東北学院大・堀川大成 遅咲きのエース、涙を流せなかった高校最後の試合が開花の布石

2025年の仙台六大学野球リーグは東北福祉大学の堀越啓太(4年、花咲徳栄)、仙台大学の渡邉一生(4年、日本航空/BBCスカイホークス)らドラフト上位候補の投手に注目が集まるが、忘れてはいけない選手もいる。東北学院大学のエース・堀川大成(4年、東日本国際大昌平)だ。堀越、渡邉のような豪速球は持たずとも抜群の制球力を誇る左腕。「球速では絶対と言っていいほどかなわないけど、スピードがなくても試合は作れる。自分の持ち味であるコントロールを意識した投球はぶらさない」と言い切る。
飛躍の大学3年目は、春秋ともに防御率1点台
昨年は春秋を通して第1先発の座を守り抜き、春は35回3分の2を投げて防御率1.01、秋は33回を投げて防御率1.09と圧巻の成績を残した。堀川は「コントロールが良くなり、与四球率を下げられたのが大きく成長した部分です」と自己分析する。
一昨年までは制球力がむしろ課題で、2年春は13回で5四球、2年秋は1回3分の1で3四球を与えていた。それが昨年は、30回以上投げた春秋ともに3与四球と大幅に改善した。
制球力を上げるために重視したのが投げ込みだ。オフシーズンは週3、4回、シーズン中は最低2回ブルペンに入り、うち1回は必ず100球以上を投げるというノルマを課した。さらに走り込みも強化して足腰を鍛えると、いつしか課題が武器に変わった。

今や仙台大、東北福祉大の強力打線をも手玉に取るリーグ屈指の好投手となった。だが、マウンドでその潜在能力が開花するまでには時間を要した。というのも、高校時代は外野の控えだったのだ。
「野手7割、投手3割」で練習した高校時代
堀川は宮城県加美町で生まれ、小学6年から中学3年までは仙台市で過ごした。野球を始めたのは小学1年の頃。当初は内野手と投手を兼任し、中学では硬式野球チームの宮城仙北ボーイズで外野手のレギュラーだった。
高校は隣県・福島の実力校である東日本国際大昌平へ。高校でもメインポジションは外野手だった。投手で起用されることもあったが、立ち位置は「5番手」。当時は「野手7割、投手3割」の割合で練習していたという。
高校2年秋は1桁背番号を勝ち取ったが、3年春以降は代打や守備固めに甘んじた。3年夏は全国高校野球選手権福島大会で準々決勝敗退。最後の試合に途中出場した堀川は敗戦の瞬間、一粒の涙も流すことができなかった。「やりきった感がまったくない。このままだと絶対に後悔する」。高校野球で完全燃焼とはならず、大学野球という選択肢が頭に浮かんだ。

投手に専念し、制球力を磨いて芽生えたエースの自覚
「自分はもっとできるはず。大学でやれるところまでやってみよう」と、堀川は地元で野球継続の場を求め、東北学院大のセレクションに参加した。投球を見た当時の学生監督に「投手で取りたい」と声をかけられ、その後は投手の練習に専念した。
堀川は入学前の期間を「投手の知識がないのに、『とりあえずやればいい』と思って張り切りすぎてしまった」と振り返る。過度な練習の影響でひじを痛め、大学1年の夏まで投げられない状態が続いた。
それでも、復帰後に体が前に突っ込んでしまう投球フォームを改善すると、高校時代は130キロに満たなかった球速が、1年間で138キロまで伸びた。変化球も以前はカーブとスライダーのみだったが、新たにチェンジアップ、カットボール、ツーシームを習得。並み居る投手陣の中でアピールして1年秋にリーグ戦デビューを果たし、新人戦では先発で好投。課題と向き合った2年時を経て、3年目にブレークを遂げた。

現在の最速は141キロ。スピードも維持しつつ、最大の武器である制球力と決め球として使える変化球の精度の向上に重きを置いている。エースの自覚が芽生えた堀川はラストイヤーに向け、「自分が軸になって、チームの勝利にベクトルを向ける。とにかく失点をなくして、5勝以上を目指します」と意気込む。
金刃憲人コーチに刺激を受け「最終的にはプロに行きたい」
大学卒業後の進路については、「最終的にはプロに行きたい。まだそのレベルではないので社会人も意識しながらですが、必ず上のステージでやりたいと思っています」と話し、固い決意を持っている。
下級生の頃、2学年上のエースだった古谷龍之介(現・JR東日本)の投球を目の当たりにして、「こういう人がプロに行くんだと衝撃を受けた」。その古谷でも大卒ではNPB入りがかなわず、壁の高さを感じたものの、古谷の後のエースの座を勝ち取ったことで「自分でも頑張れば行けるかもしれない」と自信をつけた。

さらに、今年から読売ジャイアンツや東北楽天ゴールデンイーグルスでプレーした金刃憲人さんが東北学院大の「ピッチングコーディネーター」に就任。同じ左腕の元プロ野球選手から指導を受ける日々は刺激になっており、堀川は「新しい考えを教えてもらえるので勉強になる。プロ時代の話を聞けるのもすごく面白いです。プロに行きたい気持ちがより強くなりました」と声を弾ませる。
「正直、ここまで来られるとは思っていなかった。自分を信じてよかったです」。外野の控えだった高校生が、大学でドラフト上位候補と呼ばれる選手たちと肩を並べる好投手へと成長し、本気でプロを目指している。涙を流せなかったあの日、己の可能性を信じたからこそ、今がある。
