大阪芸術大・北川星瑠　最後の日本インカレで3位入賞「愛される選手とタレントに」

• ＃第92回日本学生陸上競技対校選手権大会
• ＃大阪芸術大学

日本インカレ初日の9月14日、女子10000m決勝が行われ、8月のFISUワールドユニバーシティゲームズ（ユニバ）の女子ハーフマラソンで金メダルを獲得した大阪芸術大学の北川星瑠（4年、比叡山）は34分02秒34で日本選手2番手の3位となり、「今回は順位を狙うと決めていた。最低ラインの表彰台には上がれたが、両手を挙げて『やったー』とは喜べないです」と悔しさを隠さなかった。

想定通りのレース展開も、最後のキレが出ず

レースは最初の1周が1分29秒もかかる超スローペースで始まった。2周目からたまらずケニア人留学生の大東文化大学のサラ・ワンジル（1年、帝京長岡）が一人で前に出た。4月の学生個人選手権女子5000mでそのワンジルにただ一人ついていったのが北川だった。だが、この日は日本選手で形成された第2集団に身を潜めた。「もし、スローペースになっても、自分ではレースを作らずにリラックスした気持ちでついていこうと思った。そして、後半から少しずつ上げていこうというレースプランだった」。常に集団の4、5番手につき、勝負どころまで我慢した。

そして、8000m付近で北川は2位集団の先頭に立った。「元々、残り2000m前後で仕掛けようと考えていた。前の選手のペースが落ちていたので、ここで私が出たら崩せるかなと思った」。ただ、後続を引き離すまではいかなかった。残り4周を切ったところで、福岡大学の宮原なな佳（2年、福岡大若葉）と名城大学の原田紗希（2年、小林）を含む3人の日本人トップ争いに。残り2周で仕掛けたのは宮原だった。一気に前に出られたところで、北川もなんとかついていく。ラスト1周に入って差を広げられたものの、最後の直線で再び迫った。2位の宮原とは0秒48差の3位。北川は「ユニバまではハーフマラソンに向けてスタミナ練習を中心にしていた。そこから1カ月でトラック向きのキレを戻すことができなかった」と敗因を挙げた。

松竹芸能に所属し、より注目されるように

この数カ月で環境が激変した。今年7月に大手芸能事務所「松竹芸能」の所属タレントになることが発表された。今大会前には同じ事務所のアスリート芸人・森脇健児さんから「応援しているよ！」と直接激励を受けたと明かした。幼少時代から子役として芸能活動を始め、これまでも芸能事務所に所属していた。自身のツイッターのプロフィール欄には「自称日本で唯一ミュージカルを学ぶ長距離選手」と書かれている。文字通り、大学では舞台芸術学科で学んでいる。

松竹芸能入りが発表されると、自身のSNSのフォロワーが1500～2000人ほど増えた。SNSには「優勝をめざして頑張ってください」や「いいタイムを期待しています」など競技について具体的なメッセージも送られてくるようになった。より注目されることになり、プレッシャーを感じることもあるというが、「期待されているということは愛されているのかなというのも感じる。愛される選手やタレントになっていくためにプレッシャーはかかるけど、期待してほしいなと思う」と前向きにとらえている。

海外の大会で新たな発見

競技面でも新たな発見を得た。ユニバでは5000mや10000mのレースを観戦し、海外選手のロングスパートを見て「ここで仕掛けるんだ」と驚いた。日本国内ではあまり見られないレース展開に刺激を受けたという。北川は「世界の選手はこういうところで差をつけているのだと知ることができた。私もトリッキーなレースがしたいと思うようになった」と話す。

今後は競技を続けながら、タレントとして料理番組や食レポの仕事をしてみたいという目標も語った北川。「今年は達成度で言うと、100%のうち90%くらいはある。卒業するまで90%以上の達成度を維持していきたい」。残りの学生生活を悔いなく過ごすことを誓った。