橋は推察する。仲間からは「葵は本番に強いんだから大丈夫。ここまでずっと頑張ってきたんだから、気持ちをリラックスさせて一緒に頑張ろう」と背中を押された。「それがすごく心強かったです」と高橋は周囲から受けた支えに感謝の言葉を惜しまない。

駅伝で表彰台をつかむために、欠かせないエース

もともと長い距離が得意で、下級生の頃からチームのエースであることを自覚してきた。ただ、スランプの期間中は「もう無理かもしれない。後輩や同期もハーフマラソンや10000mに出ている中、自分はそこからかけ離れたところで練習していた」とふさぎ込み、「もう走るの嫌だな」とまで思い詰めたこともあったという。それだけに、今回の関東インカレは、大きな自信を取り戻すレースとなった。

今回のレースで大きな自信を取り戻した(撮影・井上翔太)

振り返れば昨シーズンは5月に手術を受けた影響で、シーズン初戦が9月の日本インカレ5000m。6位入賞を果たして駅伝シーズンへとつなげていった。今回もつらい思いを乗り越え、レースになれば「負けず嫌い」な一面が出て、第一線に戻ってきた。「自分自身の走り方も取り戻せたというか……。今まではずっと、練習も1人でやることが多くて、なかなか走れないことが続いていました。今回は周りに人がいたので、その人たちの力を借りながらうまく走れました。私のトラックシーズンはこれからです」

秋以降の駅伝シーズンでは、チームとして3位以内を目標に掲げている。「トラックでも城西大学をアピールできる走りをして、夏合宿で走り込んで、チームで力を合わせたときに勝負できるように、頑張っていきたい」。目標の達成に向けて、まずは欠かせない高橋の復活が、国立競技場で果たされた。

in Additionあわせて読みたい