陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

名城大学が富士山女子駅伝6連覇! 襷をつないだ各チームの思いをM高史がリポート

富士山女子駅伝6連覇を達成した名城大学の皆さん。雄大な富士山を背景に喜びの記念撮影!(すべて撮影・M高史)

2024年も現状打破! 今週の「M高史の陸上まるかじり」です。今回は昨年12月30日に行われた富士山女子駅伝(全日本大学女子選抜駅伝)のお話です。M高史は今回も「報道」で伺ってきました。今大会で名城大学が6連覇を達成。全日本大学女子駅伝も7連覇ということで、「6年連続二冠」を達成しました。

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無事に襷がつながると、ホッとします

富士山本宮浅間大社前(静岡県富士宮市)をスタートし、フィニッシュの富士総合運動公園(静岡県富士市)まで駆け抜ける7区間43.4kmのコースで行われる富士山女子駅伝。10月の全日本大学女子駅伝で12位までに入った大学と、5000m7人のシーズンベスト上位の10大学(アディショナル枠)、全日本大学選抜、静岡県学生選抜、合わせて24チームが出場しました。

ちなみに、富士山女子駅伝は選抜チームも順位として認められます。2019年には全日本大学選抜が3位に入ったこともあります。その時に2区で区間賞を獲得したのは現在、資生堂で活躍中の五島莉乃選手(当時、中央大学4年)。選抜チームから日本代表になる選手も出てきています。

また富士山女子駅伝のアンカー7区は高低差169m「魔の坂」を駆け上ります。昨年のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で優勝を飾り、今年のパリオリンピック代表内定をつかんだ第一生命グループの鈴木優花選手も、大東文化大学1年生の時に、7区で当時の区間新記録を樹立する快走を見せました。

今大会は気温がやや上がり、各校の監督さんたちは水分補給やペース配分など、選手たちと細かなコミュニケーションをとられていました。

1区から名城大学の柳樂あずみ選手(2年、筑紫女学園)が区間賞を獲得。6連覇に向けて幸先の良いスタートを切りました。中継所では各大学に割り振られた番号が読み上げられますが、それ以上の勢いで選手たちが続々と駆け込んできます。無事に襷(たすき)がつながると、見ているこちらもホッとします。

富士山本宮浅間大社前をスタートした選手たち

第1中継所の襷リレーが終わると、報道バスがフィニッシュ地点の富士総合運動公園に向けて出発するため、急いでバスに乗り込みます。過去に全日本大学駅伝の報道バスに乗せていただいたことがありますが、8区間106.8kmの長丁場のため、途中で監督が乗っているバスと一緒に停車して降り、選手の走りを各区間で見ることができました。しかし富士山女子駅伝はそれより距離が短いため、この時点でフィニッシュ地点に向かわなければ、選手に追いつけないのです。

レースの後半はメディアルームでテレビ観戦。各区間の速報記録が随時配布されるので、見比べながらレースの行方を見守ります。各大学の応援団の皆さんが準備を始めると、「そろそろアンカーの選手が近づいてきてるんだな」と感じます。

最初に競技場に飛び込んできた名城大学は、1区から一度も先頭を譲らず6連覇を達成。7区間中、5区間で区間賞を獲得する圧倒的な強さでの優勝となりました。

仲間の応援を受けて、ラストスパートをかける名城大学のアンカー・原田紗希選手(2年、小林)

高低差169m「魔の坂」を制したのは

名城大学以外の選手で区間賞を獲得したのは5区の大東文化大学、サラ・ワンジル選手(1年、帝京長岡)と7区の拓殖大学・新井沙希選手(2年、秦野)です。

新井選手は昨年も7区を走って区間2位。今年も上り坂での強さを発揮し、順位も四つあげて7位に! チームを入賞ラインに引き上げる快走でした。

レース後、新井選手は「事前に(五十嵐利治)監督から区間賞を目指すように言われていました。最初は前との差も詰まらなかったのですが、焦らず少しずつ詰めていこうと思っていました。上りが強みなので3km以降の上りからと思っていました。区間賞は本当に取れると思っていなかったので、うれしいよりも驚きの方が大きいです。区間賞は個人としても良かったですし、チームの結果にもつながったので、少しは貢献できたかなと思います」と喜びの声を聞かせていただきました。

7区で区間賞を獲得した拓殖大学の新井沙希選手(右)。順位を四つ押し上げ7位入賞に貢献しました

レース後、監督にインタビューしました

レース後は表彰式、閉会式と続きます。年末ということでご家族が迎えに来てそのまま帰省というチームもあり、取材やインタビューは毎年バタバタです(笑)。メディアの皆様はレースが終わってからが勝負! インタビューに走り回られます。

お話を伺えた大学の監督さんのコメントをご紹介します。

2位 日本体育大学・佐藤洋平監督
「全日本の5番から、2カ月で選手たちはよく頑張ったと思います。アンカーの保坂(晴子、4年、錦城学園)はあまり上りは得意ではなかったのですが、『全日本で迷惑をかけた分、私が一番きつい区間を走ります。チームをいい順位に導きます』と頼もしく言ってくれて、その通りの走りをしてくれました。(来シーズンに向けて)保坂が1年生の時は7番でしたし、そこからタイムも4分以上縮めました。いくらでも選手たちは変われますし、それだけ可能性を持っています。名城大学とはまだ差がありますが、チャレンジしたいなと思っています」

新チームは日本選手権10000mで9位(31分50秒13)となったエース・山﨑りさ選手(3年、成田)を中心に頂点を目指します。

日体大のアンカーは保坂晴子選手。区間賞と1秒差、区間2位の力走で2位を守りきりました

6位 城西大学・赤羽周平監督
「無事にフィニッシュしてホッとしています。7人しか走れる選手がいない状況で、その7人目が4区を走った石川(苺、1年、旭川龍谷)でした。力的には本来もっと上ですが、12月に入ってからストレッチをしている時にハムストリングスを痛めてしまい、10日間全く動けませんでした。そこから少しずつジョグを始めて、ポイント練習もできず、ようやく大会2日前に1000mを3分20秒で走れました。『これなら走りきれます』と本人も言っていたので、2kmまでは3分20秒ペースで、後半に上げていこうという話をしていました。1区、2区、3区まで予定通り。4区で奇跡が起きました。よく頑張ったと思います。ただ、しっかりメンバーをそろえて万全じゃないと表彰台には届かないので、来年もう1回作り直して表彰台を狙いたいです」

今回走った7人のうち6人が1、2年生という若いチーム。来年度、表彰台に挑みます。

城西大で駅伝出場の佐光菜々子さん 管理栄養士として母校の食をサポート!
城西大学のアンカーは金子陽向選手(2年、川崎市立橘)。2年生ながら主将を務めました

9位 大阪芸術大学・中瀬洋一監督
「選手たちはよく頑張ったと思います。ただ8位を目標にしていましたので。(主将の北川星瑠選手について)『どんな順位できても8位まで上げるんだ!』という気持ちが伝わってきました。4年生が3人抜けますので『私がエース区間に行きます』という選手が出てきてほしいです。初めての全国大会の選手もいたのですが、そこで満足してほしくないですね」

北川星瑠選手(4年、比叡山)、鈴木杏奈選手(4年、和歌山北)、古原夏音選手(4年、四国学院大学香川西)が卒業を控える中、来シーズンのエース区間に立候補する選手にも注目です!

ミュージカル、デザイン、ドラム、ダンス 競技と芸術を両立する大阪芸術大女子駅伝部
大阪芸術大学のアンカーは鈴木杏奈選手。学生女子ハーフマラソンで4位に入っています

15位 城西国際大学・森岡芳彦監督
「昨年、選手を連れて見にきていたので、今年出場できてよかったです。今の4年生は色々あった4年間だったと思いますが、全日本と富士山の両方出場できたのはよかったと思います。また来年に向けてゆっくりじっくり育てていきたいですね」

富士山女子駅伝には初出場の城西国際大学(茨城県で開催されていた頃の全日本大学女子選抜駅伝を含めると2009年以来の出場)。各校のエースが集まる最長区間5区でルーキー長島奈南選手(1年、成田)が区間4位の力走を見せました。

12年ぶり全日本大学女子駅伝出場の城西国際大 「マラソン博士」森岡芳彦監督の下で
初めての富士山女子駅伝で15位となった城西国際大学の皆さん

23位 神戸学院大学・大江秀和監督
「ベストなオーダーは組めませんでしたが、1区の堀(綾花、4年、日体大柏)以外は全員が初めての富士山でしたし、初めての全国大会でした。全国を知る選手が残りますので、次はここに来ることを当たり前にしていきたいです。関東の大学は春からタイムを出していますので、(自分たちも)春からしっかりタイムを出せるようにしていこうと思います」

3年ぶりの出場となった神戸学院大学。昨年はわずかな差で全日本も富士山も出場を逃し、悔しい思いをしてきました。念願となる全国の舞台で襷リレーを行いました。

3年ぶりの富士山を決めた神戸学院大学 最後の挑戦となる日体大記録会で現状打破!

取材を終えて競技場周辺を歩いていると、選手のご家族からも「記事読みました!取材していただいて、ありがとうございました!」とご丁寧にお声がけいただきました。選手ご本人に喜んでいただくのもうれしいですが、選手のご家族に喜んでいただけるのも本当にうれしいです。

スタート地点の富士山本宮浅間大社前にて。大会名の通り、富士山がとても雄大できれいです!

特に、今の4年生は入学した年からコロナ禍で入学式が中止になったり、多くの大会が中止や延期になったり、応援も制限があったりした世代です。どんな状況でも、どんな結果でも、応援し続けてこられたご家族にとっては、長くもあり、あっという間でもあった4年間だったのではないでしょうか。

先輩から後輩へ。また来シーズンに向けて各校の挑戦は続きます!

M高史の陸上まるかじり

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